Episode1 裏腹に
こんにちは。よさのです。
最近BUMP OF CHICKENが大好きです。
周りにBUMPERさんいなくて、微妙に切ないです。
ってのを書いたのがもう、2年前なんて信じられない!w
実は明日BUMP OF CHICKENの、コンサートに行ってきます!わー、楽しみw
グラッグラッ...体は重いのに気持ち悪いほどの浮遊感に襲われる。まるでジェットコースターに乗り回した後のようだ。
...瞬間的に普段の体に戻った気がした。
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ここはどこだろう。ヒヤリとする地面に忙しい空気。人の煩い叫び声....?
私は湿った土の上に倒れていたようだ。
気のせいかアイロンをかけたあとの麝香を感じた気がした。
とりあえず自分が置かれている状況がわからない。
ただ、この空気を吸ったことがある気がする。
驚く程の眠気が襲う。瞼がやたら重かった。
「大丈夫か?」
艶のある聞き覚えのない声だ。
重い瞼をゆっくり開くとそこにはなぜか見覚えのある男がいた。高身長で白スーツ姿。まさに王子様。これって....!!
「えっと....え、ルノア!?」
口に出してからはっとして飛び上がった。
顔がみるみる紅潮していくのがわかる。
ルノア、それは私の理想の塊。
脳内で完成した完璧な王子様なのだ。
要するに私が二次元で.....。
ん?
「...何故私の名前を?」
そう言われても....。
「もう良い。とりあえずついて来い。ほら。」
「え、ちょっと.....!」
手が差し出され、ポンと重ねる。
赤い天鵞絨の絨緞が何者かにより引かれて、その上を手を引かれ駆ける。正に想像していた物語の序章である。
「その」
焦っているのか何なのか声が裏返った。
天鵞絨のフワフワが心地いい。ずっと宙に浮いている気がして多少の快感を感じた。一方で、悪寒も。
「変な声だな。」
強烈な既視感...。デジャヴというやつか。
私は既に状況を飲み込んだ。これから起こる事の予想も大まかにはできる。
これは、私が見ている夢だ。
天国という遥か遠い場所から見ている夢。
きっと私は死んでしまったんだ。
✱
私が気にしていたのは柊哉のことで。
...って言っても全然覚えてなくって。顔も性格も全く。覚えていないけど、好きで好きでたまらなかったってことだけは覚えている。また会いたくて。私は変なことを考えていた。期待していたのかもしれない。
また会えることを。死んでいることを。
駄目だ、そんなことを考えちゃ。
こっち側でもそばにいてくれる、そんなこと有り得ない?
「柊哉と名乗る人を知りませんか?」
「....知らないな。」
知らないと言う期待はずれな回答に落胆したが、それは柊哉の生を裏付けることでもある。
本音と建前が反比例していく。
私はルノアの物と思われる小型チャーター便に乗せられていた。丁度良い温度に保たれた内部は、少しだけ鉄の臭いがした。
ルノアに出会い、変な名前の国に連行される。
そもそもこんな話が有るだろうか。死んだら(死んだ時のことは覚えていないけど)別世界に飛んだ。しかも夢見た世界に。天国 ...なのか地獄なのかはまだわからない。本当に存在するとは思っていなかった。もしかしたら本当に夢だったのかも、と思い頬をつねった。神経に痛みは伝わった。
根拠のない不安が頭をいっぱいにする。
「大丈夫かな...」
知らぬ間に声は溢れていた。
死ぬ程耳がいい。ルノアは反応した。
「不安なのは解るが....」
ルノアは可愛らしくにったりと笑った。 その真意はわからない。
