11.カウンセリング後
職員室の隅の小さな会議机に、新田と星野が向かい合う。
「天宮の件で、少しお話を伺いたいのですが」
新田は静かに切り出す。声に焦りはないが、慎重な調子だ。
「もちろんです。カウンセリングで話した内容のすべてはお伝えできませんが、学校生活に関わる必要な情報は共有できます」
星野は柔らかく答える。声も表情も落ち着いている。
「最近、授業や提出物は問題ありませんが、本人は家庭や過去の出来事で負担を感じています」
星野は丁寧に言葉を選びながら続ける。
「無理に話させる必要はありません。本人が準備できた時だけ、支援を受けられる環境を作ってください」
新田はうなずく。
「授業中や自習中に、突っ伏すことがあります。保健室への移動や休憩の許可も、必要に応じてでよいでしょうか?また、近くに夏休みに入り三者面談を予定しています。この件の対応についてアドバイスをください。」
「はい。大切なのは、本人の自主性を尊重することです。もちろん三者面談でも、本人が話したくないことは避けた方が良いでしょう。」
星野はメモを閉じ、短く付け加える。
「もし、家庭からのプレッシャーやストレスで学校での行動に変化があれば、早めに共有してください」
新田は深く息をつき、机の上の資料に目を落とす。
心配は消えない。けれど、今できることは見守ることだと理解している。
「ありがとうございます。本人のペースを大切に、無理のないように見守ります」
新田の言葉に、星野は小さく微笑む。
深夜。
私は母の寝静まった頃、洗面台の下で蹲っていた。
また、今日の夜も母に色々と責められた。
どうしようもなく、しんどい時はここに逃げる。
今日の放課後、スクールカウンセラーの星野先生と話をした。
とても、優しそうで穏やかそうな先生に見えた。
今まで耐えて耐えて、話すまいと思ってたことも自然と口から出ていた。
これからのこと、色々と不安。
だけど、大丈夫かもしれない…そう思ってみたい。




