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カルマと不等号  作者: あじゅまりん
Episode1 成れの果て
1/11

Episode0 現実の焼失

こんにちは。あずまと申します。

今回、カルマと不等号という作品を書かせていただいています。私は今まだ義務教育6年目のガキですが、小説家になりたいという夢を叶えられるように頑張っています。

めっちゃ下手だと思いますが、よかったら読んであげてください。


今日何度目のチャイムだろうか。

嫌味を感じる歪んだこの音は、既に私の頭の中を掻き乱している。

今年高校生になった私だったが、理想からは掛け離れた物であった。




┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈カルマと不等号┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



#

最近は、ふと我に返る事がある。常にネガティブで良いのだろうか。周りに迷惑をかけてしまってないだろうか。

メンヘラは好かれないだろうし、好かれたように思っても上っ面だけだろう。私だって友達がそうなれば、話すことも相談にのることも乗り気じゃなくなる。そう思われて当然だった。知っていた。



高校デビューなんていう言葉があるけれど私にとっちゃ寧ろ逆で、青春とはお世辞にも言えない平凡かつ凡庸な日々を過ごしていた。


中学生の時は明るくて友達もいるし、類的にはムードメーカーだった。だが高校1年生になって酷い虐めにあい自信をなくしてしまった。針を飲まされそうになったり、頭を踏みつけられたり...。

見た目?性格?それとも....。

何が原因かは未だにわからない。楽しみでやっていたなら許せない。


残念ながら友達は少ない。

当たり前ながらネガティブなメンヘラの根暗と付き合ってくれる人はなかなかいないもの。

ましてや顔も可愛かないし....ね。

ただ、幼馴染みの柊哉だけは他の友達と同じように接してくれているように感じる。





そんな私はこの前ある事に気が付いた。それはメンヘラの典型的な特徴であった。

「現実逃避してみよう」

つまり二次元ならこのメンヘラでも大丈夫というわけだ。そんな私は「ネットゲーム」を始めた。


なんやかんやで一ヶ月も経たぬうちに完璧に「ネトゲ」に浸かりこんだ私。当然ながら現実が変わる由もないわけで....

嫌だったけれど真面目に通っていた高校は休みだすようになり、倦怠感に襲われた日はだらだらと寝転がり....。

色々崩壊した物だ。でも私はこの生活を辞めることは決してなかった。寧ろ辞められなかったのだろう。自ら巻き付けた重い鎖は解けずに自分をダメにしていく。


自らの重みに耐えられない。



#

またいつものような生活を繰り返していた朝に普段聞きなれない音が突然鳴り響いた。

プルルルル.....プルルルル.......

いかにもな機械音は耳を貫く。胸を拍動させる。

電話だった。独り暮らしの私の家の番号を知っている人はごく稀である。私は急いで受話器を取った。

「もしもし?」

自分の声が響きわたり、少し気味悪い。

「響歌?」


落ち着いた低い声だ。聞きなれた唯一の声、柊哉の声だった。

「あ、柊哉だけど、元気?」

「え、あ、うん?」

私はその質問の意図を読み取る事が出来なかった。というのも私は元気だからだ。

「最近学校来てないし、さ?」

「あー...」

ゴソゴソと箪笥を漁る。

マジか────

カレンダーを見ると、三ヶ月近く学校には行っていなかった。 流石に留年レベルかも...。




丁度三ヶ月前。

イジメはピークに達しており、耐えるに耐えられなくなった。イジメグループの主犯格は、クラスでは優しく人気者の優等生のフリをしている偽善者だ。

何を言っても信じてもらえない。「 一緒に帰ろう」ととびきりの営業スマイルで私を呼び出すと、私の制服を破り剥ぎ取り捨てた。

自傷行為が癖になった。その時からずっと逃げていた。

確かに、自覚はなかったけれど心配を掛けた。

もう柊哉に迷惑を掛けることはできない。




「大丈夫、何もないよ」



「そっか、わかった」


向こう側から受話器を置く音が鳴った。

思い返せば、無視もイジメという言葉があった気がする。もう関心すらなくなったということか。






暇だった。

少し涼しくなった。ぼろ臭い、曇りガラスの窓の間からから流れる景色も良く見える。

きっと世界が終わるときは騒がしくて詰まった空気が流れるのだろう。叫び声、呻き声。

小さなピンク色のソファーで一息つきながら、そんな事を思っていた。

基本的に家具は置かない方。スッキリとしたほうが自分が自分になる気がするからだ。さらに部屋にホコリが溜まっても片付け易いという相乗効果もある。ただ、この部屋は誰にも見せられない。