空気は見事に止まった。素晴らしい程沈黙が続いた、約15分位。機体が低くなっている。着陸するのだろうか。飲み込んだ情報を消化するためにぼーっと遠くを見つめていた。
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飛行機は着陸体制となり大きく揺れていた。三半規管が弱い響歌は込み上げる吐き気を抑えながら、背もたれに寄り掛かっていた。
「そろそろ降りるぞ。用意しろ。」
「は、はぁあい ......。」
ドスっと振動が伝わった。無事着陸したらしい。1時間の空の旅を終えた。吐き気も消えた。所でどこ
だ、ここ。夢の世界といくつか重なるが、重ならない部分もあるらしい。チャーター便に乗るのは予定外だった。
飛行機に乗る前に引かれた天鵞絨がまた姿を表しており、足を付けた瞬間、私は目を見開いた。
「は...はあ!?」
目を向けた先にはあからさまに場違いな豪華絢爛な建物がぽつんと1つ。周囲の雑草や泥の臭さの入り混じる不思議な光景。煌めく彫刻に高い柵....「お城」だ。
門前には鎧を着た兵士が二人。
「ここは...?」
「何故?」
「それはお楽しみかな」
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あんなに緊張していたのに、今はウキウキした気持ちになっている。
「入って」
とルノアに手を引かれ連れられて入ったそれは、やはり派手派手である。薔薇のくどすぎる香りが鼻を刺す。
そこには何人かの若者がいて、みな重装備をしている。左から、緑の髪を不健康に伸ばしている。女?真ん中はキャバ嬢みたい。
その隣の人は長めの黒髪で、顔は良く見えないけれど.....?
私はタイミングを図れずに口を開いた。
「え、宇佐美響歌、17歳です。よ、ろしくお願いします?」
軽く会釈をした。
すると男らしい女が話し始めた。
「知ってる。私はセナだ。15歳。」
声のトーンが低く、より男らしい。
次にキャバ嬢みたいな雰囲気の子が言った。
「わ、私、鴻上里蘭18歳です.......宜しく.....。」
見た目とは裏腹に恥ずかしがり屋だろうか。頬を赤らめて下を向いている。
更に次々と集団は自己紹介をしていく。
「城木朔だ。宜しくな。」
背丈は裕に180を越している。クールな感じか。
「んーで、俺がルノア。年齢は秘密にしとくか。宜しくな。」
皆格好よくて、個性豊かだ。
「宜しくお願いします!」
いい人そうだけれど、結局のところ誰なんだ?
もしかして変な宗教の会合か何かに入っちゃった?
ちょっと不安。
「とりあえず部屋に入るか。」
導かれるまま100m位歩いた。「部屋」までこんなに歩かなければならないの?
漆黒のドアを開けると、絢爛なソファーに油絵があった。
「座って」
ルノアが言った。
「宇佐美はまだ良くわかんないよな。」
「私達は〝グロリアス〟という戦闘集団だ。グロリアスってのは、名誉って事。戦いを仕事とする限り危険が伴う。だけど、心配すんじゃねえよ。この仕事は国家公認であり、強制なんだ。」
「名誉? 」
戦闘集団?名誉?国家公認...
そんな重役をなぜに私がやらなければならない?
怖い。頭の中が埋め尽くされていく。
「私だって怖いけれど大丈夫。グロリアスはいい奴ばっかりだぞ。」
隣にいたセナは私の背中を叩いた。
それは本当の気持ちなのだろうか。
本意なの?
ルノアが気まずそうに口を開いた。
「続けるが...宇佐美には悪いが明日もあるんだ。戦いが、な。そんで...明日戦いに出るか?明日慣れるために行くのもいいし、気持ちの整理を付けるのでもいいぞ。ただ、行くなら覚悟を決めた方がいい。」
あの痛みがよぎる。手首がたぎっている。...でも最初から見くびっていいのか?
