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目の前に出現した分厚い参考書。さっそくそれを開いてみる。
最初のページには注意書きのようなものがあった。
この参考書を手に入れた人たちには、ボーナスとして最初から1つスキルを追加で得ることが出来る。ただし、この参考書の情報を他者に知らせようとした場合、その瞬間にこのボーナスは消える。
制限時間は3日。3日後には世界は魔物で溢れる。ゲームのようなその世界で、有利に生きていきたいならば参考書を理解しろ。
簡単にいうとそういう内容だった。
一般的な魔物のリスト、アイテム、スキル、魔法、各種ステータス、ジョブ、レベルについて。まさにゲームの攻略本のように、いや、それ以上に細かく複雑な説明がそこには記載されていた。
3日、、、。うん、余裕ね。
私はさっそく、この参考書を読み進めることにした。重要な部分はノートに書く。ノートに書いてはならないというルールは無かったので、問題は無いはずだ。
普通はもっと驚き、戸惑い、何をしていいのか分からずに現実逃避。そんな状態に陥るのだろうが、私がそうならなかった理由は2つある。
1つ、まさにこういうSF、ファンタジーのような展開を望んでいたということ。
1つ、魔法のような現象が実際に起こり、それを体験したからにはこの事象は真実であると考えるべきであり、新しくなった世界で生きていくためにすべきことは、参考書を理解することだからである。
1つは私の感情面、もう1つは論理的に考えた当然の結論である。
その意気込みのまま、私はシャワーも浴びず、睡眠時間も削り、三日間読み続けた。女の子、、、私はこれでいいのだろうか、いや、いい。
そして、お爺さんが言っていた三日間が経過すると、その瞬間に参考書は消えてなくなってしまった。
ある程度予想はしていたが、また驚かされた。
そして突然、大地を震わせるような大きな鐘の音が響き渡った。思わず耳を塞いだ。だが同時に私は理解していた。ついに、始まったのだと。
鐘が鳴り終わると、私はすぐに行動を開始した。
「ステータスオープン」
そう言うと、目の前に大きな画面が現れた。参考書に書いてあった通りの表示がそこにはあった。
●種族 人間
●個体名 アヤ
●ジョブ 未選択
●レベル 1
●ステータス
HP 10
攻撃10
防御10
スピード10
MP10
SP10
JP10
●スキル
なし
●魔法
なし
今の私のステータスはこんな感じ。多分、世界中全員が一律に10なのだろう。どんなムキムキな男も、か弱そうな女も全員平等だと思うと少し面白い。
いや、違うか。もともとの運動神経などは普通に生かされ、ステータスの数字はあくまで基礎値なのだろう。
ただ、この世界になったからには、地道にジムに通って筋肉をつけるよりも、魔物を倒してレベルアップした方が早いというだけのこと。分かりやすくていい。
さてと、まずはジョブ選択をしよう。
まあ、すでに三日間の間にどれを選ぶかは決めてあったのだが。
私は、普通にゲームが好きでよくやるのだが、キャラを育てるときには絶対に、極フリするタイプの人間だ。バランスよく育ててしまったら、なんの主張もないじゃないか、というのが理由だ。
なんらかのスペシャリスト。
それこそが私がいつも求めているものである。
まあとにかく、自分の性格が多分に影響した選択になるだろう。