―Smile―
「さあ、どうだ!」
スミレ達が試着室から出てくると、ダリアがメリッサとセレーナに押されて出てくる。
ミニスカートにロングブーツ、ノースリーブの上着でヘソ出しルック。
「これは!?・・・・・・もしかして、アムラー」
「この再現率はなかなかだろう?」
「このガラのスカートってこの世界の模様じゃないだろ。よくこの売り場の服でここまで再現出来たな。あとこの厚底ブーツ。完璧だ」
「ダリア、良く似合ってるぞ!」
本来なら髪はロングが王道なのだろうが、逆にショートヘアは新しい気がする。まあファッション的にはかなり古いのだが。
「な、なあ、こ、これってソウイチロウさんの国の服装なのか? みんなこんな短いスカートなのか?」
ダリアがスカートの裾を気にしながら試着室から出てくる。
「そうだぞ、ダリア。これが日の本の正装だ!」
バシン!
「おい! スミレ!」
スミレの頭を叩いて嘘を訂正する。
「ダリア、違うぞ。正装ではない。ただの流行りだ」
「だが、惣一郎はその服のダリアも気に入ったみたいだから良いではないか。ホラ、可愛ぞ」
「うんうん!」
「可愛いです!」
「ワン!」
「ルーナ様!?」
ルーナが寄って来てダリアのスカートの中の匂いを嗅いでいる。スカートを鼻で押し上げようとするルーナとそれを阻止する為に頑張っているダリアの攻防から目が離せない。ここは平等にどちらも応援しておこう。
「ソウイチロウ様! 見ちゃダメです!」
「おお!?」
メリッサが俺の目を隠した。何という事だ、これでは素敵な攻防戦が観戦出来ないじゃないか。とても残念だ。
「ルーナ様! めっ!ですよ」
「クゥウン」
セレーナの活躍によりルーナの暴走が止まり、目隠しが外れるとダリアがうらめしそうな目で俺を見ていた。何か分からないが皆の俺を見る目が若干冷たく感じる。いや、ルーナとの攻防戦は俺のせいではないぞ。
このままではイカンと思い、この場の空気を変えるために言葉を発した。
「店員さん、今この子が試着した服全部下さい」
「お買い上げありがとうございま~~~す!」
そう、この前の魔石換金で懐事情も問題ない。取り合えず今日はみんなの買い物に付き合って機嫌を取ろう。店員は試着室からカウンターに服を持って行くと清算を始めた。俺は清算を待って支払いを済ませると、ルーナに押し付けられた俺への理不尽なヘイトも消えた。
「よーし、清算も終わったし次のお店に行こう!」
そうして夕食までの間、女性陣と一緒に服屋を三軒、靴屋と装飾屋を2軒巡った。
巡った店でそれぞれファッションショーを繰り広げ、試着した物は殆ど買い上げた。
「沢山買いましたね!」
「一生分買ったかも!」
「たまにはこういった時間も良いものだな」
「えっと、色々買ってくれてありがとう」
「たまにはこんなイベントも良いかもな。それに最終的にはダリアだけじゃなくみんなの分も結構買ったし、全員で稼いだお金だから、お礼はしなくて大丈夫だよ」
前を歩く三人の跡をゆく俺とその隣を歩くダリア。
色々あったが彼女はいつも通りの元気な笑顔で話しかけて来た。今日一日で色々吹っ切れたのかもしれない。もしくはあきらめの境地かは分からないが。一皮むけたように見える。
その証拠に、今のダリアの服装はアムラーだった。
「その服、気に入った?」
「え、う、うん。ソウイチロウさんの国の服装ってのもあんまり着る機会も無いし、今日はこれで良いかなって。でもコイツは手放せないけどな」
ダリアは腰のベルトのツヴァイダガーをポンポンと叩いた。
ちなみに厚底ブーツはスミレが俺の髪と同じようにガルーダブーツの見た目を変えた物だった。
「そのブーツ、歩き難くないか?」
「大丈夫、もう慣れたよ」
彼女は走って前の三人に追いつくと話に混ざり、ワイワイ騒ぎながら宿へと戻った。
宿の食堂で食事を済ませて部屋に向かう。俺の部屋は一番高い部屋の更に高い部屋だと言われた。所謂スイートルームみたいなモノらしい。今日はスミレが部屋割りを決めたと本人が伝えて来た。
「今日は久々に皆で羽根を伸ばそうと思ってな。先に良い部屋を確保しておいたのだ。一番いい部屋は1つしか空いてなかったのは残念だが、今日は買物に付き合って貰ったからな惣一郎はその部屋だぞ。これがカギだ。先に休んでてくれ、我らは後から行く」
スミレに鍵を渡され部屋へ向かい、ベッドに倒れ込む。
「ふう。それにしても豪華な部屋だ。そういえば王都で泊った部屋もこんな感じだったな。あれは高級ホテルって感じだったが、ここはギルドの宿だよな。・・・・・・パヴァーヌのギルドヤバくね?」
