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―入国・緑の国・オルガ―

 日付が変わったあと、ホビット族の村を出て国境手前の村へとやってきた。

 俺は一応、王家の家紋も背負っているので正しい手続きを踏んで出入国する事にした。


「さすがにもうこの国の兵士でソウイチロウさんの名前を知らない奴は居ないな。国境の兵士までしっかり連絡が行き届いてるぜ」

 今回、赤の砦を出る時には冒険者パーティーとして冒険者証にて身元照会をしたのだが、兵士達はプレートに表示した名前を見ただけですんなり通してくれた。

 砦をくぐる前、何人かに握手を求められたのでそれに応じた事で若干時間を取られてしまったが、(おおむ)ねすんなりと出国できた。


「上空から少し見てはいたけどこうやって歩いて見渡すと壮大さが感じられて良いね」

「ワン!」

「そうですね! それに風が気持ちいいです!」

「確かにスゲエな! どうやって作ったんだこんなデカいの」

「こんな風になっているんですね」

「我も歩いて渡るのは初めてだ。この橋は3000年前には既に出来ていた筈だがどこも傷んでる様子が無いな」


 東の大陸、アストラは大陸の中央が割れ、海を挟んで北と南に分かれている。


 遥か昔の賢者たちがこの大陸の南北を繋げるために、大陸の東西2か所にこの橋を掛けたそうだ。

 一つはアイバニー側にある大海橋(だいかいきょう)サンブリッジ。もう一つがココ、ムーンブリッジ。 名前の由来は想像するに容易く、サンシーカーとケットシー・ムーンキーパーが由来だ。


 下手に人の名前や地名にするとそれはそれで揉める原因になったりするから中立性を保つ為にそうしたんだと、その晩にアンダンテが解説してくれた。

 建設にお金出してるのは両国だとしても橋の名前一つで国同士が揉めるってのもなんか心が狭いというかセコイというか、些細な事で争わないで欲しいと思うのは俺だけじゃない筈。

 賢者たちは橋の名前一つ決めるのにもやはり賢者たり得る者なのかと感心した。


「・・・・・・それにしてもこの橋、長いですね」

 かれこれ3時間は歩きっぱなしだ。馬車が欲しくなる。


「ルーナ様!」

「ワン!」


「転ぶなよ~」

「は~い!」

「ワン!」


「・・・・・・若いってスゲエな」

「ダリアだってまだ若いでしょ」

 

「我からみれば皆はまだ産み落とされたばかりの赤子同然だぞ」


「スミレを比較対象にするのは・・・・・・」

 うちの野生児二人がキラキラした笑顔で走り出し、皆はそれを眺めつつ歩く。ホビットの老人達に中てられてしまったのか会話が既に年寄り臭くなってる。


「このままじゃ対岸に着くまでに腰が曲がってしまう。全員で走るぞ」

 皆に【オーバードライブ】をかけて走る事にした。

 途中で乗り合い馬車群を数回抜かした。人族三人はけっこうがんばって全力で走ったが、先を行く十代には追い付けず仕舞いだった。若いって素晴らしい。


 対岸の砦に着くとセレーナが何やら兵士達と仲良く話している。

「ソウイチロウ様! こちらです!」

「ワン!」


 セレーナに呼ばれて近くに行くと、エルフの兵士が敬礼をしてくれた。

「オトナシ・ソウイチロウ伯爵殿、お待ちしておりました。サビエシルバの王都より伯爵様御一行の身分証を預かっております故、そちらをお渡し致します。ご確認頂けましたらここに受領のサインをお願い致します」


 全員分の身分証が用意されていて、各自受領書にサインを書く。

 エルフの兵士達はルーナを囲んで挨拶をしている様だった。キャロルから話は聞いていたが、この国の聖霊信仰は深く、普段姿を見る事の出来ない赤の国の聖霊様が来た事で砦の兵士達が全員ざわざわしていた。

