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転生者の憂鬱  作者: 八緒あいら(nns)
第二章 少女編
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第五十話「救出」

~前回までのあらすじ~

アリシアの足取りを追ってインキュバスの廃墟街へ移動するエミリアとルガト。

そこで待ち受けていたのは、今は禁止されているはずの奴隷売買を行う闇商人たちだった。

手際良くアリシアの捕らわれている場所の情報を得たエミリアは、別行動中のルガトと合流すべく、屋敷の中へ潜入する。

 屋敷の中はごくスタンダードな『貴族の屋敷』だった。

 大きなホールが構えられ、真正面には横に五人並んでもまだ余裕があるほど大きな階段があり、階段を上がった先にはいくつもの部屋へ続く扉が見えた。

 その反面、一階は四つしか扉がない。


 特に奇をてらっていなければ、上が寝室等に使われる個室、下が食堂や応接室といった部屋割りになっていると思われる。


「ルガト様は……あっちか」


 中に入ったことで、よりヒトの気配を感じることができたので迷うことはなかった。

 いつもの癖で無意識に気配を消しながら、部屋の様子を伺おうと歩み寄っていくと。


「ふ――ふざけやがって!こんなこと聞いてねえぞ!」


 聞いたことのない叫び声と共に、見たことのない男が部屋から飛び出してきた。


 慌てふためいているにも関わらず律儀に扉を閉めたのは、部屋の中に居るルガト様と自分を隔てるためだろう。

 ヒトは恐ろしい存在に出会ったとき、どんなに薄いものであろうと『壁』を作りたがる。

 それで防げるとは微塵も思っていなくとも、そうしてしまうのだ。

 本能とでも言うべきか。


 男は首を後ろに回したまま、一目散に外へ逃げ出そうとしている。


 ……前方不注意は良くないな。

 走る時は前をしっかり見ろと教えられていないのだろうか?


「ほい」


 彼の動線上に足を差し出すと、面白いほど簡単に引っかかって転んだ。

 痛みと混乱で床を転がる男につかつかと歩み寄り、首のやや下あたりに手刀を叩き込む。


「ぐぇ!?」


 人体の構造上、手よりも足の方が力強い。それに則るならわざわざ手を使わずに踏み付ける方がラクだが、足跡が残ってしまうので止めておいた。


 親和派寄りとはいえ、ルガト様は敵の一族だ。

 念のため、彼の前では無力なメイドを演じていた方が良いだろう。


 男の意識を刈り取るのと、奥の部屋の扉が開いたのはほぼ同時だった。


「エミリア!?」


 ルガト様は倒れている男と私を見比べてから、私の肩を強く引っ張ってきた。


「何故入って来た!ここは危険だ――」


「申し訳ありません。しかし、ご報告しなければならないことがありまして」



 ◆  ◆  ◆



 黒装束とのことを「あ……ありのまま今起こったことを話すぜ!」という訳にもいかず、私なりに脚色を加えて説明した。


『二人組の黒装束が物陰に隠れる私に気付かずにアリシアの監禁場所を話し、またどこかへ去って行った』――その説明だけではまた外に追い出されそうなので、


「外も危険がある以上、ルガト様と一緒に行動した方が安全だと判断しました」


 と、最後に付け加える。

 ルガト様の性格を鑑みれば、ここで私と別行動を取ろうとはしないだろう。

 無力な自分を演出しつつ、さらに違和感なくアリシアの救出に加わることができる。


 我ながら完璧な作戦と言える。


「……エミリア」


 しばらく思案したのち、ルガト様は確認するように、地面に寝そべる男を差した。


「そいつをどうやって倒したんだい?」


「倒したのではなく、こいつが勝手に倒れたんです。その拍子にどこかにぶつかったんでしょうね」


 前もって用意しておいた答えを述べる。

 すべてを事細かに話せば必ずボロが出るんだから、ある程度は曖昧にして相手に想像してもらった方が嘘はバレにくい。

 やはり私の作戦に隙はーー




「じゃあ、気配の消し方は誰に習った?」




 ――あった。


 言われて、何のことか理解するのに数瞬の時間が必要だった。

 それほどまでに『敵の居そうな場所では気配を消す』というのは私の中で当然のことだった。

 そしてそれは、強烈な違和感をルガト様に抱かせてしまっていたようだ。


「君の姿を見るまで全く気付けなかったんだけど」


「え……と、その」


 私の大バカ野郎!

