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七色の約束  作者: 琥珀
第1章
3/7

 授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響き、私は背伸びする。次は待ちに待った昼休みなので、誠一に作ってもらったお弁当をカバンから出そうとしていると…


「ねぇ…彩音はどう思う?」

「ん?何が?」


 気がつくと理子がお弁当と1枚のプリントを持って立っていた。


「彩音ったら、授業聞いてなかったのね?」

「あはは…半分寝てた」


 苦笑いしている私に、理子は持っていたプリントを見せた。


「生徒会の選挙だよ。…私、副会長に立候補しようと思って」


 そのプリントには『生徒会役員選挙!』と大きく書いてあった。内容によると、生徒会役員になるには立候補でも推薦でもいいらしい。


「理子はしっかりしてるし、いいんじゃない?ピッタリだよ」

「そうかな…?そう言ってもらうと嬉しい…」

「でも、どうせなら生徒会長に立候補すればいいのに」


 私のその言葉に、理子は顔を真っ赤にして固まってしまう。この反応ってことは…


「あの…誠一くんは…その、生徒会長に立候補しないのかな…?」

「誠一?」

「俺が何?」

「きゃぁっ!!」

「うわっ!ビックリした~…急に現れないでよ、誠一」


 誠一は心外だと言わんばかりの顔をしている。一方理子は、真っ赤な顔のまま私たちに背をむけた。

 そんな理子の後ろ姿を見て、私はさっきの言葉を思い出し誠一に聞いてみた。


「誠一は生徒会の役員に立候補しないの?」

「……ああ」

「ふーん。バカみたいに真面目な誠一なら真っ先にやりたがるかと思った」

「…バカみたい、は余計だ。それに興味がないわけではない」


 誠一のこの言葉に、理子がピクリと反応し振り返る。


「じゃあどうしてなの…?誠一くんならきっと誰より適任だと思うんだけど…」

「…忙しいからだ。それより昼食なんだが、俺は用があるから食べててくれ」

「はいは~い。了解っす」


 誠一はさっさと教室を出て行った。理子は名残惜しそうに後ろ姿を見ていたが、見えなくなると向き直りお弁当を取り出した。

 いつからか、教室では私と理子と誠一の3人で過ごすことが当たり前のようになっている。私は不満だったけど、理子が嬉しそうだから文句は言わないようにしているけど…


「そういえばさぁ…理子はなんで誠一が好きなの?」

「…えっ……」


 突然の私の言葉に、理子は箸でつかんでいた唐揚げを落としてしまう。顔を真っ赤にする理子がかわいくて、ますますわからなくなってくる。なんで誠一なの?


「だってさ、無愛想で生真面目で、冗談なんか通じない石頭で融通は利かないし」

「そんなことない!誠一くんは優しいよ!」


 いつも大人しいな理子が、声を張る。私はびっくりして、静止してしまった。


「…私ね、入学式のとき、誠一くんに助けてもらったの」

「誠一に?」

「うん…男の人に囲まれて、どうしていいかわからなくなってるときに間に入ってくれて…」

「理子かわいいもんなぁ…私が男ならほっとかないもん」

「もう…彩音ったら」


 それにしても…誠一らしい。昔から曲がったことが大嫌いだから…


「あはは、なんか想像できるなぁ。誠一のやつ、『嫌がっているのがわからないのか。なら教えてやろう』とか言ったんじゃないの?」

「……彩音、すごいね…その通り言ってたよ」


 まぁ長年、幼馴染みやってるし、毎日そんな感じで怒られてるから…

 理子は遠くを見ながら言葉を続けた。


「私、何度か男の人に囲まれることはあったけど、男の人に助けてもらったのは初めてだったから…」

「そうなの?」

「うん…誠一くんみたいな人、初めてだし……知れば知るほど惹かれてくの…」


 そう言ってほほ笑んだ理子は、とっても大人びていて綺麗だった。



 ふと不思議な感覚に陥った。

 小さいころから知っている男のことを語られてるはずなのに、全く別の男の話のような気がしていた。


 


 

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