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5.担任の心境
職員室のざわめきが、やけに遠い。
「かなり無理をしている様子です」
その言葉が、頭の中で繰り返される。
新田は書類を閉じる。
椅子にもたれ、息を吐く。
「相談、か……」
担任である自分ではなく、数学の楊先生に。
その事実が、少しだけ胸を刺す。
信頼されていないのではない。
信頼される土台を、作れていなかったのだ。
数分後、新田が楊の机に行く。
「さっきの話ですが」
「はい」
「本人には、どこまで聞いていますか」
ここで新田は“詳細”を求めすぎないのが大事。
「無理をしている、というところまでです。
今はそれ以上、掘らないほうがいいかと」
新田はうなずく。
「分かりました。……私からも、一度きちんと時間を取ります」
職員室で新田は1人になってから。
確かに保健室へ行くことは何度かあった。
だが、体調不良だと聞いていた。
自習時間が減った?
成績は維持している。
――それでも「しんどい」のか。
ここで担任は初めて気づく。
「問題がない=大丈夫」ではない。
「明日、どう声をかける?」




