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バタバタバタバタ・・・!
ッ!!
「ハァハァ…お、おはよう!理子」
「あ、彩音おはよう。どうしたの?息切らして…」
「セーーフ…」
全速力で走ったことでなんとか遅刻5分前に教室に入ることが出来、私はホッと一息ついていた。
誠一はそんな私を不機嫌そうな顔で見ている。私は誠一に勝利の笑みを浮かべた。
「…フッ。勝負あったな、誠一」
「廊下」
「…へ?」
「廊下走るな」
誠一の低い声に思わず後ずさったが、私は強気で言い返す。
「そんなことより約束だからね!私遅刻しなかったんだから、誠一、生徒会に立候補するよね?」
私の言葉に誠一は深くため息をついた。私は、誠一が諦めたかのように見えたんだけど違ったみたい。
誠一は読んでいた本を閉じて、私の方を向き直った。
「俺は、『一人で起きて朝食作って、遅刻しなかったら』と言ったはずだが?」
「何が…?だから出来たじゃない…」
「…朝食は?」
ギク…
それをつっこまれるとどうしようもない…だって寝坊したから作ってもいなければ食べてもないもん。
でも、食べたか食べてないかなんて誠一にわかるはずないんだから、ここは誤魔化して…
「…ちゃんと…やったよ」
「きちんと自分で作って食べたんだな?」
「…だから…ちゃんと……」
「ちゃんと?」
「…」
「彩音」
「…ごめんなさい」
あー!!もう!!私のバカ!!誠一の威圧に耐えられないなんて…
「だいたい時間ギリギリに登校してきたのに朝食を食べてるわけないだろ。そういうことでこの話はナシだな」
「ちょ…ちょっと待ってよ!朝食なんて食べてなくても遅刻しなかったんだから…」
「わかってないな。なら教えてやろう。朝食というものは一日の基本になるもので食べたときと食べなかったときでは」
「あーはいはい…わかりました…」
「まだ話は終わって…」
「あ、チャイム鳴った。席つかなきゃー」
「……」
誠一はいつも以上の無愛想な顔をして私を睨んでいた。私は作戦が早くも失敗してしまったので、もう一度頭をひねっていた。
このままじゃ誠一は立候補してくれない。
作戦変更…!誠一をなんとしても生徒会に入れるんだ!私、諦めない~!
授業が終わって私が教科書をしまっていると、理子が近づいてきた。今日もかわいい理子の顔は赤く染まっている。ということは…
「彩音…さっきの誠一くんとの話だけど…」
「あ、聞いてた?」
「うん…聞こえてた…生徒会にってどういうこと?」
「あー。理子にとっては悪い話じゃないと思うんだけど♪誠一に生徒会長やってほしくて」
そう言ったのと同時に理子の顔がぱぁっと明るくなる。
「…彩音もそう思うの?やっぱり適任だよねっ!頭もいいし責任感はあるし!」
「あ…いや…そういうわけじゃないんだけど…でも本人は立候補するの嫌がってるし」
「じゃあ推薦は?」
作戦を練っていた私は、理子のにっこり顔に一瞬手が止まる。
「それだぁぁ!!!」
私の叫び声が教室中に響いた。
そのあと誠一に怒られたのは言うまでもない…