「ルーナの前に一列に並んで握手会みたいになってるな」

「握手というか、【お手】だぞ」

「それは言うなよスミレ」


「【おて】ってなんですか?」

「握手の別名みたいな感じかな」

「なるほど!」

 心が汚れちまったオジサンにはセレーナの素直さが眩しすぎて心に刺さる。


 こちら側でも少し時間がかかったが、無事に緑の国へ入国した。

 ここから大森林に行くには更に数日かかるとの事で俺達が徒歩で来たのを見て驚いていた兵士が俺達に馬車を貸してくれた。


「大森林の深部では馬車を降りなければ行けませんので手前の街に寄って頂き、詰め所に返却して頂ければ構いません」

 馬車と一緒に預かり証を渡されたので道具袋にしまっておく。


 ケットシーの居る大森林の深部は道が無く、馬車が入れないらしい。


 この国は国土の半分以上が森に覆われている。

 兵士の話では砦を越えて少し行くと小森林と呼ばれる森に入り、それを抜けると少しの平原がある。その先が大森林らしい。


「この道を真直ぐ進んで頂ければオルガという町があります。今日はそこで準備をしつつ休まれるのが宜しいかと思います」


「わかりました。ご丁寧にありがとうございます」


「皆様に聖霊のご加護があらんことを」


 兵士達に祝福の言葉を貰いつつ惣一郎達は国境から一番近い町、オルガを目指して馬車を進ませる。


「スミレに乗って空から行く予定でしたが、考えが甘かったですね」


「我はそれでも構わんが?」


「龍に乗ってエルフの大結界を破る形で侵入したらそれこそ国際問題になるので止めておきましょう」

 大森林には森全体を覆う結界が張られている。


 流石にここでは空を飛ぶ訳にもいかず、俺達は馬車で深部を目指す事になった。


 龍を連れているだけでも既に条約違反で命が危ういのに、隣国の防壁結界壊したら間違いなく敵対行為としてとらえられてしまう。私の胃に穴が空くだけでは済まないかもしれない。

 ・・・・・・いや、空を飛べば俺の首も飛ぶ。


 荷台で胃薬(お茶)を飲みながら過ごし、半日ほどでオルガに着いた。

 この街は国境に近い事もあってエルフとヒュームが半々位に見える。小さい街だが櫓の上に見える兵士の中には銃を担いでる者も見える。


「他国にもしっかり銃が配備されているな。これなら少しは安心できる」

 今回の遠征で配備されている様子が確認出来た事でゴーレムに関して俺達が出しゃばらなくても問題は無いだろう。他の問題も起きて欲しくは無いが・・・・・・。


「ソウイチロウ様! ギルドがありますよ!」

 メリッサが冒険者ギルドを見つけた。取り合えず宿を取る為にそのままギルドへと向かう。

 部屋を取ったあと、晩御飯まで自由行動にした。


 スミレはダリアと、セレーナはルーナと、俺はメリッサと共に行動した。


「緑の国に入れば後は進むだけだからな。伝言の様子じゃ特に急ぐことも無さそうだし進みながら出来る依頼を探そう」

 俺達は久々に冒険者らしい事をしようとギルドへと向かい、依頼を探している。


「国境警備や犯罪者の捜索や移送護衛の依頼が多いですね」

 二人で手分けして依頼を探しているが、メリッサの見ている方は国境っぽい内容の依頼が多いみたいだ。冒険者も依頼で警備や護衛に駆り出される事があるのかと関心していると頭の中に文字が浮かぶ。


渓谷(けいこく)(やまい)を癒せ」


(!? 久々に来たな・・・・・・)


 少し動揺して後ずさりしたが、体勢を直してから見えた文字を冷静に思い出す。


(渓谷の病? ここからどこかの渓谷へ向かえば良いのか?)

 掲示板の前で思案しているとメリッサが何枚かの依頼書を持ってこちらにやって来る。良さそうな依頼が見つかったのだろうか?


「ソウイチロウ様、取り合えず何枚か持ってきましたので、一緒に見て貰えますか?」


 ギルド内のテーブルに座って彼女が持ってきた依頼書を見る。

「これかな」

 一枚の依頼書をメリッサに見せる。


「ブラーム渓谷の奇病の調査。ですか?」


 あのタイトルコールに浮かんだ内容。渓谷と病の両方が当てはまるのでこれ以外は無いだろう。


「わかりました。では受付で場所と詳細を聞いてきますね」

「私も一緒に行きます」


 受付で渓谷の場所と詳細を聞く。

 渓谷の場所はここから北東に数日進んだ場所で渓谷にある村々で原因不明の奇病が発生していて、文字通りその調査と可能であれば治療をお願いしたいという内容だった。病気に関しては現地で直接見て欲しいとの事。方向的には同じなので問題は無いだろう。

 一度保留にして持ち帰り、夕食時にみんなに了解を取ってから依頼を受けた。





いつもお読み頂き、ありがとうございます。


11月も頑張って投稿したいと思います。


いつも読みに来て頂いてる方々、感想頂いた方、評価頂いた方々、誤字報告頂いた方々、ブックマーク登録頂いた方々、ありがとうございます!


少しずつ見てくれる方が増え、嬉しい限りです。

これからも頑張って続けて参りますので、応援よろしくお願い致します。


読み辛い所もあるかと思いますが、気に入って頂けたらブックマークや評価、感想を頂けると嬉しいです。


誤字報告なども頂ければ幸いです。


今月も頑張ります!

宜しくお願いします!

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