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仮想の旅路  作者: paco
第一章 ≪旅の始まり≫
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第六話 『祠』

―ドシの言っていた何かが見つからない。

「見つからないなー...」


「―流石にそろそろあると思うのだが」


心なしかゼロさんの返答も少し遅かったような気がする。そもそも、何を探しているかもわからない状況なのだ。気付かず通り過ぎている可能性もある。


「もう少し探した後、少し戻ってみてはどうだろうか」


足を止めず、ゼロさんが言う。

まぁ、それが妥当なところだろう。こんなに探してもないのだし、そもそも探しているものの大きさもわからないのだから見逃している可能性も...


「こんなに来てたんだね...探したよ」


そこまで考えた時、後ろから声がかかった。足を止め、まさか...と思いながら振り向くと、案の定リンがいた。先程と同じように長袖の服を着、つばが広めの帽子をかぶっているが、帽子が少し後ろに傾いている。


「ふむ...追いかけてきたと考えて相違ないか?」


「相違ないわよ」


髪が乱れているので、おそらくは走ってきたのだろう。それなのに息が少しも乱れていないということは、相当な体力があるのかもしれない。先ほどの木刀での打ち合いといい、体力はあるのだろう。


「それにしても...ドシになんて言われて来たの?」


知らない...のだろうか。不思議に思ったが、返答する。


「お使いを頼まれてさ、何かあるらしくってな」


「え、そうだったの。何かな」


リンも知らないのだろうか。そう思い、尋ねてみる。


「知らないわ。っていうか、何かって何?」


俺とゼロさんが返答に詰まっていると、リンが腰に手を当て、あきれたように言う。


「もしかして...それも知らずに来たの?」


「―まぁ、うん」


.........沈黙


「仕方ないなぁ...私も探すの手伝うからね」


...沈も...え?


「え、いいのか?」


「良いよ。見つかるまで私も帰らないつもりだったしね」


...聞き違いだろうか。


「あー、今なんて?」


「だから、手伝うって言ったの!」


聞き違いではなかったようだ。つまり、家の昼食を半食い逃げのように食べていった素性の分からない怪我人とその連れに手伝いを申し出たという事になる。

さておき、手伝ってくれるというのならありがたく手伝ってもらうとしよう。


「て、手伝ってくれるというのならありがたく手伝ってもらえますでしょうか...?」


「だからそう言ってるでしょ...」


肩を下とし、大げさにため息をつきながらあきれたようにリンが言う。


「手伝うわよ。ここまで来たんだから、手伝わずに帰るってのも...なんていうか、あのー...」


いい言葉が見つからないようだ。リンが少し速足で歩きだす。

俺も少し急いで足を速め、リンを追いかけながら言った。


「骨折り損?」


「―ほ、骨なんて折らないよ!?」


そういって自分の体を抱きしめる。


ここが仮想世界だという事を忘れていた。ことわざが伝わらないようだ。


「あー、いや、何でもない。ここまで走ってきた意味がないって言いたいんだろ?」


「走ってはないけどね」


...走ってはいないようだ。


「あー、君達。少し良いだろうか」


俺とリンが極めて真面目に話し合っていた時、ゼロさんから声がかかった。


「なんですか?」


「何よ?」


2人共ほぼ同時に足を止め、ゼロさんの方を向く。ゼロさんは一つ頷き、前を指し示した。

見ると、石でできた祠のようなものがある。


「あ、あれかな」


リンが言った。ここまで何もなかったので、恐らくはそうだろう。最初にこの世界に来た時にいた広場も、気づかないうちに通り過ぎてしまったらしい。

そこで一つ思いついた。リンは確か足が速かったはずだ。リンが立ち止まっている今がチャンスなのでは...


「んじゃ先行ってるねー」


しかし、そう言ってリンは走り...走り...走り去ってしまった...


「はぁああああああああ!?」


...ここで思わず叫んでしまったのは悪くない...はずだ。これが理由で湖が氾濫して邪悪な怪物が目覚め、世界が滅びたとしても...俺が悪いな。


そんなアホな想像をしてるいる間に、リンは祠についたようだ。というか、ゼロさんまでもが残りの道のりの半分を過ぎている。


「う...ぐぁ」


2兎を追う者は1兎も得ず...とはよく言ったものだが、俺は1兎を追って1兎を得られなかった...


「はぁ」


そんな益体もないことを考えながら、俺もトボトボと歩き出し、二人の後を追う。


「あれ?これって...」


「ふむ、これは...」


前のほうから二人の声が聞こえた。何か見つけたのだろうか。

俺もアホな思考振り払って、走って後を追う。


俺がつくと、二人は祠の中を覗き込んでいた。近くで見ると、祠は予想以上に大きい。1メートル...50cm程あるだろうか。


「おーい、どうしましたかー?」


また、敬語が混じった不思議な日本語になってしまった。


「祠の中に...大量の何かがある。恐らく、その何かについている色の種類は多い。暗くてよく見えないのだが」


「よっ、よっ」


ゼロさんは祠の中を見ているだけだが、リンは中にある《何か》を取り出そうとしているようだ。


「取れた!」


その時、《何か》にリンの手が届いたようだ。


「これって...あれ、私の名前が書いてある」


取り出したのは、紺色の...リンの髪の色に似た透明感のある小さな墓のような形をした物だった。


「何だろう...何かの術式だと思うんだけど」


術式...術式?もしや、「Water!」や、「Stop!」といった。あの英語魔法?に関係があるのだろうか。

俺が適当な四字熟語...The 英語魔法を考えている間に、ゼロさんがリンに《術式》について質問をしていた。


「術式っていうのはね、まぁ、こういう物よ。まぁ...思念法が形になった物...だと考えてくれればいいかな」


思念法...言葉通り思念で何かを操る...のだろうか。


「あっ!」


その時、再び祠の中を探っていたリンが声を上げた。


「どうした...!?」


そういった直後、背後から強烈な光が...そして...意識が遠くなっていった

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