血なまぐさいトイレに、紫がかった液体の溢れた絨毯。慣れてしまった。この臭いも、シミも。

これは自傷行為を行った時の物だった。

最初は自分の価値を見いだせなくて、した。でもそれが快感になって、自然と癖になった。


そんな時に柊哉は側にいてくれた。

「俺がいるよ」

と言ってくれた。虚栄心がふっと軽くなった。

この後もずっと自傷行為をしていたのは、柊哉に気にかけて欲しかったから、だと思う。これをヤンデレというらしいが、私にはそんな言葉は似合わない。好意の欠片すらない。

ただそれとは別に柊哉に対して変な感情があった。私は柊哉が好きだった。

柊哉がそう思ってなくても、好きだった。


疲れきった心を回復する術はない。鎖は解けない。

ネトゲ、妄想だって楽しいけれど、癒しにはならない。 柊哉と共に過ごす時間だけが私の心を落ち着かせる術だった。


#

その日は強い雨が降っていた。

私は部屋の中で独りぽつんと座り現実逃避。

自分の中でどんどん膨張していった夢物語。気持ち悪いくらい欲望そのままで自分でも引いた。

二次元と出会ってから広い世界がもっとやたらと広くなって、自分を満たす為の一種の機能化した。

ふと、目覚まし時計が体を(つんざ)いた。

「もう5時?」

5時は”リスカタイム”。

観たいテレビ番組のないこの時間に設けた。

自分を痛めつけるこの時間が、大好きだった。 袖側のボタンを外すと見える、線状で楔のような傷が大好きだった。鉛筆立てに入った剃刀を、慣れた手付きで摘んだ。カバーを外して、左手首に当て、後ろに引く。ジンと痛みがきた。これを楽しみにしていた。切ったところを避けるように肉片が崩れていた。平行な傷口を軽く撫でると、昨日のソレから血が漏れだしたりもする。

リストカットをすると不思議と楽になる。多分それは、真紅の血を見て生きている事を実感できるからだ。

「 あれっ、ん?...」

でも何故だろうか。

いつもの快感が少ししかない挙げ句に急に虚しさが息を詰まらせた。

とくんいう心臓の音と共に流れ出す鮮血を眺めていた。急に怖く感じた。何をしているんだろう?

「 え、痛いっ!!」

膝が血と涙のせいでオレンジ色だ。

少しの吐き気に軽く口を抑えると、真っ赤なものが塗り広げられた。

「うわ..痛たたたっ...うっ...」

な、なんだこれは。

痛いのとは別で寂しさが募った。溢れ出る血液と反比例するかのように孤独感が吸い込まれていく。


なぜか今までのストレスが今更メーターを越したらしい。なんで?怖い.....。

何にも考えられない。


全ての感情が爆発して残ったのは、

「死にたい」

という卑屈な物だった。


啜り泣きは徐々に嗚咽に変わっていく。


何故こうなったかは分からないままだった。でも前のようにはなれないという確信が私をドン底まで突き落とした。



結局涙は止まる事無く溢れ出していた。泣きつかれて、変色した絨毯で寝てしまった。

重たい身体を起こし時計を見ると、既に5時間が過ぎていた。

「う...うう」

声も枯れて詰まった音しか出ない。最悪だ。

どことなく眩暈までする。涙の副作用か。

「つら...」

もう狂い始めてしまった。

学校のことは?ネトゲの続きは?

そんなことを考えて気分を変えようとしても無理だった。

死ぬ以外の考えは抹消されていて、それ以外の考えは驚くほどに出てこない。普段ならへらへらへらへらしている今の時間にだ。

なんで、なんで?