「遠慮しなくていい。」
「ん....休ませて下さい」
「わかった。なら明日は朔がつくからしっかり休め。じゃあ、解散。後、宇佐美は残れ。」
はいっという威勢の良い声が消えていった。
学校での集団生活にどこか似ていて寒気がした。
「部屋案内するからよく見とけよ」
城に住んでいること自体凄いけれど、改めて見ても輝いている。シャンデリアは純クリスタル製だそうで...。
香水の微かにする廊下は静かだ。
「お前の部屋はここ、203だ。セナと里蘭と部屋は並んでいるから安心しておけ。」
ルノアにエスコートされ、ドアを開ける。
中を開けると白のレースカーテンに赤の丸テーブル。真白な汚れのない天蓋ベット...シンプルだが派手な部屋だ。洗練されている。
「時間割は机に置いてある。今は自由時間だから挨拶周りでもしたらどうだ?」
そう言うとルノアは高そうなドアを豪快に閉めた。
今は部屋を回る気分ではなく、ベットで寝たい。
目覚ましをセットし眠りについた。
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何かと不思議な1日であったが、皆と少し打ち解けられて、心配や不安は少し消えた。
戦うことへの抵抗も少しながら減った。
国家から配分された身だと、少しは自覚しなければ。
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ジリリリリと五月蝿い音が響く。朝が来た。
不似合いな部屋に居ると落ち着かない。やたらと飾りが施されたドレッサーに顔を向け、支度をした。
今日はルノアの話の通り戦いがあり、しかもかなりと強敵だという。
今は7時を過ぎた所だ。丁度集会の時間になったので、一階の大広間にかけ降りていった。それにしろ恥ずかしいなこのネグリジェ。
まだ早すぎたのか、セナしかいなかった。
「おはようございます!」
セナがこちらに寄ってきた。
「よく眠れたか?敬語はやめろ」
少し照れくさそうな顔をした。
案外女子って所もあるのかもしれない。
その後直ぐにみんなが来た。
「こちらに注目。今から集会を始める。今日はフォレスターとの対戦だ。俺と宇佐美は残るから怪我のないように頑張れよ。」
朔が大声でまとめるとみんな無言で走り去って行った。皆、戦いに行くんだ....。
「んで、お前はどうして死んだんだ。話聞くぜ」
皆を見送る様に体を揺らしながら、朔は話しかけてきた。
「お前みたいな奴が自殺するって感じしねえから」
しばらく沈黙が続いた。
ん?
「何で自殺した事を知ってるんですか?」
そう言うと、朔は目を見開いた。
そしてすまなそうに手を合わせた。
「知らなかったのか、このグループは自殺した人の集まりなんだ。」
驚いた。ルノアも。強そうなセナさんも。里蘭ちゃんは少しわかるけど....。
そして朔さんも。
要するに、ここは天国ではない。地獄だ。
「あ、厳格にいうと限りなく自殺に近い人って人も....かな、俺なんかはそれでさ」
「自殺に近い人?」
「んー...なんつーか、自ら死のうとしたってわけじゃないけど...。まあ、正直覚えてないんだけど愛する人がいてさ、多分俺、自殺しようとした彼女を、止めようとした.....んだと思う。」
朔さんの言うことが本当で、尚且つ彼女じゃなくてもいいなら、柊哉と私も成り立つ。
もしそうなら、柊哉は自殺していないって可能性もある。
いやいや、何考えてるの。
「んで、どしたの」
「いじめられていて、辛かったので....」
少し笑みを浮かべて、朔さんはそっかと口にした。
不敵な笑みは何か企んでいるように見えた。
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部屋に戻り自由時間ということにした。私は元々男っぽく、下着やらパジャマやらには何らこだわりは無い。ベットに寝転がった。
「.....っ」
あの痛みを思い出した。死んでも、忘れても痛みは消えなかった。
寂しかった。私は柊哉に会いたくて、でも会えないってことは知っていたから。
なのに、柊哉がわからない。
やっぱり、柊哉がいないと....
どんな顔かすらも曖昧なのに、こんなに好きで好きで。鉛を飲んだようにずーんと気持ち悪かった。朔さんのさっきの言葉を思い出す。
いつになったら柊哉に会えるかな。会えないかもしれないけど。
やっぱり、一人はいやだって。
読んでいただいてありがとうございました!
まだまだ、未熟ですが続けて読んでいただけたら嬉しい限りです!