トリアージ
「アヤはこのシステムについてどう思う?」
僕はアヤの見ているニュース番組で取り上げられたシステムが気になった。
不特定多数の命が人災もしくは天災で脅かされた時、救える命のためにその可能性が低い高いを客観的に判断して色の付いたタグで分ける。
「私には迅速に判断できないと思う。」
「否定的なのかな?」
「否定はしないけれど素晴らしいシステムだとも思わない。」
「なぜそう思うの?」
「タグを付ける人の精神的ストレス」
僕はキェルケゴールを思いだした。死に至る病は絶望。そのシステムは不本意に不特定多数の者に絶望の色を見せる。もしかすると大切な人の目の前で絶望の色のタグを腕に巻き付けられる者もいるかもしれない。絶望が降り注いだ不特定多数の人々はどうするだろうか。降り注いだ絶望は、きっと誰かを責め立てると思う。きっとその矛先はタグを付けた人間だ。
「アヤは優しいね。」
そのシステムの有用性は理解できるが僕とアヤには必要ない。僕に絶望が降り注ぐ前にアヤに絶望が降り注ぐ前に、僕がアヤを食べてしまおう。真っ黒な僕がアヤの首に牙を立てるときっと黒色のタグに見えると思う。