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第1章「巨人殺し-Giant killing-」 結 番狂わせ

 痛みに耐えながら、その上、寝ぼけ(まなこ)のヨーを支えながらアデルは何とか下山。


 ヨー自身に眠る化身を使うと反動で、化身から解放後もしばらくは意識がもうろうとしている。


 そのため、疲れからその場での野営も考えたが、いろいろとあった山の中では無防備で寝ることは危険が多すぎる。まだ危険が少ない、痛みに耐えての下山を実行した。


 そして、麓の村に付くと前日から取っていた宿に直行して、アデルは残っていた回復薬を飲み、豪快に寝た。


 ヨーは別部屋に寝かせて。


 そして、巨大猿の後始末は翌朝に回すことにした。


 そもそも、氷漬けとなった巨大猿に対してアデルは〈愚鈍な氷結王〉にこう命じた。「跡形もなく、壊せ」と。それでも〈愚鈍な氷結王〉は聞き直したため、「『壊せ』だ。やるなら、派手にだ」と、まだ分かりやすく言った。


 翌朝、同じ場所に立ち、その光景は改めて見ても、ひどい有様だった。


 巨大猿の体はバラバラとなっており、一部はまだ氷が付いて残っていた。ただ、バラバラとなったとはいえ、その部分、部分からその死体が巨大猿とは判別することができる。


 アデルは改めこの光景を見て、誰にも言えないと思った。


 たった二人で、この有様となるなど誰も信じないだろうから。たとえ、うまくいってドラ子で上半身と下半身を切り分けていたとしても、まだ綺麗なだけで信じられないことは同じだ。


 魔物退治を主とした仕事ながら、アデルはその実績をまともに語ったことはない。何しろ、少年であるアデルが魔獣の大熊や妖鳥ハーピー、(よこしま)な馬バイコーンなどを退治したといっても信じられるものではない。


 そもそも、それらの魔獣は脅威度も高いが、なかなか、人前に見せない存在でもある。


 それを普通の人に言ったところで笑われるだけの夢想したお話に聞かれるだけ。いずれは『竜殺し』と意気込み、実現も可能だとしても。


 それでも、どうであれ今回、『巨人殺し』が達成できた。


 誰が何と言おうとも、それは事実である。


 * * *


 さて、この話の結末を述べよう。


 アデルは巨大猿の死体を見終えた後、何も言わず村を去った。


 それでも討伐の証拠として巨大猿の小指、牙など持ちやすいモノを回収して戦利品とした。ただ、これらは素材として使えるものでもない、売れるものでもない。


 その後、村人達は噂していた巨人、いや巨大猿の死体を確認して、安心を得たのだったが、むしろ、この有様に更に強大な存在が感じ取って、新たな恐怖がしばらく包まれるのだったが。


 そして、ヨーはいつの間にかアデルとは別に村を去っていた。ただ、別れを惜しむことない。嫌でもすぐに出会うのだから。


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