 なんで気配なんて消したんだよ!

 無力なメイドが!そんなことできるワケがないだろうが!!


 ルガト様は別段責めるような口調ではないが――瞳の奥から、言いようのない疑いの目線を感じ取れた。


「え……と。もしかしたらアリシアから聞いているかもしれませんが、実は以前、傭兵の一団に入っていたことがありまして。その時に少々仕込まれました」


「戦闘要員として?」


「まさか!給仕係ですよ。戦闘行為は習ってません」


「給仕係なのに気配を消す訓練を?」


「傭兵はパーティで行動します。一人の危険は全員の危険に繋がりますので、戦わなくても多少の技術を学ぶのが基本です」


 百パーセントの嘘できっぱりと否定するのは難しい。

 ならば、多少は本当のことも混ぜるのが正しい判断だ。

 木を隠すなら森に、とはいうが、嘘は真実の中に隠したほうが見つかりにくい。


「なるほど。こんな状況でもやけに落ち着いているのは、そういう理由があったんだね」


「落ち着いてはいませんよ。内心の不安を外に出さないだけで精いっぱいです」


 もっとも、その不安の種は「上手く誤魔化せるかなぁ……」という類の不安だが。


「……………………。まあ、いい。アリシアが捕らわれているという地下室へ案内してくれるかい?」


「はい!」


 乗り切ったー!


