―少女―
慌しい一日だった。
まさか転生初日で死にかけるとは。
一日に2度死んだら流石に笑えない。
・・・一度でも笑えないや。
今はなんとか生きていて湯船に浸かりながらぼーっとしている。
服を脱ぐ前にルーナを先に洗って拭いて後の事をセレーナに任してからやっと自分の番だ。
ルーナの土埃で浴室をかなり汚してしまったが、水を流して軽く掃除はしておいた。
メイドさんごめん。
「ふぅ、風呂は良い。この世界でもこんなしっかりとした石造りのお風呂に入れるとは思わなかった。命の洗濯だ」
流石、村長の屋敷である。
食事も美味しかった。
なんかスープみたいなのと・・・ステーキと・・・サラダとパンだった・・・と思う。
疲れててあまり覚えていなかった。
申し訳ないな。明日はもっと美味しそうに食べようと思う。
風呂を出て着替える。
服が先程のではなくまた新しくなっていた。
「これ、村長の服かな?それにしてはサイズが合うな」
村長は俺より背が低いのでサイズが違うはず。
「まあいいか、借り物にアレコレ言ってはいけない」
部屋に戻るとすぐにノックされた。
「セレーナです。ルーナ様を連れてきました」
「はい、どうぞ」
ドアが開くとルーナがセレーナの腕から飛び降りてベッドの上に飛び乗った。
「相手をしてくれてありがとうね」
「はい、ルーナ様と遊ぶのは楽しいです」
「あの、オトナシ様、少しお話しても宜しいでしょうか?」
「ん、もう遅くないですか?寝る時間は大丈夫ですか?」
時間が分からないので何とも言えないんだが、取り合えずそう言ってみた。
「大丈夫です!まだ9時です!」
「え、時間わかるの?」
「はい、そこに時計が有ります」
そう言って部屋の一部を指さすと、大きなノッポのそんなに古くない時計があった。
昼間の俺はフシアナeyeだったらしい。
「なるほど、9時ですね」
丁度9時だった。この世界にも時計があった。でも時計って高級品なんじゃない?
他の家にも普通にあるのかな?まあいいや。
セレーナはルーナの乗っているベッドに腰を掛けた。
俺は隣のベッドに腰かけている。
「「・・・・・・・」」
沈黙が流れる。
十代の子と何話せばいいんだ?テレビも無ェ ゲームも無ェ、そもそも娯楽が分かって無ぇ。
ピアノも無ぇ(物理的に)、バーも無ェ(年齢的にも話題的にも)、ルーナはベッドでぐーるぐる。(寝床を整地している)
何か話題を考えて居るとセレーナが話始めた。
「オトナシ様」
「はい」
「オトナシ様はどちらにお住まいになられてるのですか?」
「ん-と決まった場所に家を構えてはいませんね」
「そうなのですか、ではこの村に住むのは如何ですか?」
「ん-そうですね、今はまだする事があるので一つの場所に留まる事は出来ませんが、いずれはそれも一つの選択肢になるかと思います」
言葉を濁す。
「そうですか。そう言えばオトナシ様はどちらのご出身なのですか?」
「ん-ここから遠く離れた場所ですね」
「西の大陸ですか?」
「いえ、違います」
「じゃあこの大陸ですか?」
「いえ、違います。気になりますか?」
「・・・ごめんなさい。サンシーカー様のご友人の方であれば言えない事もありますよね」
良い子だなぁ。
話しても良いんだけど、流石にこの星ではない違う星から来たなんて、やはり説明が付かないんだよな。自分の意思で来たわけじゃないし。惑星や宇宙と言った概念は無いだろうし。やはり聖霊様パワーを使うしかないな。ごめん、聖霊様。
「内緒ですよ、実は私はこの世界の人間ではありません。聖霊様に導かれてこの地に来たんです」
「え?」
この説明じゃダメか・・・。
「そうなんですか?!凄い!(あ、大きな声出してごめんなさい)」
小声で謝られた。
大丈夫だったらしい。流石は聖霊様だ。
「はい、他の方には内緒にして下さいね」
「分かりました。内緒にします。でもそれで髪の色とか最初に来ていた服とか色々違ってたんですね」
「髪の色?」
「はい、この世界は魔族以外で黒い髪を持つ人は居ないんです。だから最初見た時はビックリしました」
「最初、ルーナと遊んでた時ですね」
