―イチブトゼンブ―
「さて、音無君、楽しい楽しい作戦会議を始めるわよ!」
「こんばんは、アルデンテさん」
「人の名前をパスタみたいに言わないで」
「失礼、かみました」
「「・・・・・・」」
「まあいいわ。昼間のアレ、私がちょっと寝てる間にあんなのが出来てたなんてね」
「危うくアンダンテさん諸共殺される所でした」
「ホントに最悪の兵器だわ。あれ、魔法陣術式で動いてたみたい。しかも絶命感応の術式も用いてた。ご丁寧に多重結界まで同時に発動させるなんてイヤらしい」
「ずいぶん詳しいですね。敵に心当たりあったりしますか?」
「有ると言えば有るし、無いと言えば無いわ。つまり分からない。心当たりが在り過ぎるのよ」
「どんだけ物騒な知り合いが多いんですか」
「私がまだ本に入る前の時代は、あっちこっちで戦争してたからね。結構非道な戦い方をしてたせいで滅ぼされた国も一つや二つじゃないし、それらの末裔とか可能性の話だけでも結構思いつくのよ」
「これだけの時が流れても怨みとかは消えないものなんですね・・・まるで呪いみたいだな」
「なるほど、良い所に目を付けるわね、確かに呪いかもしれないわね。何千年経っても解けない未来永劫に続く呪いをいくつか知っているわ」
「何千年経っても解けない呪いですか・・・」
「・・・うん、確かめる必要があるわ。でもまずはアレの対処法よ。どうせまた戦う事になるでしょうから今のうちに対策を立てておきましょう」
「そうですね。そう言えばあの「メタル」ですが、俺はいつの間に使えるようになってたんですか?」
「あのデカブツの中身を切った時よ」
人を殺した時か。
「なるほど・・・魔導書に書いてあった経験を積むってやつですか?」
「そうよ。あと使える魔法は出来るだけ普段から沢山使って慣れておいた方が良いわ。魔法の熟練度が上がればそれも心や体に経験値として積まれて、効果が上がる魔法も多いから」
「なるほど、【オーバードライブ】は常に使っていても問題ない感じですかね?」
「そうね。外なら良いと思うけど強化した体の加減に慣れるまで家の中では使わない方が良いわ。触っただけで物を壊すから。あと「メタル」はリキャスト1分で今は連発は出来ないから忘れないでね。」
「分かりました」
「それと本にも書いてあるけど、ほぼ全ての無属性魔法に相乗効果があるわ。並行していくつも無属性魔法をかける事で強さが何倍にも増していくの。他の属性魔法と違うのもその特殊性の所為よ。そしてこの魔法は対象を選ばない。人にも物にも付与出来る。もちろん物体に付与しても効果の無い魔法もあるけどね。使えるようになった魔法は魔導書のそのページが見えるようになるから、これからは確認も忘れずにね」
「物にも?・・・じゃあそのへんの石に【オーバードライブ】かけて木とかに投げつけたら当たった物を破壊出来たりします?」
「無理ね。自分にかけて石を投げるか、石持って殴る方が攻撃力的には強いわ。でも【ディストーション】をかければ石は見えなくなるわ。魔力を帯びてない石なら魔力感知を持った魔族にもバレないわ。まあ普通の石当てて倒せる魔族も少ないけどね」
「なるほど。そんな使い方も出来るんですね。あぁ、これ人間相手なら暗殺に使えるのか・・・」
「言ったでしょ?汎用性が高いのよ。だから他の属性より強い。他の属性より強い。地球だと大事な事は二回言うんでしょ?」
「そんな文化も有った気がします」
「それと、さっきの戦闘で強制的に見せたけど、キューブはあんな風に使う事が出来るわ。イメージだけで任意の場所に荷物を出す事が出来る。勿論自分の近く限定だけどね。あと覚醒状態の時に無理やり意識に出てくると音無君にも私にも負担がかかるから、本当にヤバい時にしかやらないわよ。」
「あれは本当に助かりました。魔法の使い方は勉強になりました。【キューブ】の方は次からは問題なく出来ると思います」
「少し話を戻すけど「オーバードライブ」を使っている状態で「メタル」をかけたからあの程度で済んだのよ。あの爆発は「メタル」だけじゃ耐えられない。そしてサンシーカーが受けた爆発はさっきの数倍以上は有ると思う。あれと同じ兵器かは分からないけど、恐らく対聖霊用の術式を書いた専用の兵器を使ったはず」
「やはり特化型の兵器や対聖霊用の術式とか有るんですね・・・」
「特化型の殲滅用術式自体は私も知ってるわ。それを組み合わせたんだと思うけど、ただ、あの兵器は初めて見る物だから良く分からない。残骸でも残ってれば良かったんだけど、跡形も無かったからね。ただ柱の方は残ってると思うから明日回収しに行ってね。私は直接触れないけど鍛冶屋に見せれば素材位は分かるんじゃないかしら?あと骨と魔石もきちんと回収宜しくね」
「わかりました」
「さて、本題に戻るけどアレの対処法、音無君はどう思う?」
「有効かと思われる攻撃方法が、遠方からの攻撃しか思いつきません」
「そうね、現時点では私もそう思う。それとディストーションは見破られて無かったけど、後々対処されると考えておいた方が良いわね」
「そうですね。今回に限らず戦闘データを収集してる可能性が無いとも限りませんからね」
「うん、とにかくアレに関しても情報を集めないとね。ギルドに属すれば世界中からの情報を教えてもらえる筈だから、速い所ローランドに行きたいわね」
「そうですね、。あ、セレーナの件は見てましたよね?」
