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―相打ち―

「まだよ」

 声が聞こえた。聞いたことのある声。アンダンテの声。


 爆発が見える、かなりゆっくり時間が流れている。超スロー再生の映像でも見ているかのようだ。

 瞳孔が開き、思考が加速している。

 自分の中に自分のではないイメージが流れてくる。アンダンテの意識だ。


【キューブ】から自分の前に黒鉄盾を取り出すイメージと同時にアンダンテの詠唱が見えた。


「「【メタル】(過剰装甲)」」


 彼女のイメージと重なる様に唱えると同時に爆発に包まれた。






 気が付くと目の前に綺麗な星空が見えていた。

 顔の横にはルーナが居て一生懸命俺の顔を舐めていた。


「ワン!ワン!」

「ルーナ・・・ありがとう」


 寝そべったまま自分の手足の感触を確かめる。

 五体満足か?左右の手を握る。足首を動かす。


「全部あるな」


 身体を起こせるかな?

 肘をつき、体を起こす。


「大丈夫だ」


 自分の居る場所以外の地面は黒く焦げている。

 胴体の痛みを確認するとともに出血を確認する。


「出血も無いな。よし、大丈夫だ」

 そう言ってルーナを抱きしめてしばし彼女の好きなようにさせる。

 顔や耳をベロンベロン舐められているが気にしない。


 ああ、死ぬかと思った。


 油断し過ぎた。いくら魔法が使えるとは言え、さっきまでただのオッサンだった自分がそう簡単に百戦錬磨の戦士の様にあれこれ出来る訳が無い。アンダンテが助けてくれなきゃ彼女諸共死んでたな。

 反省しなければ。


 狼っ子に涎まみれにされながら反省した。

 ・・・ある意味ご褒美だが。


「さて、そろそろ立ち上がって現状を把握するか。」

 ルーナが剣の前に座っている。

 どうやら剣も無事だったみたいだ。吹き飛ばされてたのを持ってきてくれたのだろうか。

 ありがとうをお礼を言って、同じく無事だった腰の鞘へ剣を納める。


 どれくらいの時間気を失っていたのか分からないが、今生きているという事はアレ以外は敵が居なかったという事だ。

 運が良かった。


 直径三十メートル程だろうか。地面は綺麗なクレーターになり、俺は結界の端まで吹き飛ばされていて、俺の倒れて居た場所の結界の切れ目を境にして綺麗に草や木が生えている。


「こんな爆発が直撃してんのに良く死ななかったな俺・・・しかし、自爆前提の兵器とはな。普通の爆弾より悪質で非道な兵器じゃないか。しかも結界で逃げられなくして確実に相手を道連れにしようするなんて、本当に最悪としか言いようがない。クラスター爆弾や対人地雷、核爆弾と同じ、悪意の塊のような兵器だ」


 クレーターの中にはあの兵器の破片すら落ちていない。

 文字通り木っ端微塵だ。


 歩き出してから自分の足の装備が無くなっている事に気が付く。胸のプレートも大きくひび割れ所々欠けている。

 咄嗟に出した黒鉄盾が無ければ頭は無事じゃなかっただろう。

 あの盾も恐らく消し飛んだ。


「手足の代わりに装備持っていかれてたのか。これ位で済んだのは本当に運が良かった。無事なのはあの【メタル】(過剰装甲)という魔法のお陰か」


 メタルは防御の魔法で、物理、魔法その他全ての攻撃耐性を付与し、更に自分の防御力を越えた攻撃に対して一撃死を防ぐという隠し効果も備えている。取り敢えずかけておけば安心。というチート保険魔法よ!キラ☆

 by超時空 天才美少女




「・・・・・おい、超時空 地球かぶれ。勝手に解説するな。呼んでないぞ」


 気が付くと無意識空間(白い部屋)に居た。目の前には決めポーズのアンダンテが居る。


「や~ん、音無君たら~助けてあげたのに~そんな言い方するなんてひど~い。シクシク」


「助けてくれた事は感謝している。その件に関しては、本当にありがとうございました。あれが無きゃ死んでました」


「そうでしょ~。まあ音無君が死んじゃうと~私も一緒に死んじゃうから~他人事ではないし~、助けない訳にもいかないからね~。なんていうか~、一心同体?運命共同体?初めての共同作業?離れられない二人、ふたりはプリキュ・」

 バチン!