 心の中で万歳をしながら、黒装束から教えてもらった場所へルガト様を導く。


 いかんな。

 転生者という身分であるためか、私はすぐに自分を特別視し、調子に乗ってしまうという悪い癖がある。

『三つ子の魂は百まで』とは良く言ったものだ。この難解な性格がいつまで経っても、何度痛い目を見ても治らない。

 常に自分を戒め続けないと、すぐに足元をすくわれてしまう。

 とりあえず疑惑の目は解かれたのだし、落ち着いて、これ以上のボロだけは出さないように気を付けよう。



 ――安堵感からか、私は背後から注がれるルガト様の視線に気づくことができなかった。



 ◆  ◆  ◆



 大きな階段の左右に設置された彫刻品。

 どういうカラクリが仕込まれているのかは分からないが、それをひねると床がゴリゴリと動き出し、地下に降りるための階段が出現した。


「この先です。階段を降りると地下牢があって、アリシアはそこに捕らえられています」


「ありがとう。ここからは僕が先に入るよ」


 地下牢、と聞いた瞬間、ルガト様の表情がわずかに強張った。心なしか声音もやや固い。


 こういうお屋敷に付き物なのが、隠し部屋の存在だ。

 黒装束曰く、隠し部屋は彼らが作ったのではなく、もともと屋敷の設計段階から計画されていたようだ。


「…………」


 地下室に入る直前、ルガト様がぶつぶつと何かを呟く。


「ルガト様、今のは?」


「ああ。祈りを捧げただけだよ。力が湧き出る祈りをね」


 祈り。

 ――たぶん、自己強化の魅了術だろう。

 ヴァンパイア種族は自己強化をする際、今のように長々とした呪文を好む傾向にある。


 私としてはそれが理解しがたい。

 言葉が漠然としすぎて効果が出辛いし、短い語句を使えばより効率的なのに……。


 まあ、それが彼らなりの流儀なのだろう。

 だったら、口出しなどするべきではないし、できるはずもない。

 なにしろ魅了術は種外秘だ。秘密を知っているとバレれば、例え相手がルガト様でも殺されてしまうかもしれない。

 それは御免だ。



 ◆  ◆  ◆



 地下室へ続く階段を降りると、少しだけ右に曲がった廊下の先に格子の入った部屋を発見した。

 大小さまざまな器具が保管されているそこは、地下牢というよりは拷問室のように見えた。

 もともと住んでいた貴族がここで何をしていたのか……考えたくもない。


 牢の中には、情報どおりアリシアが捕らえられていた。

 身動きができないように毛布で簀巻きにされ、意識はあるようだがぐったりとしていて動きはない。


 ――普通のファンタジー小説だったら、両手足を鎖で縛られ、ちょっと衣服が乱れているのが正しいのだろうが、現実はこうだ。


 鎖で縛れば、せっかくの商品に傷がつく。かと言って、ただ牢屋に閉じ込めておくだけでは脱走を試みるかもしれないし、もしかしたら自傷行為に走るかもしれない。

 となると、やはり何らかの手段で拘束しなければならない。


 そこで考案されたのが簀巻きという手法だ。傷が付きにくいし、鎖以上に身動きを取れなくすることができる。

 付け加えるなら、簀巻きにすることで肌の露出を抑え、『保管』している間の『つまみ食い』から商品を保護するためという理由もある。


 アリシアほどの美少女となれば、飢えている男連中にはなるほど目の毒だ。


 牢屋の左右には、二人の男が向かい合って世間話に花を咲かせていた。

 黒装束の情報によれば、相手のチームは五人。

 黒装束と上で気絶している二人を除けばあと二人。


 ――つまりは、こいつらさえ倒せばもうアリシアは助け出したも同然だ。


 加えて、こちらにはルガト様が居る。

 物陰に隠れて隙を伺い、魅了術で強化した腕力で石でも投げてもらえば気絶させることも容易い。


 勝利を確信し、身を寄せるようにして壁に手を当てた。


 が。


「アリシアッ!!!!」


「え、ちょ、ルガト様――!」


 隠れるどころか、大音量で叫び堂々と正面に立つルガト様。


 なんで出るの?


 向こうは気付いてなかったのに!


 一瞬でカタを付けられたのにッ!!


