プロローグ
「明日の昼12時、テレビを見よ。」
朝起きても、そのセリフだけはくっきりと頭に残っていた。白髪と長い髭を生やしたお爺さんが、唐突に目の前に現れてそう言ったのだ。まあ、夢の中の話なのだが。
私は、バリバリの理系であり、いわゆるリケジョという存在である。しかしながら、論理的に説明のつかない、‘勘’というのも信じて生きてきた。女の勘は鋭いとよく言うが、その中でも私の勘は、より優れていると自負している。
その私の勘なのだが、今回の夢の出来事は絶対に無視しない方がいいといっている。
だからこうして、大学をサボってテレビの前にスタンバイしている私がいるのだ。
12時きっかり、適当に見ていた番組が突如として真っ暗になって消え、夢で見たあのお爺さんが出てきた。
お爺さん「ちゃんとテレビを見てくれている諸君、君たちは、お告げを信じなかった人間たちよりも早くスタートラインに立つこととなった。おめでとうと言っておこう。
さて、まずはある[呪文]を唱えてほしい。
見ている人によって、私が今から言う[呪文]の聞こえ方が異なる。諸君は自分が聞こえたとおりに発音すれば良い。ではいくぞ。」
「✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎」
よくわからない発音だったが、とにかく今はあのお爺さんの言う通りに、[呪文]とやらを唱えてみた。
すると、いきなり目の前に分厚い参考書のようなものが出現した。これにはかなり驚いた。どこからどうみても、こんなの魔法以外に考えられない。これごと含めて夢なのかとも一瞬思ったが、どうやらそんなことはないらしい。
しかし、驚くのはもうやめだ。現実がちょっとSFになったくらいで何だというのか。次にやることを考える、それが大切だ。
だが、こんな状況なのに私の顔は気付けば笑っていた。私はずっと求めていたのかもしれない。退屈な現実を一気に塗り替えてくれる何かを。
友達と遊んでも、彼氏と遊んでも、全く満たされることのないモヤモヤ感。生まれる時代を間違えたのではないかと常に感じていた。
しかしそれが今日終わった。私はもう確信していた。この世界はこれから、一気に生まれ変わると。
目の前に出現した分厚い参考書。さっそくそれを開いてみる。