―一時帰還・サイレントソウル城―
「と言う訳で、この村の転移陣には認証形式が用いられています。個人とこの魔道具の両方で認識されますので、いつでも使えるように首から下げて持ち歩いていて下さい」
村の転移陣にはセキュリティとして個人認識を追加した。誰でも使えるようにしてしまうと双方の管理が大変になるので村人全員と連絡用に駐屯兵の中の士官クラスの兵士数人を追加した。
「さて、これで用事は済んだな」
旗と外套、転移陣の設置、それと急がせてしまったがセレーナのミスリル武器と防具の受け取りで現状、村での用事は済んだ。この後は旗を城へと持ち帰って掲げるだけだ。
ちなみに布製品の旗と外套に関してはホルン村への依頼だったのでトロン村への負担(主にガボットの負担)は少なかったが、彼はこの村の何でも屋になりつつあり、さすがに親子二人だけでは手が足りなくなってきたのだろう、先程もチラッと挨拶を交わしたが工房には従業員が増えていた。
ホルン村の若者とローランドに居る知り合いの息子を雇ったらしい。ド田舎の村に若者が増えるのは村にとっては嬉しい出来事だろう。きちんと給料が出るように俺からの依頼も途切れさせないようにしなければ。
俺自身、工房の経営者なのかお客なのか分からなくなってきたが、特に何ら今と変わりは無いので気にしないでおこう。
そう言えば村人へ転移陣の説明をする際にポプリが俺の後をついて来て色々世話を焼いてくれたのだが、その後も何故か俺の斜め後ろのポジションから事ある毎にサポートしてくれる。何だか秘書のような振る舞いを見せていたのだが、彼女なりの気遣いなのだろうか。
その晩は村で過ごしたのだが、驚いた事に村人からサプライズがあった。
何かと言うと、トロン村にオトナシ邸が建築されていた。
場所は村長の家のお隣なのだがその場所も森を切り開いて宅地にしていて村長の家と同じ位大きかった。
初めは旅人用の宿屋でも作ったのかと気にしなかったのだが、夕飯のあと家へ案内されてカギを渡されて全員で驚いた。
「ポプリ、私に先に教えてくれたら良かったのに~」
「ダメよ。アナタに教えたら皆に言っちゃいそうだもん。そうしたら驚かせられないじゃない」
「それは・・・・・・言わないわよ・・・・・・多分」
「セレーナの驚いた顔ったら面白かったわよ。うふふ」
「んもう、ポプリったら」
姉妹のような二人の会話が聞こえていた。
俺自身普段はあまり表情には出ないが久々に驚いた出来事だった。
「いやー、まさか自分の家が出来てるなんて思いもしませんでしたよ。皆さんありがとうございます。有難く使わせて頂きます」
「オトナシ様には既にお城があるのでなかなか難しいかもしれませんが、村に帰って来た際には気兼ねなく過ごせる場所としてお使い頂ければ幸いでございます」
「転移陣がありますし、楽に戻る事が出来ますので時間が許せば使わせて頂きます。管理も大変でしょうから、お城のメイドさんに掃除等に来て貰う様お願いしておきますね」
「承知致しました。普段はイゼッタに任せて居ますのでその際には彼女に聞いて頂ければ問題無いようにしておきます」
「イゼッタさん、お手間を取らせてしまいますが宜しくお願い致します」
「勿体ないお言葉。大変お気遣い頂き至極恐悦に存じます。オトナシ伯爵の邸宅の管理に関しましては、わたくし自らが申し出た事ですのでどうぞお気遣いなくお願い申し上げます」
「肩がこってしまうので、出来ればこの村では皆さんそんなに畏まらずに居て下さい。(やはり伯爵の称号は肩が凝る原因の一つだな。ガボットさんに渡したら魔工炉で装備に変えてくれないかな)」
「まあそう言ってやるな、惣一郎。爵位は王家から授かったものなのだから形だけでも大事にしておけ。それに例えどの世界だろうと、力ある物にはその力に見合った責任が伴うものだ。お主の知る言葉で言えば NoblesseOblige と言うやつだ」
「はい、これ位にしておきます」
そんな会話をしながら新居で一晩過ごし、次の日の朝になり一先ずは別れの挨拶を済ませて城へと戻る
。
「それではみなさん、色々とありがとうございました! 掲揚式の日取りが決まりましたらお呼び致しますのでご都合が宜しければご参加ください」
「次は我等が皆を持て成すぞ」
「ワォォォォォン!」
「娘の結婚式と重なっても参加致します!」
「家族が危篤でも参加致します!」
「親の葬儀と被ったとしても絶対に参加致します!」
「あ、いや、そこまではしなくていいよ」
そんな合いの手を貰って一笑い起きた所で、皆にこやかに城へと戻った。
「ルーナ様のお部屋のぬいぐるみ可愛かったですね!」
「ワン!」
「ルーナ様と同じ白い狼のぬいぐるみが沢山ありましたね」
「村の子供たちがルーナ様の為に作ったらしいぜ」
「良かったなルーナ」
「ワォォン!」
ルーナは昨日の新居ではかなり興奮していて夜中過ぎまでバタバタしていて最後にはスミレが強制的に寝かせていた。スミレは最近お気に入りのちょっとセクシーな寝間着姿で部屋を出てルーナの首根っこをワシ掴み、何やら呪文を唱えるとルーナは電池が切れたおもちゃのように寝てしまった。
俺も寝つきの悪い時は彼女にお願いしようと思う。
久々に城へ戻ると転移陣の警備兵の二人が驚きのあまり腰を抜かしていた。転移陣から誰か出て来るとは思っていなかったのだろう。後ろから声をかけたらその場で勢いよく飛び上がって恐ろしい何か見たような驚きっぷりで、兵士の慌てっぷりを見たダリアがかなりツボに入った様子でお腹を抱えて笑っていた。今日の昼には警備兵二人の笑い話が場内に広まっているだろう。しばらくはこのネタで揶揄われるのは間違いない。
「ただいま戻りました」
「お帰りなさいませご無事で何よりでございます伯爵様、スミレ様、ルーナ様」
「皆様もお帰りなさいませ」
「そうだ、ラルフ。先日からルーナ、セレーナ、メリッサ、ダリアが正式にこの城の一員となりました。ルーナに関しては聖霊様なので一員というのも何だけれど、本人はその気なので宜しくお願いします。役職に関してはまだ何とも決まっていないけれど、その旨よろしくお願いします」
「ワン!」
「「「宜しくお願いします!」」」
「承知致しました。こちらこそ宜しくお願い致します」
「それではミハエル様がお待ちになっておりますので執務室の方へ参りましょう。戻ったらすぐに知らせて欲しいと承っておりますので」
「わかりました、こちらも報告がありますので行きましょう」
明けましておめでとうございます。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
今年も一年頑張って投稿したいと思います。
新年早々嬉しい事に、気が付いたらブックマークして頂けた人数が100人を超えてました!
年明け前には超えていなかったので更新の無い年始のどこかで超えたのかと思います。
本当に嬉しい限りで御座います。
これからも愉しんで頂けるよう頑張ります!
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少しずつ見てくれる方が増え、嬉しい限りです。
これからも頑張って続けて参りますので、応援よろしくお願い致します。
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今月も頑張ります!
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