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―蛮族―

「ワン! ワン! ワン!」

「お久しぶりです! シェーナさん!」

「ルーナ様!?セレーナさん! お久しぶりですね!」


 セレーナ達はゴブリン討伐隊に合流し、参加していたシェーナを見つけて挨拶をかわす。


「「ルーナ様、セレーナちゃん、お疲れ様!」」

 ゴブリン討伐隊と先に合流していたダリアとメリッサがセレーナに気が付く。


「お二人共、お疲れ様です!」


「ついた早々でお疲れの所申し訳ありませんが、無事にトロール討伐隊も揃ったところで一度状況をお話しします。こちらのテントへ来て下さい」


 シェーナは足早にセレーナ達と各隊の部隊長をテントへと案内する。


「ゴブリンの討伐隊だけ時間がかかってるのはそう言う訳か」

 一通り説明を聞いてダリアが納得する。


「はい、申し訳ありません」


「いや、ごめん。責めてる訳じゃないんだ。ゴブリンが数千匹も居たらどの隊だって同じ状況になったはずだよ。こっちは全部の討伐隊合わせても600程度しか居ないんだ。むしろ1部隊だけで良く今まで抑えてくれてたと思うよ」

 ダリアが慌ててフォローする。


 シェーナの部隊は200人程。赤の国から第3兵団と第3魔団をそれぞれ100名ずつ引き連れて来た。


「山の洞窟とその周囲を要塞化していてまだ正確な敵の数が判明していませんが、昼夜問わず攻撃を仕掛けられていて、恐らく将軍クラスは確実に、現在確認出来ているのがナイト、ビショップ、アーチャー、ライダーです」


「他にもヒーロー辺りが数体は居るんじゃないかな」


「はい、恐らくはジェネラル同様に奥に控えているかと思われます」


「ダリアさん詳しいですね」

 セレーナがダリアを尊敬の眼差しで見つめている。


「まあね。それなりに長いこと冒険者やってると嫌でも覚えちまうんだよ。特にゴブリンは群れになると災害級と呼ばれる程の脅威だって教えられるからさ。それと女はゴブリンに捕まったらすぐに下を噛んで死ねとも教えられる」


「え!?」

 セレーナはゴブリンについては王都の図鑑で見た程度で、民間や冒険者等の伝承までは知らなかった。

 そのあとダリアはセレーナに自分の知っている限りの事を話し、彼女は言葉を詰まらせる。

「そんな・・・」


 ゴブリンは1体ならそれほどでもない魔物だが、100を超えた辺りから爆発的に繁殖して一気に災害級と呼ばれる数まで増え、そしてその犠牲になるのは人間やエルフ、亜人等の女性だった。



「ゴブリンは例え小さな赤ん坊でも殺さなければなりません。たとえ赤ん坊でも背を向ければ不意打ちされて殺されますし、1匹逃せば数か月後にいくつもの村が滅ぶことになります。くれぐれも気を付けて下さい」

