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最弱者として生きるモノ  作者: 白月楓
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鹿羽の実力

亡者との失楽園は簡単に言うと隔離されている孤島である。ここは世間一般でいう禁止区域。公にはなっていないが魔物という存在が多く潜んでいるのだ。


朝や昼にはあまり魔物はでてこない、しかし夜は別だ、どこに隠れているか知らないが異常な程攻撃的で恐ろしい風貌で襲ってくる。


ーーーーーーーーーー

「しっかし、ここどこだろ?屍喰鬼がでるって言ってたからユグレイ大陸……か?だけどこんなとこ見たことねぇんだよなぁ。」


しばらく歩きふと考えがあり足を止める。俺が思うにここはまともな場所でないことは確かだ。人っ子一人いないってのも少なからずおかしく感じる。屍喰鬼……と言っても無から生まれるものでないのは当たり前なのである。媒体があり、魔力があり、感情があり、それらが混ざりあって出来るのが屍喰鬼。それが肥大化すればするほど高位の魔物にもなるのだけれど。


「人がいない場所で……屍喰鬼の集団か……底無き道か亡者との失楽園……ってとこかな?ま、少なからず空からなら脱出できるのかね……。」


全く……厄介なところに棄てられたものだと呆れてしまう。俺は少しだけ準備運動をしたあとに苦笑しながら誰もいない空に向かってこう言った。


「つまらない、俺はまさしくつまらない世界を生きている。その中でも楽しみをみつけようとした俺を褒めてくれる奴はいないのかねぇ?……って、こんなところでつぶやいても意味ないか。侵食【Lv.3】進化【Lv.3】王と柱の因子【Lv.3】開放……ッ!」


開放と言った瞬間に場の空気は冷たく染まる。俺自身にまとわりつく黒い霧みたいなのもその要因だとは思うが……いかんせん開放すると頭と体が本気で痛くなる。それこそ俺が経験してない愉しみの一つ、死である。


「ま、死ぬことが愉しみとか……グゥ…ッ…情けねぇけど……」


そのまま俺は暗闇に意識を落としていった。


そして、俺を食べようとする輩の音で目が覚める。


「グガァァァ!」


屍喰鬼は死んでる人間の肉や生きてる人間の肉を好む。魔力がこもってればなんでも食べる、そう確か文集には載っていたはずだ。が、俺を食べようとする屍喰鬼は肘から先が黒く……未だにどんどん黒ずみが広がっていく。当たり前っていえば当たり前だけど、一応説明しておこうか。


俺の能力、侵食と言うのは……


Lv.1の段階でふれたものを侵すことができる。侵した場所は俺の支配下で簡単に動かせる。

続いてLv.2は侵食したものの中で一番強いものを顕現出来るというもの。これはすべてを、体中を侵食しなければ発動はしない。

そして現段階のLv.3、これが一番汎用的かな?寝ていても攻撃は通らずLv.1のように侵食できる。無意識でも敵意があれば発動するってこと。気配を消しても感情を消さなければこれは発動する。自分の意志で止めることももちろんできる。

他にも一応Lv.7まであるんだけれど……それはまた進んでからでもいいはず。


そんなこんなで屍喰鬼は残すところ侵食していない箇所は頭だけの状態。あ、ちなみに情報も読み取れる、そんな詳しくはないけれど。


「へぇ、アルト大陸の怨恨ねぇ……ってことは亡者との失楽園かな。後は脱出する手立てだけれど……いちち……まだ痛いなぁ、久々に封印を解くとこれだから嫌だ。」


能力さえ使えばあまり痛くはないはずなのにな、と思っていたがそう言えば進化と因子も開放したことに気づく。


「そりゃあ……気絶するわな……。仕方ねぇ、ここいらで感を取り戻すかな!」


連中に身を売ったせいで6年も飼い犬になった。自由全てを売ったのに捨てられた理由は2つ、もういらないし使い勝手も悪いこと。これは俺を連れ回すとその度に俺の欲求を満たすまで満足しなければならないから。これは四年くらいですべての大陸と名所や秘境を見て回ったから後は飼い犬だけなのだが。……まぁ、二つ目は恐ろしく回復は速いが侵食Lv.1では相手に触れられないと意味ないので壁とか貼られたら全く持って無意味なのである。(Lv.4なら気体や機械にも侵食できるのだけれどそれはまた今度)だから弱い烙印を貼られる、だから棄てられた。


