ウィルス
「氷室君はウサギの狩りしないの?」
アヤの手元の本の中で貴族の主人公が夢中になっているウサギを狩るゲームに興味津々な事がばれた。
「アヤは野生のウサギ見たことある?」
僕たちが外を歩いていて物陰からウサギが飛び出してきたことなんてない。
「ウサギがいないから狩りをしないの?」
「ちょっと違う。昔ね遊びの為にウサギを放した人がいたんだ。ウサギは繁殖し増えた、遊びにしては面白くないくらいに獲物が増えたんだ。そこであるウィルスをばら撒いたんだ。」
自分たちが楽しむために増やし、不必要になったから処分する。娯楽ってそういう物だと僕は思う。
「ひどいね。だからウサギがいないんだ。」
「ちょっと違う。致死率99%のウィルスは99%以上のウサギを死に至らせた。しかし1%以下のウサギは死に至らなかった。そのウサギはウィルスの宿主となり共存した。今いるウサギはそのウサギの子孫だよ。」
「わかった。そのウサギにもウィルスにも感情があったんだね。きっと恋したんだ。惹かれあったからお互いに殺されないように殺さないように隠れて一緒にいるんだね。」
アヤは目をキラキラさせて笑いかけてくれた。僕はウィルスと共存しているウサギを口に入れたら死に至る。狩りをしない理由は死にたくないから。でも僕は、嘘つきだ。
「だから僕はウサギを例え見つけても狩りなんかしないよ。第三者が引き裂くなんて野暮でしょ。」
ウサギとウィルスはアヤと僕に似ている。ウィルスの効かないウサギは存在している。死に至らせる事の出来ないウィルスは存在している。それは進化でも変異でもない、アヤの言う通り恋だと素敵だ。僕はウサギに恋してないから口に銜えただけで死に至る。僕はアヤを口に銜えたりはしない。




