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学校から家までの帰り道は、そんなに長くはない。
けど、今日の私はいつも以上に誠一と帰るこの道を、長く感じていた。
「彩音。帰りが遅くなる。早く歩け」
「………」
「彩音。明日の朝食の材料を買って行くか」
「………」
「彩音」
「もういい加減にして!!!」
私は下を向いたまま大声を出した。誠一は表情を変えず、いつも通り私を見ている。
「私だって子供じゃないの!朝だって起きれるし、朝食だって作れる…もう誠一に世話してもらわなくても大丈夫だから!」
「……だから?」
「だから…生徒会やれば?」
風が強く吹いているだけで、私たちの周りには誰もいなかった。もう陽が傾いていて私たちの影が伸びている。
「……ならば、一人で起きてみるか?」
「………へ…?」
「一人で起きて、朝食作って遅刻せずに登校してみろ」
予想外の誠一の言葉に、私は言葉を失っていた。まさか、誠一からそんなこと言われるなんて…いつもなら絶対許してくれないのに。
黙っている私を見て、誠一が口を開いた。
「無理なのか?」
「えっ!?む…無理じゃないよ!!」
「じゃあ明日は一人でやってみろ。もし出来なかったらもうこの話はナシだ」
誠一が私に背を向けて歩き出す。誠一らしくない誠一の言葉に、私はあることをひらめいた。
誠一が生徒会に入れば私にかまってるヒマはなくなるし、理子は副会長になって誠一と仲良くなりたいみたいだし…もしこの二人が付き合うなんてことになれば、それこそ誠一は私の成績が落ちようが、どこでなにしようが気にしなくなる。
つまり…私は自由、理子は幸せ……………一石二鳥?…なるほど。
私は誠一の背中に向けて指さした。
「じゃあ!もし出来たら!生徒会長に立候補してよ!!」
「…出来たら、な」
誠一は背を向けたまま答えた。
私は夕日に向かって握ったこぶしを突き出した。
よし。
この機会に誠一を生徒会に放り込んで、理子とくっつけて、長年奪われ続けてきた私の自由を手に入れてやる!!!(…ちょっと大袈裟か?)
名付けて!
『理子と私一石二鳥大作戦!』
……ダサいなぁ。
翌朝。
ピピピピピピp・・・
…どこかで目覚まし時計が鳴ってる…早く止めてよ、うるさいなぁ……あ、私の時計か。
私は目覚まし時計を止めて、また布団にもぐる。
まだ誠一来てないし、大丈夫だよね…うん。誠一が起こしに…
……………
「来ないんだったッ!!!!」
私はあわててベッドから出て支度をする。時計の針は、もう朝ごはんを食べてたら間に合わない時刻を指していた。
遅刻をしたらアウト。青ざめた私はとにかく家を飛び出した。
「負けるかぁ!絶対間にあってやるぅぅ!!」