 この馬鹿――思わず口から出そうになった言葉を喉の奥に押し込める。


「な、なんだおまえらは!?」


 男は突然の侵入者――しかも、ヴァンパイア種族――に慌てふためいていた。

 ルガト様は紅い瞳を煌々と輝かせ、犬歯を剥き出したまま一瞬で相手との間合いを詰め、拳をを叩き込んだ。


「アリシアを――返せ!」


「ごぁ――!?」


 成す術なく吹き飛ぶ男。

 普通、この距離で侵入がバレたら救出どころの話ではなくなるのだが、そこはルガト様の地力でなんとかなった。

さすがヴァンパイア種族、と称賛する他ないだろう。

 しかし、一撃で相手を昏倒させるには至らず、体勢を立て直そうとしている。


 別にルガト様の攻撃が弱かった訳ではなく、単にシチュエーションの問題だ。

 奇策も何もない、真正面からの攻撃。

 ある程度荒事を経験している者からすれば、いかに早かろうと防御することはそれほど難しくはない。


「この……赤目野郎がぁ!」


「ふっ――!」


 反撃を綺麗に受け流し、二撃目で一人目の男をなんとか戦闘不能にすることができた。


……が、本来必要の無かった攻撃は、もう一人に時間的猶予を与えてしまった。


「動くんじゃねえ!」


「――っ。貴様、卑怯だぞ!」


 もう一人の男は隙を付いて牢屋の中に入り、アリシアにナイフを向けていた。


「破格の値段の付いた商品だったんだがな。自分の命には替えられねえ」


「……ほぉ」


 破格の値段……ねぇ。



「おい赤目!さっさと道を空けろ!こいつがどうなってもいいのか!?」


「くっ……」


 アリシアを人質に取られては何もできず、ルガト様は攻めあぐねていた。


「ん……そこのガキは何だ?」


 ふと、男と目が合った。もしかしたら今まで気付いていなかったのかもしれない。

 彼は私の容姿を品定めしたのち、唾を吐きながら、


「もしかして、そんな成長期も始まってねえチビとこの女を交換しようとしてたのか?――は、等価交換って言葉も知らねえのか最近のヴァンパイアは」


 などとのたまいやがった。


 …………。


 ルガト様が居てよかったなお前。

 居なかったら、その辺に転がってる拷問道具の効果をその身で味わってもらうところだったぞ。


「あぁ……ううぁ……」


 ナイフを目の前でちらつかされ、恐怖に怯えるアリシア。


「――大丈夫。君は僕が守るから」


「ルガト……様……」


 そんなルガト様に、アリシアは、


「わ――私の事なんか構わず逃げてください!これ以上ルガト様に迷惑は掛けられません!」


 と、叫び、暴れ出した。


「てめぇ!人質の分際で――ええい、大人しくしろ!」


 見かねた男が、ナイフの柄でアリシアに殴りかかろうと大きく手を振り上げる。


「うおぉ!?」


 そしてそのまま、後ろへ豪快にすっ転んだ。

 ――ように見えるが、実際は男の足元を見えない程度に陥没させ、意図的にバランスを崩したのだ。


 ここが地下で、そして石造りでなくて本当に良かった。

 土と雪の操作は、私の最も得意とするところだ。


 ルガト様……これは貸しだぞ?



「――!今だ!」


 大きな音を立てて転んだ男に驚くも、ルガト様の行動は正しく、そして早かった。

 一気に距離を詰め、今度はしっかりと一撃で相手を無力化してくれた。



 ◆  ◆  ◆



「もとはと言えば、全て私が悪いんです」


 ようやく解放されたアリシアは、ぺたんと尻餅をついたまま語り始めた。


「それは違う――」


「違いません!」


 これほど強い語気を発するアリシアを見たのは初めてだ。

 それはルガト様も同様なのだろう。目を丸くしている。


「そもそも、私なんかがあなたに仕えるということが間違っていたんです。それでも最初は、なんとかルガト様に相応しい使用人になろうと努力しました。けれど、頑張れば頑張るほど空回りして、結局いつも迷惑をかけてしまって――だから、これは神様が下した罰なんです。分不相応なことを夢見てしまった、私への」


 怒っていると形容できるほどに顔を歪め、心境を吐露するアリシア。

 それに対し、ルガト様は、ふっーーと、微笑み、ゆっくりと彼女を抱きしめた。


「やっと目を見て話をしてくれたね」


「……」


「アリシア。君の気持ちはよく分かった。だから今度は僕の話を聞いてくれ」


「……」


「僕のために、そんなに頑張ってくれていたんだね。ありがとう。そして、ごめん」


「ルガト様が謝ることなんて、なにも――」


 言葉を遮ろうとするアリシアの口を、ルガト様は指でそっと閉じる。


「君の言い分は聞いた。だから僕の言い分も最後まで聞いてくれ」


「は……い」


「僕が不甲斐ないばかりに、君にいつも緊張を強いてしまっていた。どうにか誤解を解こうとしていたのに、いつの間にかそれが億劫になり、諦めていた。いいや、僕は君の優しさに甘えていただけ。その結果がこのざまだ。こうなってしまったのは、すべて僕の失態だ。許してほしい」


