確信の日
このクラスで一番私を嫌っており、尚且つスクールカースト上位の右島まりなが、ぐん、という音をたてて窓に叩きつけられた。
窓はその力に抵抗することなく、耳に響く高い音をたてながら割れた。
右島まりなはそのまま重力に逆らうことなく、窓の外へ
消えていった。
数秒後、物と地面がぶつかる鈍い音が聞こえ、2階から落ちただけだったので、軽傷ですんだであろう右島まりなの焦ったような声も聞こえてきた。
右島まりなの取り巻きの二人は、何が起きているのかわからないとでも言いたそうな間抜けずらをさらしながら、割れた窓ガラスをみつめていた。
私一人だけが、今この場で何が起きているのかを理解することが出来た。
私の、私の力だ。右島まりなが落ちたのは私の力のせいだ。
急に、凄まじい脱力感が私の体を襲った。
シュヴァルツたちから力を受け取った時のように、私の記憶はそこで途絶えた。
「ほんとに、勝手に落ちたんだって!まりなの意思じゃないし!誰かに、殴られたような感覚でさ!!!」
うわずった、甲高い声で目が覚めた。
私は学校の保健室のベッドに横たわっていた。
カーテンの向こうでは、右島まりなが手当てをしてもらいながら、2階から落ちたことについての弁解をしているようだった。
「そうだよ、先生。まりなは嘘ついてないよ!私ら見てたし、まりなが後ろに引っ張られていく様子!」
目が覚めた時から、手の震えが止まらない。
私だ。私がやったんだ。
そんな私の気持ちとは裏腹に、彼女達の話はエスカレートしていく。
「先生、これもしかしたら幽霊の仕業かもよ。」
「まじか、まりな除霊しなきゃじゃん、超コワ!」
…………バレていない。
…………いや、バレるはずがない。
そうだ、これは超能力なんだ。
誰が私がやったってわかるんだ。
わかるはずがない。
ありえない。絶対にバレない。
私はあの時、よしんば右島まりなを殺していたとしても、罪には問われないんじゃないか。
そうか、そうか、そうじゃないか、
超能力で人を殺したとしても、気づかれないんなら殺してないと一緒だ、!!
現代では、まだ超能力なんてものは信じられていない。
そうか、そうか、
私は、超能力で何をしても、許されるんだ。
カーテンを開けると、先生たちに質問責めにされた。
私が気を失ったあと、教室中の椅子や机が四方八方に飛んでいって、大変だったそうだ。
そのおかげで、私のぐしゃぐしゃになった机にたいしても、特になにも聞かれなかった。
私も、先ほど彼女達が言っていたような、とんちんかんな証言をしていると、暫くして私の母が向かえにやって来た。
家に帰る途中の車の中で、私はひしひしと自分の力の偉大さを感じていた。