「いえ、その・・・この部屋でお休みになられていた時で・・・あ、ごめんなさい。ルーナ様がドアを掻いていらっしゃって音が聞こえて、開けて欲しいのかと思って開けてしまって、その時にそちらのベッドで寝ているオトナシ様の事をお見かけして・・・黒い髪を見て驚いてしまって。でもお爺様も「聖霊石を運んで来て頂いた方だから大丈夫だ」と言っていましたし、お話しもしてとても素敵で良い人だと分かりましたし、今は髪の色は気になりません」
あーあの時か。それでドア閉め忘れて空いてたんだな。
んーでも村長はあまり驚いてなかったな。でもそうか、黒い髪でも聖霊様から使いを寄越したみたいな言葉を頂いたって言ってたし、あとは年の功だろうな。・・・なら村の人がソワソワしてたのは黒髪のせいか。なるほど。
「いえ、大丈夫ですよ。でも髪の色が目立つなら次の場所に行く前に髪の見えにくい服装を考えた方が良さそうですね。ありがとうございます。参考になりました」
「あ、あの、・・・・怒って無いですか?」
「事実を教えて頂いただけですから。この世界にはこの世界の理がありますし、それを理由に怒ったりはしませんよ。例えそれが自分に何か不都合があったとしてもセレーナさんのせいでは無いですし、誰のせいでも無いですからね」
「良かった・・・。あの、あと、私の事は是非セレーナとお呼び下さい」
ん-そうか、呼び捨ての方が緊張もほぐれるかな。
「わかりました、セレーナ」
「はい!ありがとうございます」
「所でオトナシ様はおいくつでらっしゃいますか?」
きた、この質問。
実年齢を言うべきなのか、肉体年齢を言うべきなのか。もしくはエルフ的な感じで長命な種族的な事を言って辻褄合わせれば良いのか・・・・。
いや、エルフの線は無いな。そうだな、折角転生した事だし、肉体年齢にしておこう。四十の俺は死んだ。今は二十歳という事にしよう。そうしよう。二十歳おめでとう、ハッピバースデイ音無惣一郎。
「二十歳ですよ。セレーナさ、セレーナはおいくつですか?」
「わ、私も二十歳です!」
うーんバレバレのウソだなぁ。身分証で年齢確認しなくてもわかるぞ。セレーナ。
「本当は?」
「・・・・じゅ、・・・十六・・・・十五です。」
顔が真っ赤だった。
「で、でももうすぐ十六になります!」
背伸びしたい年頃なんだよね。わかる。
「そうですか、この世界の成人は十六ですか?」
「いえ、・・・十八です」
「ならもうすぐ大人の仲間入りですね」
「二年は長いです・・・・」
「今は長く感じるかもしれませんが、長いようで短かったりしますよ」
「うーん・・・私は・・・オトナシ様と一緒に旅に行きたいです。旅について行きたいです」
唐突だった。
「突然ですね」
「・・・・私は世界を見てみたいです。子供の頃から走るのが好きでした。走って走って自分の知らない場所に辿り着いて、景色を見て、自分の世界を広げるのが楽しくて。もっともっと見てみたくて。でも」
「でも?」
「世界には怖い魔物も居て、自分の力ではどうしようもなくて。旅をするには自分も冒険者の様に強くならなきゃいけなくて。でも私は・・・この森を守る一族の末裔としてこの村を離れるわけには行かなくて・・・。でも・・・」
「・・・なるほど。色々悩んでいるんですね。・・・話してくれてありがとう。旅の件はひとまず置いておいて、ローランドまで一緒に行くのはどうですか?ここから馬車で三日位の所ですよね?勿論ご家族の許可を得られたらになりますが」
「ローランドなら何回も行ったことがあります。多分それ位なら許してくれると思います」
「良かった、それなら私からストラルさんにお願いしてみます。冒険者ギルドへの登録もしたいので街の中を案内して欲しいのですが、街の中はご存じですか?」
「はい、大丈夫です!」
「まぁ取り合えずは許可を貰わないとですが、その時は宜しくお願いします」
「はい、私のわがままを聞いて下さってありがとうございます。家族以外の方との旅なんて初めてなので、良い思い出になります」
「そう言えばご両親はこの屋敷には住んでいないのですか?」
「いえ、両親も住んでいますが今は二人共サンシーカー様の事を伝えに馬車で隣村のホルンに行っています。今朝出発したのでオトナシ様とはお会い出来ていませんよね」
「ご両親二人で隣村へ?」
「はい、丁度薬草の仕入れも重なって。ホルンの近くは良い薬草が沢山取れるので、定期的に仕入れているんです。この村はガボットさんが居るので農具や鍋や武具等を修理したり新しい物へと交換したりと、互いの村に無い物を補っているんです」
