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3 就職



 吸血鬼にでもなったようだ。血の味のする野菜炒めを食べ終えて、なんとも言えない気持ちになって放心していると、さっさと寝たらどうかと言われた。

 そう言われても長い時間眠っていたせいか全く眠気はない。それに、私には聞かなければならないことがたくさんある。アドミスみたいな親切な人にまたいつ会えるかわからないのでここで聞けることはできるだけ聞いておきたかった。


「えーと、そもそもここってどこなの?私この森のこともよくわからないんだけど?」

「は?いきなりなんだ・・・って、なんで森のことを知らないんだよ。他国から来たのか?」

「まぁ、そんなとこ。」

「・・・ここは、危険な魔物が多く住んでいて危ない場所だと言われている。ここを出たらもう2度と近づくな。」

「そんなに危険なところなのに、なんでアドミスはここに住んでいるの?」

「そんなこと、どうだっていいだろう。あんた、ここにはどうやってきたんだ?この森の近くには小さな村すらない。だからと言って、この近くに来るような用事などほぼないだろうし、あんたがここにいるのが不思議だ。まさか、僕を訪ねてきたわけでもないだろう?」

「・・・依頼されて、ここに連れてこられたの。どうやって連れてこられたのかはわからないし、依頼の内容もあやふやなんだけど。」

「なんだそれ。その依頼はなんだ?というより、あんたみたいな女子供に依頼するなんて、どんな面したやつなんだ?」

 めっちゃきれいな女神さまとは言えないな。そういえば、私より先に来た守君は、目的すら伝えられないままこの世界に送られたけど大丈夫なのだろうか?


「で、依頼ってどんな?」

「・・・危ないことをしようとしている人がいるから、止めて欲しいって・・・アドミスのことではないよね?」

「見当もつかないな。僕はここで静かに余生を暮らしたいと思っているだけだ。」

「余生って、そんな年に見えないけど?」

「年は関係ない。それにしても、頼む相手を間違っているとしか思えないな。あんたは戦う力もないようだし、どうやってその危ないことをしようと考えている人物を止めるんだ?」

「それは、まぁ色々と。」

「・・・やめておいたほうがいい。わざわざ死にに行くことはないだろう。」

「でも、私が止めないと大変なことになるから・・・あ、そんなことよりこの国について教えてくれる?明日森を出たとしても、どこにいけばいいのかわからないし。」

「・・・そういえば、あんた荷物もないよな。まさか、金もないのか。」

「あー・・・100円くらいならポケットに入ってると思うけど、足りないしここで使えないよね。」

「エン?この国ではゴルドを使っている。」

「・・・働いて稼ぐしかないね。町に行けば働く場所あるかな・・・」

「町に入るのにも金が要る。無一文じゃ門前払いだぞ・・・身分証があればいいが、もっていないだろ?」

「身分証・・・あー守君と交換しちゃった・・・」

「・・・身分証を交換?それに何の意味があるのかわからないが、他人の身分証は使えないな。まぁ、他人になりきるなら使えないこともないが、身分を偽ることは重罪だから覚悟した方がいい。」

 やっぱり、こっちでもなりすましは犯罪になるみたい。まぁ、どうせ学生証がこの世界で通じるわけはないし、自分の学生証が手元にあっても何の役にも立たなかっただろう。


「森から追い出しても、野垂れ死ぬのがオチか・・・」

 頭を抱えてため息を吐くアドミス。長くてサラサラの白い髪が目に入る。銀と言った方がいいかもしれない、すごく綺麗な髪。この世界では、このような髪の色の人が普通なのだろうか?だとしたら、髪を染めたほうが・・・色を抜いたほうがいいかもしれない。


「仕方がない・・・あんたが独り立ちできるまで、ここで雇ってやる。」

「え・・・」

「なんだ、不服か?」

 アドミスの綺麗な髪を眺めていただけなのに、明日になったら出て行かなければならない状況から一変、ここに滞在できることになった。

 このチャンスを逃すような馬鹿なことはしない。


「いいえ、よろしくお願いします!ご主人様!」

「それはやめろ。」

 雇われることになったので、見た目は貴公子な感じがしたので、メイド風に返事をしたが却下された。かたっ苦しいこととか嫌そうだしね。

 でも、もう一押ししてみよう!


「アドミス様!」

「・・・普通でいい。だが、一つだけ条件がある。僕に必要以上にかまうな。」

「?」

「あんたが必要な時は仕方がないが、それ以外は僕に話しかけず、視界に入らず、僕を見るな。」

「・・・それは、なんで?あ、もしかして人見知りが激しかったり?」

「変に・・・情が移ったら困るからな。」

「・・・」

 情・・・って・・・愛情的な?なんだか恥ずかしい。そういえばこの人私の裸を見たんだよね、もう手遅れじゃない?中学生の時隣の男子が言っていたけど、どんなブスでもパンツみたら好きになるって言ってた・・・私なんて、パンツ以上だよ?いや、もしかしたらパンツに意味があるのかもしれない!


「わかった、下着見られないようにするね!」

「意味が分からない!?今の話の流れで、なぜ下着!?」

「大丈夫、私も見ないようにするから!でも、アドミスも気を付けておいて!」

「変質者ではあるまいし、誰が見せるか!」

「あ・・・」

「なんだ、どうした?頼むからこれ以上変なことは言うなよ。」

「いや、隠す下着もないなって思って。履いてないし。」

「・・・あんた、まさか俺は正しい女性の言動と振舞いまであんたに教えなければならないのか?」

「いや、別にいいよそれは。やろうと思えばできるし。」

「なら、やれ!」

 いや、疲れるんだよね~お嬢様モードは。

 とりあえず、当分の間の住処と仕事は確保したし、明日から頑張ろう!


 こうして、アドミスとの共同生活が始まった。




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