Episode2 無限サイクル
ちょっとグロ。
意外にも移動は全て徒歩で、これから戦うのに足が棒になる。私はどうなるのだろうか。戦争というと習った事くらいしか辞書にないけれど。死ぬこと、それが全てだと思っている。
戦争したい人なんて滅多にいないだろう。
(では何故戦争は起こるのか...)
唯でさえ身体は強くはない私が応戦したら、確実に死ぬ。逆に開き直るくらいだ。
よく考えてみて。
死ぬのは今こんなに恐ろしいし悍ましいけれど、確かに 私は一度経験しているのだ。そして、きっと、ここにいる人達も......。
腹が据われば早いもの、なのかもしれない。
「....ん?」
「どうした?」
セナはいかにもな目でこちらを見る。
「あー....」
「私達はまた死ぬ...」
「...それはどういうこと?」
「また、死ぬんですか?また私達は辛い思いをして死んじゃうんですか?」
セナは一瞬何かに思いをふけたように戸惑っていた。やたら幼く見えた。高校生としての、顔。
「実は誰も知らないんだ。この後のことって」
初めて見たセナの笑顔は、内面からこみ上げる淋しさと苦しみを表していた。
優しさの溢れた表情だった。
こんな一面もあるんだ、と思った。同時にぼやっと見えたのは、自分を痛め付けているセナの姿だった。
────なんて考えているうちに着いたようだ。
じわじわと立ち込める饐えた臭いに違和感を感じた──。真横で長身の男性が後ずさりしながら尻餅をついているのを見た。髪は脂汗でべたべたに汚れ、手の甲からはどす黒い血が流れている。
「だ、大丈夫ですか」
返事は無く、刹那男性は前につんのめった。
乾いた音と共に。
皆は慣れているのか、皆は男性を横目で流すだけだった。地面は赤黒く染まり、黝い錆びた刀を振りおろした瞬間に、飛ぶ肉片が見えた。
1度頭の中で見ていた光景だったとしても
忘れることはないだろう。
途端にルノアが動いた。
そしてみんなも動いた。硬直した体を何とか緩ませ皆に着いていく。
ルノアは華麗に剣を振り、血しぶきを味方に付けるように人の抵抗を振りほどいた。
セナは銃を打っていた。慎重に狙いを定め───
一撃だ。
朔は短い刀を突き立てていく。鮮血は脂肪の塊を伝う様にこぼれ落ち、スローモーションのように崩れ落ちる肉片が。
私も徐ろにスタンガンを振り回すか...。
行動が、心より先に動いた。
スタンガンが一人に当たった。が、不発。その拍子に的の銃が頬に掠れて、赤の飛沫が黄色の皮膚を伝った。
「 ッ.....!」
そこで私の闘争心に火がついた。
スタンガンを狙いを定めて首に当てる。
ジリッと音を立て、火花が散る。
「今ですっ!!」
敵チームは崩れ落ちる....
ただ、グロリアスがいつまでも勝ち続ける訳が無い。私は太腿に投げられたメスのような刃物を受けた。痛みはジンジンとする感じだが、まだ耐えられる。
柊哉のほうをふと見た。柊哉も肩から出血していた。
「 柊哉、傷大丈夫?」
柊哉は痛そうな顔をしながら微笑んだ。
「 俺は大丈夫だけど、響歌....」
こんな時にまで心配してくれるんだ。ただ、痛みには慣れている。ぴきっとした痛みには....
「 大丈夫!戦いに戻ろう」
柊哉と別れてからも、冴えていた。
拾った刃物を突き刺しては、深呼吸。
多分数人は殺してしまった。
皮膚を切るあの感覚が蘇ってきた...。
スパスパッ....
...やたらと気配を感じる。はっとして耳を抑えた。
が、何も起きなかったので後ろを振り返った。
「えっ?」
相手側から嗚咽混じりの悲鳴が飛んだ。
一方仲間からは歓喜の声が聞こえた。
...私は、もしかして。
相手チームは今にも倒れそうになりながら口々にこう叫んでいた。
「ルキア様ああああっ....!」
ルキア様...!もしかして私が殺したのは、王?
全身の力が抜け、立っていられなくなった。
ふっと座り込んだその時、ガシッとセナが私を抱えた。
「 おめでとう。お前が殺したのは向こうの王だよ」
その時、味方の誰かが舌打ちをした、気がした。