「お母様はそういった隣村との交易とかのお仕事というか役割をなさっているのですね」
「はい、薬草の仕入れと調合は母の仕事なんです」
「なるほど、薬屋的なお仕事も兼任しているんですね。村を守る大切なお仕事だ」
「はい、母は元々隣村の出身なので、薬草に詳しいんです。私も色々教えて貰いました。何れは母の跡を継いで村の薬師になると思います」
「なるほど、立派な事です」
「はい、がんばります」
「あの、オトナシ様は、世界を見て回る旅をなさるんですよね?歴史の書物を探しながら他の地の聖霊様の安否を確認しに行かれると」
「はい、目的としてはルーナを他の聖霊様に合わせたいというのもありますが、私もこの世界に呼ばれたからには何か役目があるのだろうと、そう思っています」
「それを果たしに?」
「そうなります」
「あんなに・・・大変な目に合われたのにそれでも?」
「そうですね・・・少なからずこれから何度も危ない目に合うと思います。今回は何とか生き残る事が出来ましたが、次は死ぬかもしれませんしそれも覚悟しなければなりません」
「怖くは・・・・無いですか?」
「怖いですね。今だって生きてるのは本当に運が良かったとしか言えない。だから死なないように色々頑張るつもりです。出来るだけ危険を避けるように注意もしていきます。私は怖がりなので」
「オトナシ様でも怖い事があるんですか?」
「私もセレーナと同じ人間です。怖い事は沢山あります。でも人の生死に関わる事ならそうも言ってられません、そこは覚悟を決めるしかないでしょう。例えば私は今日、自分の剣で人を殺めました」
「・・・・・」
「相手にも家族や仲間が居たと思います」
「事実を知れば彼の家族や友人には恨まれるでしょうし、殺されるかもしれません。私が踏み込んだ世界はそんな世界です」
「・・・悲しいですね」
「ええ、誰もが自分や大切な人の命を守るために誰かを犠牲にしなければ生きていけない世界なんて、悲しい世界です」
「諦めても、抗っても、数えきれないほど多くの集団で生きて居る限り、その事実は変えられないでしょう」
「そこに答えなど無いんです。だから人は迷った末に自分以外の何かに縋って生きていくんだと思います」
「それが良いとか悪いとか言うつもりはありません。私もそうやって生きてきたし、これからもそうすると思います。自分に出来ない事なんて沢山有ります。そんな時は誰かに頼れば良いんです、一人で全て抱え込む必要は無い。大人でも子供でも関係ありません。そうやって支えあって生きていく。その為にも自分が出来そうな事は全てやるつもりです。例え自分の行いが、誰かを運命を変える事になっても、人はずーっとそうやって生きていくんだと思います」
「・・・・・」
「どんな道を選んでも少なからず後悔はあるでしょう。結果は先に見えませんから。でもやらない後悔よりはやって後悔する方が諦めはつきます。自分自身が選んだ道なんだと。誰かのせいにしない為に。誰も恨まないように。ね」
いかん、歳を取るとつい話が長くなってしまう。
「すいません、一人で話してしまいました。私はこれ位の事しか言えません。何かの参考になれば良いのですが・・」
「・・・はい、ありがとうございます。オトナシ様のお話、大変参考になりました。・・・私にはまだ分からない事も沢山ありますが、出来るだけ後悔の無いように、自分で選んで進んでいけるように頑張ってみます」
「はい、それではそろそろ寝ましょうか」
「はい、お疲れの所遅くまでお相手させてしまってごめんなさい。あと、ありがとうございました。それではまた明日」
「ええ、また明日も宜しくお願いします。セレーナおやすみなさい」
「はい、オトナシ様おやすみなさい」
お読み頂き、ありがとうございます。
文章力が無いので読み辛い所もあるかと思いますが、気に入って頂けたらブックマークや感想を頂けると励みになります。
ぜひよろしくお願い致します。
作中の細かい部分の解説ですが、主人公の名前の表記ですが、音無とオトナシの違いはその人物が漢字を知っているか知らないかです。
サンシーカーやアンダンテは主人公の記憶を見て漢字を理解しているので、表記の仕方を変えています。
見辛いかもしれませんがご了承下さい。




