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七色の約束  作者: 琥珀
第1章
2/7


「おっはよ。彩音」

理子(りこ)!おはよ~」


 学校の門のところで声をかけてきたのは私の大親友の天野(あまの)理子。かわいくて頭はいいし優しい、とにかく完璧な女の子。校内はもちろん、他校にもファンが多いらしい。

 今日もサラサラのロングヘアをなびかせて歩く姿は、綺麗すぎて女の私でもほれぼれする。


「あ…誠一くんも、おはよう」

「おはよう。天野」


 にっこりとほほ笑む理子とは対照的に、誠一は表情を変えることなくあいさつする。…無愛想だな、コイツ。


「相変わらずクールだね、誠一くん」


 なるほどぉ。そういう見方もあるんだねぇ。

 私がニヤニヤして2人を見ていると、視線に気づいた理子の顔が赤くなっていく。そんな顔がかわいくて、ついお節介したくなる。

 理子は(どこがいいんだか)誠一に惹かれているらしいから。


「あ~…私、職員室に用があったんだった。先に教室行ってて」

「えっ…!彩音!?」


 私はそれだけ言ってその場から走って離れた。理子は急に二人っきりにされて、どうしていいかわからず固まっている。


「彩音ったら…急に、ど…どうしたんだろうね…」

「…成績でも悪くて先生に呼ばれてるんだろ。気にせずに先行くか、天野」

「…うん!」



 気を利かせて2人から離れたものの、私はどこに行ったらいいかわからなくなっていた。

 職員室に用があるのは2人きりにさせるウソだから、今教室に行ったらおかしいし…かといって時間を適度につぶせる場所なんて…


「お!彩音じゃん?おっす」

「おっす!雄斗(ゆうと)


 私が考えながらフラフラ廊下を歩いていたら、日向(ひゅうが)雄斗に会った。雄斗は同い年で、去年同じクラスだったのだ。

 明るくてクラスのムードメーカー的存在。常に軽いノリで本音がなかなか見えないけど、実は面倒見がよく頼りになる。


「こんなとこで何してんだよ。教室あっちだろ?」

「雄斗だって。隣のクラスじゃん」

「俺は~…サボり」


 雄斗は悪びれる様子もなく、ニッコリ笑って上を指さす。私は指の先を見上げる。


「上…?」

「そ。屋上。一緒に来るか?」

「え、屋上?立ち入り禁止でしょ?いいの?」

「ああ。ただし同罪ってことで内緒だからな!」

「へぇ~行きた…」


 …。

 私の心がもう授業をさぼって屋上に行く気満々になったところで、後ろから腕をつかまれた。一瞬にして嫌な空気が流れたのを、全身で感じた。


「…行かないよな?彩音」

「………誠一」


 苦笑いしながら振り向くと、そこにいたのは…怖い顔した誠一。予想通り…というか、ちょっとピンチかも?


「彩音。職員室に用があるというのは嘘だったのか」

「あ…うん、まあね…」

「……だいたい彩音は行動が軽率すぎるんだ。もう少し自分の言動に責任を持って、日々の生活を見直」

「あー!わかった!ごめん!」


 誠一の説教は長くなると周りを気にせず続けてしまうから、早めに私が謝るしかない。私が嫌々ながらも誠一に従ってる理由の一つだ。


「雄斗も、校則違反なことに彩音を誘わないでくれるか」

「お~怖。あいかわらず彩音の保護者なのかよ。ご苦労さん」


 2人の間に沈黙が流れる…

 この2人って、生真面目と自由奔放だから何かと意見がぶつかってしまうらしい。その度に火花を散らしていたので、今ではすっかり犬猿の仲。


「授業が始まってしまう。行くぞ。彩音」

「またね、彩音」

「あはは…またね、雄斗」


 私は誠一に腕を引っ張られながら教室に戻ることに。

 いつもこうだ。私がなにか規律を乱すようなことがあると、すぐに誠一が止めに来る。私の親以上に、先生以上に、私に干渉して世話を焼く。

 確かに、誠一は間違ったことは言わないし、正しい道に私を戻そうとしてくれてる。だけど、私の意見なんて一切聞き入れてくれないから腹が立つ。


「…ねぇ誠一。私、屋上行ってみたいなぁ」

「立ち入り禁止の意味を彩音は知らないのか。なら教えてやろう」

「いえ。わかります。ごめんなさい」

 




 

  


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