問いかけても問いかけても返事はない。

剃刀、ナイフ、カッター。目の前にある限りの刃物を出した。



徐ろにナイフを持ちざくざくと手首を切り刻んだ。くさび状に裂けた傷口から真っ赤なアクリル絵の具のようななものが溢れ出た。もう自分がよくわからなかった。

「痛ったああああああああっ!いやああああ!」

快感は0に近く、ただの痛みを感じさせる行為でしかなかった。

それでも我慢して皮膚を破いている。

馬鹿らしい。本当に自分なのか?

もう部屋は呻き声と鉄の香りしかない。

込み上げる吐き気を抑え次はカッターを手に取った。

「んっ.......... . 」


誰もいない部屋の中響き渡る涙声は私を我に返させた。最後まで気持ち悪い私。なぜ私に生まれたの?

「寂しい...」

形振り構わず二つ折りの携帯を取り出した。

連絡先は【柊哉】しかない。発信ボタン を連打して返事を待つ。

1コール....2コール......3コール。

「もしもし....... 」

また響いた声は心に刺さってもう抜けない。

数秒の沈黙が私の首を締めた。


「寂しいよ、辛いよ、もう死にたい....今まで、本当に本当にごめんなさい。こんな私を許して...」

伝えたい事がたくさんあって、走馬灯が走った。

幼稚園の果物狩り、小学校の修学旅行。中学校の体育祭や部活の思い出が脳を駆けている。

「はっ、響歌......」

ぶちっ.....ピーーー....。

体感で約2分の出来事だった。

電話が切れた。いや、切った。でも最後に何か柊哉が言った。

「知らねーよ。」かな。「あ、ばいばい。」

かな。どんな言葉でも大丈夫。最期に話したのが柊哉だということが重要だ。

最期に私は剃刀を手に取っていた。

縦に剃刀を置いて後ろに引こうとする。

やっぱり怖い。手が震える。呼吸できない。

でも、生きていても意味が無い。死なないと。

「ばい...ばい」

私の顔はもうぐちゃぐちゃで息もまばらだ。

もう意識は朦朧としていたその時だった。


ガンガンガンとなるうるさいノックの音、「響歌!開けて!」

と言う低い声が聞こえてきた。

重い身体を這うように動かし、玄関の鍵を開ける。

「 柊哉...?」

ドアの前には息を切らして俯いた柊哉がいた。

開けると、ドタドタと音を立てて部屋の中に入って来た。私が力なく倒れる....拍子に柊哉は私を優しく抱き締めた。ドキッとした。同時に血が溢れた。

「何考えてるんだよ、コレ何だよ。」

柊哉の息遣いが近い。近い....。

柊哉は私の左手首を優しく掴んだ。

色んな感情が、混ざって混ざって混ざる。

悲しい。嬉しい。そんなんじゃない。痛みや苦しみてすら感情になって脳髄を旅している。

涙が頬を次々に伝わる。

「どうした、何があった」

声が響いて空気に消えた。

「さ、寂しいの.....もう生きていけないもう、ずっと一人で.....もう耐えられなくってもう嫌だ....。」

自分で言っていることが気持ち悪くて嫌で鉛を飲んだ様に変な気分になった。

「大丈夫、大丈夫」

私の背中を優しくさすりながら、いつもの優しい口調でそう言ったが何処かに緊張が入っていた気がした。

「一人じゃないって、だからそれ、離して。」

柊哉は止めてくれた。剃刀を持とうとする手を握り締めて。でも私は死ぬしかない。こんな馬鹿げた生活何の意味もない、ないから。もう、辛い。

何とか奪い取ったナイフをしっかりと握り、耳の

下の太い血管に当てた。

「止めろ!止めろ!」


そして、渾身の力を込めて縦にナイフを引いた


「響歌あああ!」











ーあまり痛くはなかったな。



少し時間が経ったのだろう。

誰もいない広い海の中心に溺れていくように息が詰まる。

少しだけ波打つ心臓が虚しい。

もうすぐ。もうすぐ死ねる

いい所に行ける。

でも一つだけ言えてなかったね。柊哉。


ありがとう。


#

響歌は柊哉の通報により病院に運ばれた。

でも────

余りに出血量が多く「失血性ショック」で死んだ。

学校では存在感も無かったし、虐められていた響歌だったが死ぬとなると涙を流す人もいた。早すぎる死、あっという間すぎる死。突然すぎる死。



