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剥がし屋  作者: パパス
1/10

ドリームキャッスルの拷問部屋

新潟県T市には今から10年前、裏野ドリームランドという遊園地があった。

新潟県はもともと遊園地の数が少なく、裏野ドリームランドが出来たばかりの頃は多くの人で溢れていた。

私も小さい頃によく家族や友達と一緒に遊びに行ったりしていた。

遊園地が出来て一ヶ月が経ったあたりからあの遊園地で事故が多発した。

どんな事故だったのかはよく覚えていない。

結局その事故のせいなのか、裏野ドリームランドは開園してからわずか1年たらずで閉園となってしまった。



 新潟県T高校に通う滝沢朱里(たきざわあかり)は明日からの夏休みを心待にしていた。


「ねぇ!!

朱里!!

裏野ドリームランドの噂知ってる!?」


放課後の教室で友達の美月梨花(みづきりか)が目を輝かせながらもう何百回も聞いたであろう廃遊園地の噂話をまたしつこく私に聞かせに来た。


「知ってます~!

も~しつこいよ~!!」


「え~!!!!

ちょっと~!!

ちゃんと聞いてよ~!!」


「いやっ!!!

どうせ明日から夏休みになるしドリームランドに肝試しに行こう!!

とか言うんでしょ!!」


「・・・すっご~い!!!

なんでわかったの~!!!」


梨花は自分が言わんとしていることを朱里が先に言ったことで驚きと感心が入り交じった顔をしてますます梨花の肝試し熱を上げてしまった。


「あのさ!!

ドリームランドは廃園になっても跡地を今でも更地にしないでそのまま残してるでしょ?

あれには理由があるの!!」


「はぁ・・・

どんな理由なんでしょうかね~・・・?」


朱里はうんざりした顔をしながら3年C組の教室から出ると、梨花もぴったりと朱里と並んだ。


「あの遊園地は・・・

出るんだよ・・・」


「幽霊?」


「・・・うん

しかもね、有名な霊媒仕や霊能力者もお手上げな強力な霊がいるって噂のアトラクションがひとつあるの・・・

そのアトラクションが壊せなくて今でもドリームランドはそのままになってるの」


梨花の声のトーンが恐怖を煽る。

私は背筋がゾッとした。


「ドリームキャッスル・・・

ドリームランドの人気アトラクションの1つ。

普段は華やかなショーや写真撮影が楽しめるこのドリームキャッスルには恐ろしい噂があるの・・・

他のアトラクションにも恐ろしい噂話があるけど、私はこの噂話が一番恐ろしい・・・」


「ちょっと待って!!

ドリームキャッスルの噂話なんか私聞いたことないよ!!」


「とっておきは最後に出すものよ!!」


梨花は渾身のどや顔をしながら階段を降りて、正面玄関で靴をはき外に出た。

今日は猛暑だ、確実に30℃はあるはずだ。


「暑~い・・・」


私はあまりの暑さに無駄だとわかっていても手でパタパタと扇いでしまう。


「じゃあその暑さをドリームランドの怖~い噂話で吹き飛ばしてあげましょ~う!」


「え~!!」


梨花が話したドリームキャッスルの噂話はとても恐ろしい話で、その話はあまりにも現実とはかけ離れすぎていて私には誰かが作った嘘に決まってると思った。

その嘘話はこうである。


ドリームキャッスルの拷問部屋

ドリームキャッスルの1階には全部で4つの可愛らしい部屋がある。

その部屋のどこかに地下へと続く階段があり、そこを降りていくと恐ろしい拷問部屋があるという。

その拷問部屋を探すためにカップルのAとB子がドリームキャッスルに夜中忍び込み探索を始めた。

1つ1つ部屋を探してみたが、そんな場所はどこにもなかった。

二人は帰ろうと出口に向かった。


ーカツッカツッカツッ


どこかの部屋から階段を降りるような音がする。

二人はビクッとして顔を見合わせた。

自分達以外に誰かいるのか?

二人は音の出どころを探した。

どうやらプリンセスの部屋から聞こえてくる。

プリンセスの部屋は最後に探索した部屋だった。

さっきまで誰もいなかったのに何故?

二人はプリンセスの部屋に再び戻った。

かわいらしいピンクを基調にした部屋で、大きいベッドとかわいいテーブルや大きな鏡つきの大きな化粧台があり、その化粧台がさっきまでは確かにベッドの横にあったはずなのに化粧台は部屋の中央部に移動していた。 

そして、化粧台があった場所から地下へと続くであろう階段を発見した。

しかし2人は疑問を持っていた。

1つは、化粧台をどうやって動かしたのか?

あの化粧台は力に自信のあるAが動かそうとしてもびくともしなかった。

あの台を動かすには最低でも男手3人はいる。

だが、ここには3人以上人がいるとは考えにくい。

しかもあの大きくて重い化粧台をこの場所を後にしてからほんの数分で部屋の中央部に音もたてずに退かすことは可能なのか?

