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―報告と報酬―

 翌朝、全てのタルン村のエルフが集まり、見送りされオルガへと戻った。


「またオルガへ戻る事になるとは・・・・・・」


 朝起きると既に村人達が集まっており、俺達にお礼がしたいと言って領主が出した依頼報酬とは別に、村からの依頼と称された報酬を渡して来た。


「大量の農作物をオルガで売ってお金に換えてくれって言われてもなぁ・・・・・・どうすんだソウイチロウさん」


 御者台からダリアが話しかけてくる。


「そうだなぁ。ひとまず半分だけ売って残りは保管しておきましょうか。折角好意で貰ったものですし」


「病気のせいで今年は人為的な不作だって言っていたのに、大事な食糧を渡してくれるなんて。村の方々の食べるものは大丈夫でしょうか?」


 ダリアの隣のメリッサも村人を心配している。


「村人達は『いざとなったらその辺の草でも食べますので大丈夫です!』って言ってたけど、あれ本当かな?」


「本当らしいぞ」


 その場でエルフに冗談か確かめたが、どうやら本当にその辺の草を食うらしい。彼ら曰、エルフは元来草食で、他のものを食べるようになったのはここ最近(最近と言っても千年位)の話らしい。特に草以外にモノが食べられない訳でも無いが、その原因というか理由というか、食に対してあまり興味が無いという事らしい。『勿論なかには食べれない草もあるから良い子は真似しないでね☆』と言っていたのもダリアに伝えた。


 貰った農作物を【キューブ】の中にしまい始めると村人達がざわついたので、ルーナの力だと言って誤魔化したらいつぞやのトロン村の人達を思い出した。


 ルーナの話になった時、スミレが村人達に話を始めた。


「この村の住人達に伝えておくことがある」


「こちらのシーカーウルフのルーナはトロンの森のサンシーカー様の娘だ」


 スミレの言葉に村人全員が驚くと同時に一斉に跪いて手を合わせた。

「「やはり聖霊様だ! 聖霊様! ありがたやー」」


 エルフである村人達も薄々は気が付いていたらしく、宴の席でもルーナをもてなす村人は多かった。

 スミレは何処からか持ってきた自分より大きな岩を素手で砕いて形を整え、石に見た事のある模様を刻んだ。その様子を見て全員が口を開けた。もちろん俺達も。


「聡明なエルフには知る者も多いと思うが、これはサンシーカー様の刻印(シンボル)だ。今回、聖霊であるルーナ様にも多大なるご協力を頂いている。エルフにはこれがどういう事かはわかるな?」


「心得ております」

 村長が前に出てきて再度跪く。

「その祠をタルン村にて御祀りさせて頂き、この村の終わるその日まで永遠の祈りを捧げます」


 そうしてこの村でもサンシーカーの祠が設置された。

 場所はケットシーの祠の隣。


 聖霊信仰と言っても宗教的なものとは少し違っている。

 龍と龍騎士の関係とは違い、一つの聖霊しか祈ってはいけない訳では無い。スミレはその事を知っているので、ついでにと、この地にもルーナの石碑を置く事を思いついたのだった。


「こちらのケットシー様とサンシーカー様は姉妹なのは知っているか?」

「存じております」

 スミレの問いに最年長の村長が即答した。


「宜しい」

 スミレはケットシーの祠の隣にサンシーカーの祠の石碑を置く。

 見た目は狼と猫と生き物であれば別の種族になり姉妹兄弟等は無いが聖霊なので血は無いが人間でいう血縁関係みたいなものがあり、それに基づくとルーナはケットシーの姪っ子になる。


 とまあ朝一でこういった事があり、緑の国にもサンシーカーの祠が祀られる事になった。

 ルーナにとって純粋な信仰を得られるこの国に祠が置かれる事は、聖霊として更に大きな力を得る事が出来る要因となる。


 原因は何であれ、この村に来れて良かった。


 オルガへと戻り、俺は馬車を預けるため、皆を先に降ろしてギルドへの報告を任せた。

 馬車を預けた後、ギルドへと迎えに行くと中から言い争うような声が聞こえている。

(何か揉め事か?)

