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カルマと不等号  作者: あじゅまりん
Episode2 溺れる
7/11

Episode2 無限サイクル

ちょっとグロ。

意外にも移動は全て徒歩で、これから戦うのに足が棒になる。私はどうなるのだろうか。戦争というと習った事くらいしか辞書にないけれど。死ぬこと、それが全てだと思っている。

戦争したい人なんて滅多にいないだろう。

(では何故戦争は起こるのか...)


唯でさえ身体は強くはない私が応戦したら、確実に死ぬ。逆に開き直るくらいだ。


よく考えてみて。

死ぬのは今こんなに恐ろしいし悍ましいけれど、確かに 私は一度経験しているのだ。そして、きっと、ここにいる人達も......。

腹が据われば早いもの、なのかもしれない。



「....ん?」

「どうした?」


セナはいかにもな目でこちらを見る。

「あー....」

「私達はまた死ぬ...」

「...それはどういうこと?」

「また、死ぬんですか?また私達は辛い思いをして死んじゃうんですか?」


セナは一瞬何かに思いをふけたように戸惑っていた。やたら幼く見えた。高校生としての、顔。


「実は誰も知らないんだ。この後のことって」


初めて見たセナの笑顔は、内面からこみ上げる淋しさと苦しみを表していた。

優しさの溢れた表情だった。


こんな一面もあるんだ、と思った。同時にぼやっと見えたのは、自分を痛め付けているセナの姿だった。





────なんて考えているうちに着いたようだ。

じわじわと立ち込める饐えた臭いに違和感を感じた──。真横で長身の男性が後ずさりしながら尻餅をついているのを見た。髪は脂汗でべたべたに汚れ、手の甲からはどす黒い血が流れている。


「だ、大丈夫ですか」


返事は無く、刹那男性は前につんのめった。

乾いた音と共に。




皆は慣れているのか、皆は男性を横目で流すだけだった。地面は赤黒く染まり、(あおぐろ)い錆びた刀を振りおろした瞬間に、飛ぶ肉片が見えた。

1度頭の中で見ていた光景だったとしても

忘れることはないだろう。


途端にルノアが動いた。


そしてみんなも動いた。硬直した体を何とか緩ませ皆に着いていく。

ルノアは華麗に剣を振り、血しぶきを味方に付けるように人の抵抗を振りほどいた。

セナは銃を打っていた。慎重に狙いを定め───

一撃だ。

朔は短い刀を突き立てていく。鮮血は脂肪の塊を伝う様にこぼれ落ち、スローモーションのように崩れ落ちる肉片が。


私も徐ろにスタンガンを振り回すか...。

行動が、心より先に動いた。


スタンガンが一人に当たった。が、不発。その拍子に的の銃が頬に掠れて、赤の飛沫が黄色の皮膚を伝った。


「 ッ.....!」


そこで私の闘争心に火がついた。

スタンガンを狙いを定めて首に当てる。

ジリッと音を立て、火花が散る。


「今ですっ!!」

敵チームは崩れ落ちる....


ただ、グロリアスがいつまでも勝ち続ける訳が無い。私は太腿に投げられたメスのような刃物を受けた。痛みはジンジンとする感じだが、まだ耐えられる。


柊哉のほうをふと見た。柊哉も肩から出血していた。


「 柊哉、傷大丈夫?」

柊哉は痛そうな顔をしながら微笑んだ。

「 俺は大丈夫だけど、響歌....」


こんな時にまで心配してくれるんだ。ただ、痛みには慣れている。ぴきっとした痛みには....


「 大丈夫!戦いに戻ろう」


柊哉と別れてからも、冴えていた。

拾った刃物を突き刺しては、深呼吸。

多分数人は殺してしまった。



皮膚を切るあの感覚が蘇ってきた...。

スパスパッ....


...やたらと気配を感じる。はっとして耳を抑えた。

が、何も起きなかったので後ろを振り返った。



「えっ?」


相手側から嗚咽混じりの悲鳴が飛んだ。

一方仲間からは歓喜の声が聞こえた。


...私は、もしかして。



相手チームは今にも倒れそうになりながら口々にこう叫んでいた。

「ルキア様ああああっ....!」

ルキア様...!もしかして私が殺したのは、王?


全身の力が抜け、立っていられなくなった。

ふっと座り込んだその時、ガシッとセナが私を抱えた。

「 おめでとう。お前が殺したのは向こうの王だよ」


その時、味方の誰かが舌打ちをした、気がした。



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