「痛っ!」

 アンダンテのおでこに光の速さで俺のデコピンが炸裂した。

 彼女は頭を押さえながらしゃがんでいる。


 それ以上は言ってはいけないし、そして(オッサン)を魔法少女関連に巻き込むんじゃない。クレーム(苦情)が来る。


「このフザケっぷりならこの辺に脅威は無さそうだし、続きは帰って寝てから話をしよう。」

 そう言って自分の意識を戻す様にイメージした。


「ァイタタ~、逃げたわね音無君・・・」





「ふう、上手く出来たな。この意識の切り替えも練習していつでも出来るようになった方が良いな」

「ワン!」


「よし、一度トロン村に帰ろう、多分あんな大きな爆発があったんだから皆心配してる筈だ」

「ワン!」


 着替えも無いので裸足でボロボロのまま、ルーナに道案内されて村へ戻った。

 裸足で外を歩くなんて小学校の運動会以来だな。



 村に着く。


「「「オトナシ様!」」」



 ストラル(村長)とセレーナ、ガボットの3人が村の中央の広場に居た。


「ただいま戻りました、遅くなってスイマセン」

「ワン!」ルーナがセレーナに向かって走っていく。

「ルーナ様!」

 セレーナがルーナを抱きかかえる。


「オトナシ様、その姿は!?」「お怪我は!?」「一体何があったんですか?」「森の方で大きな爆発があったみたいですが・・・爆発に巻き込まれて・・?」

 セレーナとガボットに交互に問いかけられる。


「セレーナちゃんありがとう。怪我は大丈夫です。」

「ええ、ちょっと色々ありまして。折角ガボットさんに売ってもらった装備をこんなにしてしまって申し訳ない。」


「怪我は無いんですね良かったぁ・・・」

 セレーナが安堵の表情を浮かべる。


「いえ、私の装備なんざ人を守って壊れてなんぼでさぁ!生きて戻ってくれさえすりゃ良いんです!それにあの黒鉄が壊れる位の戦闘をしたって事ですよね?

 ご存じかもしれませんが、黒鉄はアダマンチウムには及ばないものの、それに次ぐ強度を持った鉱物で、Aクラスの冒険者や国軍の近衛兵クラスが使ったりする、防具の中でも上位クラスの素材なんでさぁ!軽装とは言えそんな上位防具がボロボロになるような戦いがこの平和な森で起こるなんて・・・」

 ガボットもボロボロに壊れた装備を見て少なからず動揺しているみたいだ。


 ストラル(村長)が落ち着いて話しかける。

「ここでは何ですから、まずは私の家に行きましょう」


 ひとまず全員で村長の家に向かった。


 セレーナはボロボロになった俺の着替えを用意しておきますと言い一足先に自宅へ戻った。

 ルーナもセレーナに付いて走っていった。


 男3人で戻る間、二人からセレーナの動揺っぷりを聞かされた。

 日が落ちた位の時間にかなり大きな爆発音が聞こえて、セレーナが飛びだして行ったのを同じく外に様子を見に出たガボットが引き留めたという話だった。

 酷く慌ててたらしく、濡れたままの髪に裸足で服も風呂上がりの寝巻の様な格好(ワンピース)だったらしい。風呂上りだったのだろう。


 これ、あの子の前で話したらしばらく口聞いて貰えないやつだな。聞かなかったことにしよう。

 思春期の女の子だからな。気を使ってあげねば。


 そんな話をしながら村長宅に入る。


 俺はセレーナが用意してくれた服に着替える為、用意してもらった部屋に戻り着替えを済ませる。

 壊れた防具はガボットが引き取ると言ってくれたので彼に渡した。


 テーブルには夕食が用意されていたので、これ以上冷めないように取り敢えず夕食を頂く事にした。

 ガボットも申し訳なさそうに食べていた。


 ひとまず食事を終えて事の次第を話した。


 森の奥に設置された呪物であろう柱と、爆発の原因となった謎の兵器。

 魔法を使ってなんとか耐えきったという事は伝え、恐らく聖霊様の件も同じ兵器の爆発にやられたという予想と、多分俺の時よりも強い威力の爆発だったんじゃないかという推測も付け加えておいた。


 話の中で村長からこの世界にはまだ聖霊様が複数居るという話を聞いた。


 恐らく他の聖霊様も狙われてるんじゃないかという話になった。

 取り敢えず俺は世界中を巡り情報を集めて、本を探すと共に聖霊様達の住処を訪ねる事にした。


 どんな理由にしろ、あんな自爆兵器を作ってる連中はどうにかしなきゃいけないだろうし、サンシーカー以外にも聖霊様が居るなら会ってみたいというのもある。勿論、本を探すというのも忘れてはいない。忘れてないぞ。

 ルーナも母親以外の聖霊様に会ってみたいと思うだろうし。


 ローランドに行く事も話をした。

 やはり商人が馬車で巡ってくるらしく、数日の間に来ると思うと言われた。

 それまでは柱の調査と、アイツら警戒を重点的にする事を決めた。

 アイツ等の自爆対策は今日の夜にでもアンダンテに相談するとしよう。


「ご入浴の準備が出来たみたいですので、今日の所はこれ位にしましょう。オトナシ様はゆっくりお休みになってください。」

 ストラルに言われ、風呂に入る事にした。

お読み頂き、ありがとうございます。

文章力が無いので読み辛い所もあるかと思いますが、気に入って頂けたらブックマークや感想を頂けると励みになります。

ぜひよろしくお願い致します。

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