 ドアを開けて中へと入ると受付で騒いでいたのはうちのパーティーメンバーだった。

 

「依頼は熟しただろう。正当な報酬を払え」


「ですから村の周辺に大きな被害が確認されていますので、その分は減額されてしまうのです」


「こっちは奇病の原因を取り除き、その病の治療まで施したのだぞ? 山の一つが崩れたくらい大した問題では無いだろう。自国の領土に招かれざる者がおったと言うのに大森林の長老達は何をしておったのだ?」


「!?」

 スミレの最後の発言に、周囲のエルフ達が顔をしかめた。


「スミレ」

「そういちろ!? ン・・・・・・」

 周囲の様子を窺いながら近寄っていた俺はそのタイミングでスミレの隣に立ち、周囲の雰囲気ごと落ち着かせるために彼女にキスをした。


「ソウイチロウさん!?」

「「ソウイチロウ様!?」」


 スミレはしばらく惣一郎の唇を堪能すると落ち着きを取り戻してこちらを見た。

 ギルド内も一瞬にして空気が変わり、スミレに向けられたエルフ達の不穏な気配も無くなった。


「君にしては珍しいな。何となく聞こえてたけど何があったんだ?」


 すぐ横で顔を赤くしているダリアに説明を求めた。


「えっと、山が崩れた事が問題らしくて、報酬が大幅に減額されたんだよ」

 搔い摘んだ説明だったが、内容はすぐに理解できたので貰える報酬額を聞き返す。


「それで報酬はどれくらいになったんだ?」


「金貨50枚の報酬が金貨1枚になった」


「そうか。まあ貰えるならそれでもいいじゃないか。魔石もある事だし、ついでに換金して貰おう」

 坑道の奥に辿り着くまでに倒したアンデッド達の魔石はしっかり回収していたので、それを買い取って貰う事にした。アンデッド達は内包している魔力量が大きい為か、魔石のサイズもそこそこ大きい。そしてもちろん浄化済みなので買い取り金額は期待できる。お金にはあまり困っていないがあるに越した事は無い。受付嬢は純度の高い魔石に驚きながらも鑑定を終えお金を持ってきた。


「なんだかんだで金貨500枚ちょっとになったな」

 魔石の買い取り額だけで金貨500枚を超えた。これで当分はお金に困らないだろう。取り合えず城を任せているミハエルへ半分ほど預けておいた。

 毎日報告を兼ねて手紙のやり取りをしているが、普段のあの性格からは考えられない程しっかりとした内容の手紙を寄越してくる。

 

 報告と言えば、先日謀反を起こしたコンデ公の処遇をラグン侯爵に任せておいた件の事後報告があり、コンデ公はラグン候に捉えられ死罪となった。コンデ公の家族は平民となり、領土は一度こちらに預けられたという事だった。昔なら一族全て死罪となるらしいが、その辺りはミハエルの裁量で家名断絶を指示したという事だった。張本人の処刑は避けられないが、俺自身も余計な血は流さなくて良いと思いミハエルの判断を支持する返答を出した。


 領地が増えた事で益々お金がかかるようになる。

 公爵の財産も徴収したと思うが、早い所、適任者を見つけて領地を任せてしまいたい。

 全てミハエルに投げっぱなしになるが、彼は俺など比べ物にならない程の統治っぷりを見せてくれるだろう。なんなら全部差し上げてもいい。むしろそうしたい。


「惣一郎、先程はすまなかったな」

 俺がギルド宿でミハエルへの返事を書いているとスミレが謝って来た。彼女が謝る必要などないのに。そう思いつつ彼女の話を聞くために振り返る。


「謝る事はありませんよ。スミレはこの国の心配をしていたんでしょ?」


「ああ、だがもう少し言葉を選ぶべきだった」


 確かにスミレにしては珍しく興奮している様子だった。何かいつもと違う雰囲気が伝わって来たので尋ねてみる。


「キュリアンとの戦闘で何かありましたか?」


「・・・・・・隠す事では無いがどうした物かと思っていた。実は、この国の外れに龍を感知した」



いつもお読み頂き、ありがとうございます。


11月も頑張って投稿したいと思います。


いつも読みに来て頂いてる方々、感想頂いた方、評価頂いた方々、誤字報告頂いた方々、ブックマーク登録頂いた方々、ありがとうございます!


少しずつ見てくれる方が増え、嬉しい限りです。

これからも頑張って続けて参りますので、応援よろしくお願い致します。


読み辛い所もあるかと思いますが、気に入って頂けたらブックマークや評価、感想を頂けると嬉しいです。


誤字報告なども頂ければ幸いです。


今月も頑張ります!

宜しくお願いします!

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