「それじゃ、まずは因子を慣らすか……。絶王の抱擁……。」


そっと俺はいまだに悲鳴をあげている屍喰鬼にそっと抱きつく。すると抱きついた箇所から石化が始まる。それと共に屍喰鬼の悲鳴も弱々しくなっていく。侵食で一応頭以外をおおっていたとは言え絶王の抱擁は半端なく痛い。侵食自体の効果は自分の指令通りに動かすことができるもので痛みに関してはだいたい消えるが少しは残る。以前に人(強盗)に使った覚えがあるのだけれどその人は止めてくれ!と泣き叫んでいた。まあ殺しちゃったけど。それと俺自身も絶王の抱擁を体験したことはあるがあれは痛い、開放と同じぐらい痛い。


「あ、死んじゃった。ま、いっか、次々〜。ふんふん〜。」


鼻歌交じりにその場から離れてほかの魔物を探す。そしたらわんさかいた。


「えーい、焔王の咀嚼ぅー!」


口を大きくあけてがちんと音がするくらいに閉じる、すると見つけた屍喰鬼が弾け飛ぶ。


「雷王の健脚ー……」


光の速さ……ほぼ瞬間移動に近いスピードで屍喰鬼を蹴る。速さと威力は比例するらしい。蹴った部位だけがその場から消えてべちゃっと遠くの方で音がする。


「次は……氷王の結界!っと……そろそろ朝ってことは……屍喰鬼も居なくなるのか……」


−273.15 ℃で存在する世界を目の前に作り出し何もかも凍りつくして凛歩は呟く。


「……腕、落ちたなぁ。ここで鍛えるとすっかね。」


暫くは屍喰鬼狩りが主流になりそうだな……そんな思いを抱いたまま開放の疲れが完全にはとれていないこと、久々の能力行使による疲労で目をつむる。


半年後ーーー


「あー、そろそろ進化も混ぜてやるとしますかね。」


進化も説明させてもらおうか。進化とは簡単に言うと限界突破だな、その限界を超える、つまるところ死ぬほどの経験をすればするほど底力が出てくるし、勝てない相手の特性に合わせてその相手の苦手とする戦いを見破って実行できる程度に。


少し雑だけどこれくらいで説明はいいだろう。それではなぜ俺が『混ぜる』と言ったのか、それは俺の特性にある。


一つは超再生、超回復の上位版だな先程も言った通り俺は傷ついても0.1秒あれば脳みそと頭が分離さえしていなければすべてが元通りになる。1回脳みその一部が消し飛んだら記憶はどうなる?みたいな質問を連中から受けたが答えはそれさえも再生する、だ。ま、この能力のおかげでほぼ死ねないから進化では重宝している。


二つ目は因子、これは体を使う奴が多い。だから、だな。今の俺の身体能力じゃまともに使おうと思っても思うように動かないのは。が、因子にもいろいろある。欲王の強欲っていう技が。これは身体能力を3倍まで引き上げてその分体に負担がかかる代物だ。これを超再生で元に戻すことにより3倍のまま……とまでは行かないが2.5倍くらいには力がつく。まさに強欲だな。


「一日使うと次の日は筋肉痛、ってことは単純計算で15回か、1ヶ月に……。ここに来たのは四月だったか?……じゃあ3月までやるか……。」


えーっと……四月から半年が経って……後五ヶ月か。少し遠い目をしながらそう呟く。ちなみに木に×印をつけてるおかげで日の感覚は残っている。


「それじゃあ……強欲!……ッツウウ!」


痛さで気を失いそうになるがなんとか耐える。俺の強さに限界はない、限界なんて制限はいらない。そんな思いで踏ん張りこらえる。


「あれ?なんで俺鍛えてるんだっけ……。」


無意識に痛みで気絶して負けないためという結論が出てくる。それは奴らの実験台にされてたことで心に刻まれたのかもしれない。


「……ま、頑張るかな。」

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