ドリームキャッスルの拷問部屋⑨
ーバチバチバチッ!!!!
青と黒の光線がぶつかり合う
お互いの力は拮抗しているようだったが徐々にクズさんの方が押している。
「お前の生前の記憶を俺達全員でしっかり見させてもらった」
クズさんの言葉に怨霊と化した美姫は一瞬目を見開き反応した。
クズさんの光線が徐々に美姫に迫りつつある。
「あんなことがあったんじゃあ成仏できないわけだな・・・
同情するわ・・・
けどよ、俺にはひとつ理解できないことがあるんだよな~・・・
全ての人間に自分の怒りをぶつけたい。
お前のオーラの質に触れてそういった類いの怨念であることは理解してたんだ・・・
してたんだけどよ・・・
なんで朱里と梨花、それに梨花の母ちゃんをあんたは生かしてたんだ?」
美姫は怒りの表情を浮かべたがクズさんはビクともしない。
美姫の光線が少しクズさん側に押し返してきた。
「お前の力ならあの時梨花の母ちゃんがいたとしてもその場の全員を容赦なく殺せたはずだ
ましてや逃がすなんてことをお前の怨念が許すはずがないよな?
きっとお前も疑問に思ったはずだな?
俺はさっきのお前の記憶を見るまでそのことをずっと考えてたんだが答えが見つからなかった。
けど記憶を見てやっと答えが見つかった!!」
光線がぐぐっと美姫の方へ押される。
美姫は体全体で踏ん張り耐える。
「愛情も友情も人間は極限状態に陥れば簡単に裏切る
それが人間だとお前は死の際に理解してそれがお前の力の根元にあった。
実際お前に遭遇した人間達はお前が思うような人間だったんだろ?
朱里と梨花がここに来るまでは!!」
美姫は一瞬踏ん張っていた体が硬直した。
光線はそのせいで更に美姫に迫る。
慌ててまた踏ん張る。
「あいつらは極限状態に陥っても裏切らなかった
梨花は朱里を逃がさそうと死ぬ覚悟を決めて自分の身を犠牲にしようとした!
朱里は逃げれる状態だったのに逃げようとせず、最後まで梨花を見捨てなかった!
梨花の母ちゃんは決して勝てないはずのお前に立ち向かって二人を逃がさそうとした!
愛情!!友情!!お前が嘘だと思った情の力で朱里と梨花と母ちゃんはお前から逃げずに立ち向かったんだ!!
そんな奴等をお前はどうしても殺せなかった・・・
もう気づいてるはずだ!!!
本当はお前だって人間の情を信じたかったんだろ!?
夫に対してお前が抱いていた気持ちは嘘なんかじゃないって!!
帰りを待っている時間も、死を覚悟した時だってお前は夫を愛していたんだ!!
お前はただ愛情と友情がこの世にあるってことを証明したかっただけなんだろ!!!!」
クズさんの光線はあと数メートルで美姫にぶつけることができる。
「ずっと苦しかったよな!?
辛かったよな!?
助けて欲しかったよな!?
遅くなってごめん!
俺がお前を縛り付けているガムのようなねちっこい怨念を綺麗さっぱり剥がしてやるからな!!」
ーボボウッ!!
ーアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!
美姫の体が青い炎に包まれていく。
彼女の男のような低く恐ろしかった悲鳴は段々女性の悲鳴に変わった。
数分間美姫は焼かれ続けていた。
やがて彼女の悲鳴がピタリと止んだ。
炎の中から記憶の中で見た美姫の美しい本当の顔が見えた。
美姫は涙を流しながら微笑んでいた。
私を助けてくれてありがとう・・・
彼女はそう言い残して炎が燃え尽きると同時に消えていた。
それと同時に私達はプリンセスの部屋にいつの間にか立っていた。
「おつかれ~!!!
どうやら終わったようね!」
真理亜さんが労いの言葉をかけてくれた。
「めっちゃ疲れたな~・・・
幽体離脱モード解除っと!」
クズさんはそう言っと自分の肉体に戻り、うちわで顔をあおいでいた。
「今回はそんなに苦戦しなかったみたいだね!」
田中さんが不思議そうな顔をしてクズさんに声をかけた。
「あ~・・・まぁ
俺一人で戦ってなかったからな!
お前らと・・・
それから朱里と梨花と梨花の母ちゃんの6人が相手だったからな!
最初っから勝負になってなかったさ!」
それを聞いて田中さんはますます混乱した表情をしていた。
「そうだそうだ!!
梨花!!
いいか!!
お前の母ちゃんはこっちに長く居すぎた!!
早くあの世に帰さなきゃ母ちゃんの魂は消滅しちまうんだ!」
梨花はお母さんの方を向いた。
お母さんは苦しそうな表情をしていたが、梨花の視線に気づいて無理矢理作り笑いを浮かべた。
梨花はそれを見て涙を流した。
「クズさん・・・
お母さんをあの世に送ってあげてください!!」
梨花が頭を下げた。
「梨花!!
一言だけ母ちゃんに言葉をかけてやれ!!
さよならでもいい!!
もうお前の母ちゃんがこの世に来ることは2度とない
だから一言だけでもいいから言葉をかけてやれ!!」
クズさんにそう言われて梨花は頷き、お母さんと向き合った。
「お母さん・・・
たくさんお母さんに言いたいことあるんだけど、時間が無いから一言だけ言わせて・・・
お母さん・・・
私のお母さんになってくれてありがとう!!」
お母さんは最期の力を振り絞り梨花を力いっぱい抱き締めてこう言った。
「私の娘になってくれてありがとう!!」