「ええ、あの子も街まで連れて行くんでしょ?良いんじゃない?彼女、音無君の事好きみたいだし、そのまま連れてっちゃえば?」
「未成年誘拐とかシャレになりませんよ。それに長旅になるし、安全も保障できない」
「あの子冒険者になりたいんでしょ?良いじゃない、それなりの才能は有ると思うわよ。私の見立てだと魔法適正は水と土と風、あと光ね。基礎体力は高そうだから武術もそこそこ出来そうだし、母親に薬学を習っているなら道中とても役に立つわよ」
「ダメですよ。さっき死にかけたばかりの俺じゃ、情けないけど自分の事で手一杯です」
「大丈夫よ。結果的にどうにかなったんだし、いつまでもクヨクヨ気にしない事ね。アレは本当にイレギュラーよ。それにやっと待ち望んだアナタが来てくれたんだもの、そう易々と殺されてたまりますかっての・・・まあいいわ。セレーナの事は一先ず置いといて、あの兵器の対処法だけど、さっきのやり方が一番安全よね。ディストーションを使った遠隔攻撃」
「こっちにもあの兵器の装甲さえ貫通出来る武器があれば、遠くから操縦者を狙撃して自爆を誘発させられますよね」
「そうね、あの剣位の切れ味がある武器が沢山用意出来れば良いんだけど。因みにアレ、私のじゃないからね。あの小屋は確かに私の小屋だけど、でもあそこに建てた覚え無いのよね・・・うーん二千年寝てて忘れてる事もあるから同じように忘れてるのかしら?でも剣は本当に私のではないわ」
「そうですか。色々謎ですね」
「ずーっと考えてて、どこかで見たような気もしない事も無いんだけど、やっぱり知らないのよね」
「お互い歳は取りたくないですね」
「私は十八よ」
「は?」
「私は十八才だから。JKだから」
「別に良いじゃないですか、三千何歳でも。大丈夫ですよ、見た目はちゃんと少女してますから」
「良く聞こえないし言ってる意味が分からないけど、私はピッチピチのじゅうはっさいだから。じゅ、う、は、ち」
「近い近い、顔が近い。そんなに近寄らなくても聞こえてますよ。分かりましたから離れて下さい。十八才の天才美少女でJKのアンダンテちゃん」
地雷を踏んでしまったので後処理をする。
「や~ん、これが地球のナンパってやつ~?やだ~どうしよ~口説かれちゃった~☆」
アンダンテは機嫌良さそうな表情でクネクネしたりクルクル回っている。
「うざい。果てしなくうざい。早く話題を変えな」ければ。
最後の最後で後処理を失敗した。
「心の声を9割喋ってるわよ・・・」
ポーズを解き、直立で呟く。
「「・・・・・」」
「あの装甲を貫けそうな武器や素材って心当たり有りますか?量産できそうなやつ」
「そうね、私は十八才だから良くわかんないけど、少なくとも黒鉄鉱は無理ね。多分あの装甲はアダマンチウムと黒鉄の合金よ。素材の希少度から見た比率としては黒鉄の方が多いと思うけど、少なくともアダマンチウム以上の硬度の素材を使った武器に魔力付与をしないと貫くのは無理だと思うから・・・・・ボウガンね。コストもボルトの鏃だけで済むから量産も出来る。十八才だから良くわかんないけど」
「そうですね十八だとよくわかんないですよね」
「そうね十八才だからね。でもまずはそれらを手に入れないとね。ボウガンは難しくないけど、アダマンの鏃はちょっと難しいわね。鉄や黒鉄位ならお金出せば手に入るけど、アダマンの方は今はどの位の流通があるのか分からないから調べないとね。どのみち結構なお金が必要になるから、魔石は大量にゲットしておくのよ!十八才だから効率の良いお金の稼ぎ方とか良く分からないけどね」
「そっすね」
「あとは、世界の現状も知る必要があるわ。村にいる間に村長にも話を聞いた方が良いわね。早く本探ししたいのに色々やる事が増えたわね。」
「そうですね、俺もこの世界に来たばかりだし、世界の事殆ど分かりませんから。」
「・・・まあ兵器の件は別に気にしなければ私たちがやる必要は無いのだけれどね。」
「でも多分、俺がこの世界に来たのって、そーゆー事ですよね」
「さあ、どうかしらね。仮にそうだったとしても、選ぶのは音無君自身よ。私はアナタを待っていたし、どのみち今はアナタの行く所に着いて行くしか出来ないわ。それにやってもやらなくても音無君には責任も無いし義務も無いから、思い詰めない方が良いわよ。ルーナを育てろ、とか、本を探せ、とか、森を救え、とか頭の中に見えてたけど、アレだってアナタが従わなきゃいけない理由は無いでしょ?第一、誰があんな依頼というか命令みたいなの出してるかも分からないし、顔位見せろってのよ」
「確かに・・・分かりました。ありがとうございます」
「気にしないで良いわ。私だって結局自分の都合で音無君に本探しとかさせようとしてるから、あまり人の事言えないし。本探しだって別に嫌なら断ってくれても良いのよ」
「良いんですか?」
「良いけど。その場合、私は君が死ぬまで毎晩ここで死んだ魚の目をしながら、君の事を朝まで見つめ続ける事になるけど」
そう言いながらアンダンテが膝を抱え死んだ魚の目で見つめてくる
断るという選択肢が無い・・・・。
「やりますよ、ルーナの育児も本探しも聖霊抹殺兵器の破壊も全部やりますよ」
「流石は音無君ね。三千年待った甲斐があったわ。」
彼女の笑顔と共に目が覚める。
「もう朝か」
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