この日は響歌の葬式だった。生徒に興味のない先生は強制的にクラス全員を参加させた。虐めていた子は全員無表情。責任を感ずる面持ちだった。

酷く静かな空気はその場を動こうとはしない。

木魚の音や僧侶の声が反響し、頭を掻き乱していく。お願いだからもう、やめてくれ。



......響歌には両親が居なかった。

今更だが、説明する。響歌の父は三年前の夏、まだイジメにもあっていない時、残忍な連続殺人事件の犯人として指名手配された。勿論、そんな事はしていない。冤罪だった。

証拠に検察側の証言に────全て嘘。

父はメディアや世間の目に耐えられなかったのであろう。刑務所に入った数日後に、窓ガラスの破片で首を切った。

冤罪だと報道されたのは、そのすぐ後だった.....

母というもの、父が居なくなったことで狂ってしま

った。危険ドラックを使い、一発で事故を起こし死んだ。


正に悲劇の家族だった

響歌もたどってしまったのか。



不意に木魚の音が止まり、進行役が僕の事を呼んだ。出番が来た。

僕は父母の代わりに挨拶をするのだ。

現時点で響歌に一番近いのは僕。


一礼する。

そして僕は響歌への感謝の気持ち、寂しさを短くまとめた。2度目の礼をする時には、数人の目から涙が溢れていた。

最後のお見送りでは本当に響歌かわからない、ただの白い骨を担いだ。



家に戻った。僕の目からもひとつ涙が溢れた。暑い部屋では、涙はすぐ乾く。

責任や重圧は全て僕の元にあった。

人諸共殺す冷酷な視線があの響歌に捧げられていたなんて露知らずに楽しく過ごしてしまって...。

「何で気付けなかったんだろう」


大切な人を喪うのは辛酸を嘗めるようだ。

地味だってオタクだからって僕は響歌が良かった。

────会いたい。また響歌に会いたい。

何事もネガティブ。だけど笑うと可愛くて...。

その一瞬を見るためだけに努力してきた。

幼稚園の頃に「 結婚しようね」と言い合ったことを響歌は覚えていたのだろうか。お嫁さんになる!なんて確か言っていたけれど....。

小学生の運動会で転んだ時に、おまじないをかけてくれたことを覚えていたのだろうか。

中学校の頃バレーボール部で一緒に汗を流して、最後の大会で涙が止まらなくなったことも......

「後悔はしない。決まり。」

父母にバレぬようにキッチンに行き、果物ナイフを取り出した。

それを自分の部屋に持ち込み、目の前に置いて、深呼吸をした。ナイフは不思議な輝きを放ち、柊哉の目に吸い付いた。

「 大丈夫だよ。響歌にまた会えるんだから。」

ガクガク震える膝を静めて、ナイフを手にとった。

凶器を持った右手を胸に当てた。潮の味がした。

死ぬことを考えると、口の中が乾燥して鉄の匂いがする。

「響歌もこんくらい怖かったんだよね」

呼吸もままならない中覚悟を決めた。






勇気を出してしまった。いけないのに。

自分でも悲しむ人はいると知っていたのに。

ナイフを刺した。体からの抵抗が気持ち悪い。

じくじくと刺さるナイフに吐き気を覚えながら、柊哉は決まり悪げに目を逸らした。

溢れる赤い液体はYシャツを染めゆく。

感じた事のない痛みに身体は悲鳴をあげている。

あと20秒......10秒の辛抱.....。




くらっとした眩暈を通り越すとそこには何もなかった。赤でもなく白でもなく黒でもなく......。

痛みは消え果て浮遊感に襲われた。

脳内モルヒネが分泌された証拠だ。

遠い遠い所からサイレンの音が聞こえる....

きっと誰かが通報でもしたのだろう。

迷惑にならなければ良いのだが。


それにしろ、表現すらできない痛みだった。でも僕は響歌の痛みを知れたんだ。後悔はしていない。こんな事をして申し訳ない。でも....


────俺は弱いから... 。



展開が早くて情景も心情も未熟な表現の仕方で申し訳なかったです。

どうか次話も読んでいただけたなら嬉しいです。

もうちょい、明るくなりますから!笑

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