もう1つは、階段を降りる音は1人分の足音しか聞こえなかったことだ。

この日の気温は夜中だったが25℃を超えていて暑いくらいだったのに二人の顔は青ざめて、腕には鳥肌がたっていた。

しかし二人は目の前にある噂の地下室をついに発見したのだ。

恐らくこれを逃せばもう2度と地下室には行けない気がした。

Aは意を決してB子の手を引き地下室へと続く階段を降りた。


ーカツッカツッカツッ


地下へと続く階段を降りながら二人はまるでクーラーがガンガンついてる部屋に来たかのような気温の変化を感じとった。

異様に肌寒いのだ。

その寒さは気温の変化か、はたまた恐怖か。

今の精神状態ではわからない。

二人は階段を降りて一本道の通路をまっすぐ進んで行く。

懐中電灯を照らしていても奥がよく見えなかった。


ーバンッ!!


急に乱暴に扉を閉めるような音が地下に響いた。

二人は恐怖のあまり叫び声をあげてその場に尻餅をついてしまった。

B子は泣きながらここから出たいとAに懇願した。

Aは立ち上がって懐中電灯を手に持ち、自分一人で先に行くからB子はここで待っているように指示をした。

B子は泣きながらAを引き止めたが男は無理矢理作ったような笑顔をB子に向けて大丈夫!と言って再び奥へと進んでいった。

それからどれくらい時間が経ったか

実際には数分の短い時間だったが、B子には数時間の果しなく長い

時間に感じた。


ーキイ~ッ


奥から扉をゆっくり開ける音が聞こえてきて、それからゆっくりと扉が閉まる音が聞こえた。

Aが奥にあるであろう部屋に入ったようだ。

Aが無事に帰って来ますように・・・

B子は恐怖でブルブルと震える手で必死に彼の無事を祈った。

絶対に帰ってくる! 絶対に帰ってくる!

絶対に帰ってく・・・


Aは懐中電灯の灯りを頼りにどんどん先へと進んでいく。

恐怖は感じていた。

だがAは恐怖心よりも好奇心の方が勝った。

やがてAは扉を発見した。

一瞬躊躇うがAは覚悟を決めた。


ーキイ~ッ


ゆっくりと扉を開けて部屋に入った。

扉を静かに閉めて辺りを懐中電灯で照らすと、部屋の中央部に背もたれがついたイスらしきものを発見した。

それは映画や漫画でみたような拷問する時に座らせるあのイスに酷似していた。

Aは更に辺りを見回す。

恐怖感がAを支配した。


ありえない・・・ ありえない・・・ ありえない・・・!!


部屋を懐中電灯で照らして隅々まで確認した。

そしてAは気づいた。

この部屋には扉が1つしかなかった。

Aが入ってきた扉1つしか・・・

他に道は無いはずだ・・・

それなら・・・

それならあの足音は・・・!?

Aがそれを疑問に思った瞬間部屋の中央から自分を呼ぶ声がした。

しかもよく知っている声だ。

声がした方にゆっくりと振り向く。


・・・・・・・!?


なんで・・・!?


懐中電灯で照らすとさっき通路に待たせていたはずのB子が拷問イスに座っていた。

B子はブルブル震えて恐怖で失禁していた。


いったい・・・いつから・・・!?


Aはこの異常な光景に思考を張り巡らせるがまったく理解できない。


ーガラガラガラガラ


音がする方に振り向くと、髪の長い白い服をきた女が何かを押してゆっくり部屋の中央部に向かっている。

女の顔は絶対に見ないようにした。

女がその場に固まって動けないでいるAの脇をゆっくり

通りすぎようとした時小声で、しかも早口で何かをボソボソと呟いた。

Aには女の声が確かに聞こえた。

それも鮮明に・・・


次はお前だ・・・!!


Aは大きな悲鳴をあげて逃げるように必死に走って部屋を出た。

B子を置いて・・・

通路を走り抜けている時にB子の泣きながらAに助けを求める悲痛な叫びと、女の狂気に満ちたおぞましい笑い声が聞こえてくる。


ごめん・・・! ごめん・・・!


Aは泣きながら置き去りにした女に走りながら何度も謝った。

が、Aの脳は女が呟いたあの一言でいっぱいだった。

Aは地上へ続く階段を飛ぶように駆けあがってドリームキャッスルから出て急いで帰宅した。

帰宅したAは置き去りにしたB子のことを思って泣いた。

そしてひたすら謝り続けた。

あの場所にはもう・・・行けない


B子は行方不明になった。

数日後、Aは有名なネットの掲示板にあの日ドリームキャッスルの拷問部屋で起きた恐怖を書き綴った。

その後、Aも行方不明になった。

Aが最後に残した書きこみはたった一言だった。



次は俺だ・・・


余談ではあるがAとB子の親族も全員行方不明になっている。



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