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4.裏側で
雨は昼から止む気配がなかった。
職員室ーー
新田は提出物を整理していた。
楊は、授業中の声より低めに新田に話しかける。
「今、話いいですか?」
新田は顔をあげる。
「どう、しました?」
楊はまっすぐに言う。
「先生のクラスの天宮さん、かなりきつそうです。」
「……どういうことですか」
「消えたいって言いました」
空気が止まる。
遠くでコピー機が鳴る。
新田はゆっくり座り直す。
「……そんな様子は」
「ないですよね」
責める声ではない。
「私も今日まで確信はなかった。でも、あれは危ない」
新田は資料を見下ろす。
挑戦校の赤字のD判定。
「私は、あの子を前向きだと……1年と2年の資料を見る限り優等生にしか…」
「前を向いてる顔と、追い詰められてる顔は似てます」
雨が強くなる。
新田の声が震える。
「……気づけなかった」
初めての本音。
楊は静かに言う。
「今、気づいた。遅くない」
「まず、負担を減らす。挑戦校の話は一旦置く。保護者への連絡は段階を踏む」
新田の声が震える。
「希死念慮がある以上、受験は二番目です」
新田は強く頷く。
「……守ります」
窓に張りついた水滴が、ゆっくり形を変えながら落ちていく。




