数字
今日の宿題は数学だ。アヤは解けない問題に夢中なっている。解けないと宿題は終わらない。
僕の知ってる一番大きな数は3だ。3より多い数は「たくさん」だ。僕は自分にそう言い聞かせた。
「アヤ。4って何?」
アヤが使っている線をまっすぐ引くための道具には目盛りが付いていて小さな数字が書いてある。
「4は4だよ。3の次の数が4だよ。」
アヤは目盛りを1から順番になぞりながら4の所で指先を止めた。
「3の次は「たくさん」だよ。「たくさん」の事が4なんだね。」
明日の次は明後日で明後日の次は明明後日。僕はその次は知らない。
「違うよ。3が1増えたら4。3が2増えたら5。3が3増えたら6。」
アヤはノートに数字と記号を書きながら僕に説明してくれた。二本線の記号で繋がれた式と数字は同じ意味だ。
「4も5も6も「たくさん」だね。でも4より5の方が「たくさん」なんだね。」
全部同じだと言い聞かせたはずの「たくさん」が姿を変えた。
「3が3増えてさらに1増えたら7だよ。」
「アヤ。ノート見て。僕の認識出来る数をxだと考えて、僕の認識出来ない数をyだと思えばこの問題解けるよ。」
「氷室君は4と5の差を知らないのに、何で数学の問題が解けるの?」
答えは簡単。僕が嘘付きだからだ。でも僕はアヤに答は教えてあげない。アヤに嫌われるのは嫌だ。
アヤが夢中になるのは僕だけでいい。




