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大学受験
寒空の下,多くの学生たちが大学の門をくぐっていく.その姿はまるで,戦地へ赴く兵士たちを思わせる.
教室の中,試験監督の号令とともに,学生たちは紙を裏返し,その上にペンを置き,走らせる.試験という名の戦争の始まりの瞬間である.学生たちの武器は,剣でも銃でもなく,ペンである.彼らが紙の上をペンでたたき,走らせる音は,戦場でいう銃声,剣同士がぶつかる音,人が斬られ,撃たれる音のようにも聞こえる.ただ,本物の戦争と異なるのは,戦場にいる人間は誰も命を落とさないということ,一滴の血も流されないということ,戦場に入る者と戦場から出る者の数が等しいということである.
試験が終わった後に教室に残ったのは,血ではなく,ごく少量の消しゴムのカス,たったそれだけ.