 シェーナが語気を強めてセレーナに注意を促す。


「・・・わかりました」

 セレーナが深く頷くと同時にテントの外が慌しくなった。


「敵襲!!敵襲!!」

 ゴブリンの部隊が討伐隊の陣営に襲い掛かって来たのだった。


「敵の数はおよそ150から200体の急襲部隊です!」

 急いでテントから出るとシェーナは状況把握に努めながら部隊に命令を出す。 

 セレーナ達も指示に合わせてツーマンセルで動く。


「コイツ等も装備を身に着けてるのか!」

 ゴブリンの一部がオーガ同様に人間の兵士の装備を身に着けていた。

 犬型の魔獣に乗ったゴブリンライダーと呼ばれる兵士が辺りを走り回ってかく乱している。


「ルーナ様! メリッサさん!」

 セレーナの合図と共にルーナは大きく息を吸う。

「ワォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!」

「アイスバインド!」 

 ルーナのハウリングバインドによって周囲のゴブリンたちの動きが鈍り、さらにその周囲のゴブリン達がメリッサの魔法で腰まで氷漬けになる。


「シェーナさん今です! 」

 セレーナの掛け声でシェーナは号令を出す。


「第三兵団はスリーマンセルで動きの止まった敵から狙え!! 」

「第三魔団は制圧射撃! 奥の敵を近づけるな!」

「「「了解!」」」


 シェーナの合図で動きを止めた手前の敵から確実に排除していくと僅か20分程度で敵の急襲部隊を全て排除した。


「死んだふりをしてる奴も居る。敵の死体は全て背中とあたまを刺してから、首を刎ねて燃やせ。燃やし終わるまで気を抜くな!」


「「「了解!」」」


 各部隊長が指示を出し、兵士達がゴブリンの処理をしていく。


「ルーナ様のお陰で急襲をかなり楽に捌く事が出来ました。ありがとうございます」

 シェーナとその周りの部下達がルーナを取り囲んで撫でている。

「ワン!」

 ルーナは皆に撫でられて上機嫌の様子で尻尾を激しく振りながら目の前の兵士達の顔を舐め回す。


「お前たち!これで終わった訳では無い! 気を抜くな!」

 シェーナは部下達に活を入れると兵士達は一斉に背筋を伸ばして直立不動の姿勢をとる

「「「はい!」」」


「ワン!」

 ルーナはシェーナに抱きついて押し倒して彼女の顔を舐め回す。

「きゃ!?ルーナ様!・・ぶふっ・・そん・・ダメ・・はげし・・鼻を・・鼻・ばかり舐めないっ・・・で」

 ルーナは興奮して抑えが利かなくなっていて執拗にシェーナの鼻の辺りを舐め回している。

 見かねたセレーナがルーナを引きはがしに駆けつける。


「ルーナ様落ち着いて下さい! 」

「ワフ!ワフ!」


 セレーナが力ずくでシェーナからルーナを引きはがすと彼女は倒れたまま顔を両手で覆っている。

 覆っている手もベロンベロンに舐め回されていて涎でテカっている。

「うう・・ルーナ様・・・」

 泣きそうな声でつぶやくシェーナを兵士達はなんとも複雑な表情を浮かべて見ている。


「ルーナ様! めっ! ですよ!」

「クゥン・・・」


 ルーナはセレーナに叱られてしょぼくれる。


「ルーナ様、おやつあげるから元気出してな」

 ダリアがキューブから生肉を取り出してルーナを慰めると、メリッサはシェーナに駆け寄り彼女を抱き起こし、女性兵士数人と一緒に奥のテントへと連れて行く。

「シェーナ様、あちらのテントで身支度を整えましょう」

 

 メリッサ達と身支度を整えたシェーナは気を取り直し、部隊長と交代で兵士の指揮についた。

 その後2回急襲があったが、難なく跳ね除ける。


「大体3時間おきに急襲があるんですね」


「ええ、次の急襲になるとおもいますが夜明け前は敵の数が多いです」


「ですが貴女方にオトナシ様のスクロールを提供して頂いたので、ある程度作戦が固まりました。こちらも夜明けと共に攻撃に移ります」


「はい! 念の為追加のスクロールも先程お願いしておきましたので、夜明け前には追加で貰えると思います」

 メリッサはオーガ討伐に使わなかったスクロールをシェーナに提供し、尚且つ惣一郎達にスクロールの追加を要請した。


 そう、彼女は出来る子だった。


「そう言えばメリッサ様達はオーガの討伐ではスクロールは使わなかったのですか?」

 シェーナがメリッサにオーガ討伐時の状況を聞いた。


「はい、ここのゴブリンほど数は多くなかったので何とか使わずに倒せました」

 ダリアとメリッサは迷宮装備を駆使してオーガ討伐をやってのけた。


 もちろん、彼女達二人だけではなく、赤の国とクロイツェル王国の混成部隊の部隊長率いる兵士達と力を合わせて戦った訳だが、ダリアが持つファフニールの毒の力が付与されたツヴァイダガーとメリッサの纏うオーケアニスの魔力の付与された水のローブが彼女達の想像を超えるとてつもない威力を発揮し、オーガ達は次々と倒れて行ったのだが、それはまた別の機会に。


「そうですか。やはりオトナシ殿のパーティーの方々は頼りになりますね。僅か6人で国を落としただけの事はある」


「いえ、オトナシ様に比べたら私なんてまだまだです」

 シェーナは謙遜するメリッサに魔導船での出来事を話始めると彼女は身を乗り出してシェーナの話を真剣に聞く。


「もうそろそろ準備に入りましょう」


「はい、急襲に備えましょう」


 二人は夜明け前の急襲に備えてテントを出て準備を始めた。






いつもお読み頂き、ありがとうございます。


10月も出来るだけ頑張って投稿したいと思います。


読みに来て頂いてる方々、感想頂いた方、評価頂いた方々、誤字報告頂いた方々、ブックマーク登録頂いた方々、ありがとうございます!


少しずつ見てくれる方が増え、嬉しい限りです。

これからも頑張って続けて参りますので、応援よろしくお願い致します。


読み辛い所もあるかと思いますが、気に入って頂けたらブックマークや評価、感想を頂けると嬉しいです。


栞代わりのブックマークでも構いません。(言葉の意味は同じですが)


誤字報告なども頂ければ幸いです。


今月も頑張ります!

宜しくお願いします!

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