ギルドの建物はボロいのに宿は綺麗でこんなに豪華な部屋もある。なぜ建て直さないのだろうか。
ベッドに寝転がったまま装備を脱ぎ捨てて風呂に入る。
久々のお風呂で汗と汚れを流し、服を着て再びベッドに倒れ込むといつの間にか眠っていた。
「ん、うん・・・・・・」
目を開けると目の前にダリアが居た。
「ぁ!」
ダリアは小さな声を出して驚くと同時にベッドから離れた。
「ぉ? ん?」
良く分からない声を出して驚く惣一郎。
「あっ、えっと、ごめん、起こしちゃったかな?」
ダリアは謝って来るが、寝起きで思考がぼやけていて状況がいまいち掴めない。
「ん? あれ? ダリア?」
目をこすりながらダリアに話しかける。
「う、うん。キョ、今日は一緒の部屋なんだ。よ、よろしくな。ソウイチロウさん・・・・・・」
俺をチラ見しながら部屋割りの状況を教えてくれるダリアの声が一瞬裏返った。彼女の顔が赤くなっていく。昼間も同じような彼女を見た気がする。いや気がするじゃなく、見たわ。
「スミレが部屋割りを決めたって言ってたがそう言う事か。・・・・・・いや、どういうことだ?」
「あ、あのさ、ソウイチロウさん、今日はオレの誕生日なんだ」
その一言で謎が解けた。
「なるほどな。それで今日はみんなでダリアにオシャレさせたりしてたのか。それならそうと言ってくれれば良いのに」
「ごめん。言っても良かったんだけど姉さんが、夜まで内緒にしておこうって」
ダリアが申し訳なさそうな表情でお伺いを立ててくる。特に腹を立てる事でも無いし、立てても居ないが、折角の誕生日を台無しにする気はないので誤解されないようにしっかりと説明しておく。
「特に怒ってないよ。言い方が悪かった、ごめんね。先に伝えてくれてればプレゼントをもう少ししっかり考えられたなって思ってね」
そう言って【キューブ】の中からダリアへのプレゼントを出した。
「買い物中に色々見てたんだけど、似合うかなって思ってね」
「綺麗なネックレスだな」
プレゼントに選んだのは装飾屋にあったネックレスで、ドレス姿のダリアを思い出して、それに合いそうなものを選んだ。普段使いは出来ないと思うが、折角ドレスを買ったのだからそれに合う宝飾品も必要だろうと思い、ひそかに買っておいた。
「い、今着けた方が良いか・・・・・・な?」
「そうだね、折角だしあのミントグリーンのドレスに合わせてみない?」
「アレを着るのか!?・・・・・・うう、わ、わかった。がんばる」
言ってから気が付いたが、ジッパーのような機構が無いドレスは一人じゃ着れない。
途中までは一人で着て貰って最後は手伝う必要がある。
他の誰かを呼んでも良かったが、それはそれで雰囲気というかなんか色々ぶち壊しになる気がしたので
言った以上は責任を取る事にした。
「取り合えずお風呂の方に居るから、手伝う事が出来たら呼んでね」
「うん、わかった」
数分後、俺の予想に反して彼女は一人でドレスを着る事が出来ていた。今日一日で何度も着せられたから着方を覚えたそうだ。後ろの紐とかどうやって一人で締めたのか気になるが、それは今聞く内容ではないと気が付き飲み込んだ。
ダリアに呼ばれて部屋に入るとドレス姿の彼女が居た。恥ずかしいのか後ろを向いている。俺はネックレスを持って彼女の後ろへと歩み寄り、細い首にネックレスをかける。
「っ?!」
宝石が肌に触れると、その冷たさに驚いて小さく声を出して彼女の手が自身の首元へとのびると惣一郎の手と触れたが、一瞬で手を放して元の位置へ戻した。
「冷たいかもって先に言えば良かったね」
「あ、うん。大丈夫。ちょっとビックリしただけ」
ネックレスの金具を止め終わり手を放すと、ダリアはゆっくり振り向いた。
「ど、どうかな?」
先程から相変わらず顔は赤いままだが、俺と目を合わせてくれる時間は確実に増えている。
「うん、バッチリ似合ってる。とっても素敵だよ」
彼女の目を見て伝えると、ダリアは今までで一番の笑顔を俺に見せてくれた。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
11月も頑張って投稿したいと思います。
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少しずつ見てくれる方が増え、嬉しい限りです。
これからも頑張って続けて参りますので、応援よろしくお願い致します。
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