「それは……違います」


「違わない」


「悪いのは私です」


「いいや。僕だ」


「……」


 アリシアは拗ねたようにルガト様に目を向け――そして、ぷっ、と噴き出した。


「ルガト様。あなたは頑固な方ですね」


「君の方こそ」


 そのまま、二人で小気味よく笑い合う。


 ――「いつの間に?」と問われればすぐに答えられないほど、実にあっさりと、心のすれ違いは解消されていた。


 ほんの少し。

 ほんの少しだけ、きっかけさえあれば、ヒトは互いを分かり合えるといういい例だろう。


「本当に……君が無事でよかった」


「ルガト様……うぅ」


 再び抱きしめると、アリシアは自らルガト様の方へ、もたれかかった。

 極限まで引き延ばされた緊張の糸が切れ、嗚咽をはじめる。

 嗚咽はやがて、大粒の涙に変化した。


「う……うああああ、うああああああん!ああああああん!」


「大丈夫、もう、大丈夫だよ」


 優しく語りかけるルガト様。

 そのまま彼女が泣き疲れて眠るまで、彼は優しくアリシアの頭を撫で続けた。




「……一件落着、ってところかな」


 少しヒヤヒヤしたが、どうにかアリシアの救出に成功することができた。

 本来とは全く違うシチュエーションになってしまったが、二人の仲を取り持つという名目も、これにて達成完了だ。


 今後はお互い気を遣うことなく、良好な関係を築き上げられるだろう。






















 ――その、はずだった。



 ◆  ◆  ◆



 翌日。

 イワンの練習が終わるのを正門の前で待っていると、大きな馬車が私の目前で止まった。


「やあ、エミリア」


「ルガト様。こんにちわ」


 馬車を降り、ルガト様は初めて出会った時と同様、深く腰を折ってくれた。


「改めて礼を言わせてもらうよ。アリシア救出に協力してもらって、本当にありがとう」


「いいえ。私は何もしていません」


 実際、ほとんどルガト様一人で助けたようなものだ。

 多少助力はしたが、しなくても結果は同じだったように思える。


「それで、アリシアとはあれから仲良くやれてますか?」


 現在アリシアには立入禁止区域に入ったという名目で、数日間の謹慎が言い渡されている。

 謹慎という(てい)にはなっているものの、実際は彼女の体調をおもんばかり休養を言い渡した、というのが本音だ。

 今回の事件はあの子には少し刺激が強すぎただろうし、良い判断だと思う。


 色よい返事が聞けるという確信を持っての質問だったが――私の予想に反し、ルガト様は苦笑いをした。


「いや……やっぱり僕は嫌われているみたいだ」


「――――へ?」


 曰く、アリシアは以前よりも彼の事を避けるようになっているという。

 何かの作業をしている時に手が触れ合っただけで電撃が走ったかのように引っ込めるし、目が合ったらすぐにそっぽを向くし、しきりに盆などで顔を隠すようになった、と。

 そのどれもに共通するのが、頬を紅潮させている、というのだ。


「顔を真っ赤にするほど怒っているんだね。やっぱり僕は雇い主として失格かなぁ」


 ずん……と肩を落とすルガト様。


「いや……あの、それって……」


「少しは分かり合えたのかと思ったけど、人付き合いっていうのは難しいね。まあ徐々に好感度を上げられるように頑張るよ」


「…………」


 こいつはラノベか何かの鈍感系主人公か?

 チート能力者なのか?

 ハーレムを作っちゃうのか?


「おっと。そろそろ行かないと。じゃあねエミリア」


「え、ええ……また……」


 手を上げて去って行くルガト様に、私は呆然と手を振り返すことしかできなかった。


 胸中に浮かんだ言葉は、ただ一つ。





 爆発しろっ

NG集


『声』


「……………………。まあ、いい。アリシアが捕らわれているという地下室へ案内してくれるかい?」


「はい!」


 乗り切ったー!(CV:悠木碧)


※某アニメ第四話の声を聞きながらお楽しみください。



『カラクリ』


 大きな階段の左右に設置された彫刻品。

 それをひねると屋敷全体がグラグラと揺れ出し、四方の壁がバターン!と音を立ててまるでハリボテのように崩れた。


 ヒュウ、と、虚しさを煽る風が吹いた。


「……地下室は?」



『過剰な描写』


「動くんじゃねえ!」


 もう一人の男は隙を付いて牢屋の中に入り、(簀巻きの)アリシアにナイフを向けていた。


 ◆  ◆  ◆


「おい赤目!さっさと道を空けろ!こいつがどうなってもいいのか!?」


「くっ……」


 (簀巻きの)アリシアを人質に取られては何もできず、ルガト様は攻めあぐねていた。


 ◆  ◆  ◆


「もしかして、そんな成長期も始まってねえチビとこの(簀巻きの)女を交換しようとしてたのか?――は、等価交換って言葉も知らねえのか最近のヴァンパイアは」


 ◆  ◆  ◆


「あぁ……ううぁ……」


 ナイフを目の前でちらつかされ、恐怖に怯える(簀巻きの)アリシア。


「……もはやギャグだな」



『罰』


「違いません!」


 これほど強い語気を発するアリシアを見たのは初めてだ。

 それはルガト様も同様なのだろう。目を丸くしている。


「私が将来の年収と顔と家柄とチョロさであなたに仕えようと思ったことが間違っていたんです。

――だから、これは神様が下した罰なんです。将来あなたを尻に敷いて働かずに豪遊生活なんて分不相応なことを夢見てしまった、私への」


「それは罰されて当然だな」

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