気が付かなければ問題はない。
まずい、ストックがなくなった。
主人公たちは、笑顔に。作者は、瀕死に。
「わああ…!」
「あんまキョロキョロしてると迷子になるぞ。」
裏路地から1時間半。途中途中で休憩を入れながらも、なんとか街が見えてきた。
(あ、そういえばアイツらに待ち伏せされてるんだったけ。もういないよな…?)
色々な出来事が起きすぎて、完全に忘れていた。時間も経っているので、諦めて帰っていることを願う。
「お貴族サマ、ちょっと遠回りしていいか?」
「?ええ、もちろん。」
少し心配なので、回り道をすることにした。
いつの間にか、お貴族様とも打ち解けてきた。意外にも根性があり、長距離歩いても、文句一つ言わなかった。辛そうではあったが。
「そういえば、あなたのお名前はなんと申しますの?」
「ああ。俺はカルロだ。」
お貴族様に名前を教えてもいいのか少し迷ったが、大丈夫だろう。こいつは理不尽に罰したりなどはしないと思った。
(というか、すぐ別れるのになんで仲良くなってんだ。俺)
今日遊んだら、もう一生会うことのない人間だ。たまに思い出して、数少ない友人に自慢するくらいだろう。
(まあ、いいか。考え込んでも仕方ない。)
街の入り口についた。
周りをよく見たが、アイツらはいなかった。
「よし、ついたな。」
「…ええ。」
感動しているのか、空返事が返ってきた。
「ここが俺たち、平民が暮らす街。『マルフィリア』だ。」
「この街は、ここらで1番大きい都市とも言える街だ。出店や劇場。飲食店や鍛冶屋なんかは大体揃ってる。」
「へええ、すごいわね!」
平民なら誰もが知っている事実だが、こうも喜ばれると気分がいい。
「ああ。そして遊ぶにはうってつけだ。」
「遊ぶ?」
「そうだ。」
ニヤリと笑い、彼女に言う。
「肉汁たっぷりの肉串、香りを嗅ぐだけ腹が減るパン。他にも甘い物から辛い物まで多種多様だ。」
「わあああ!!食べたいわ!私も食べたい!」
(…こう見ると、お貴族様もただの子供だな。いや、彼女が特殊なだけか…?)
「俺のおすすめは、肉串だ。隣の領から仕入れた肉質のいい物使っているらしい。あれは食べないと、人生10年分損するぞ。」
「食べるわ!どこにあるのかしら!!」
「まあ、そうがっつくなって。確か、この道を曲がってすぐだ。」
「じゃあ、いくか?」
「ええ!早くいきましょう。」
つい5分前まで疲労困憊のような顔をしていたのに、今は嘘のようにニコニコしている。
(単純だな…食べ物を餌にしたら簡単に誘拐されそうだ。)
早く早く、と急かされ、道を進む。
昼時という事もあってか、人が多かった。彼女が悪目立ちしないか、心配だったが、杞憂だったようだ。むしろ、食いしん坊の子供として馴染んでいるまである。
「あ、そういえばお貴族サマ。お金持ってんのか?」
「えっ?…あ、持っていませんわ……」
笑顔が一転して、この世の終わりの様な表情になっている。
(だろうなぁ。)
貴族はお金を持ち歩かず、後払いで家に付けると聞いたことがある。むしろお金の存在を知っていただけマシかなのかもしれない。
「ったく。今回は俺が払ってやるよ。」
「いいのですか!?」
「ああ。代わりにしっかり味わえよ。」
「もちろんですわ。」
今晩の食事が少し貧相になるが、構わない。どうせ、父は気づかないだろう。
(…まあ、俺も肉串食べたいし。)
そんな話をしていたら、店に着いたようだ。
「ほら、ここだ。この肉串が大好きなんだよ。」
「香ばしい香りで美味しそうですわ!」
「そうだろ、そうだろ。」
「おばちゃーん!肉串ふたつー!」
「あいよ!銅貨4枚だよ!」
「はーい。」
銅貨4枚を手渡し、焼きたての肉串を2本貰った。
「ほら、熱いからゆっくり食べろよ。」
そう言って彼女に手渡す。目をキラキラさせて喜んだ。
「ありがとうございますわ!」
始めはどうやって食べるのか悩んでいたが、周りを見て本人も理解したようだ。思い切ってかぶりついていた。
「んん〜〜!!」
同じように食べているはずなのに、どこか品があった。やはり、貴族なんだなぁと改めて思う。
(俺も食べるか。)
熱々の肉串をがぶりと齧った。うまい。
そこからは夢中で食べ進める。そこそこ大きい肉串ではあるが、ぺろりと平らげてしまった。
「はぁ〜!美味しかったわ…」
「だろ?あそこの肉串はめちゃくちゃ美味いんだよ。」
「ええ、最高だったわ。」
お互いにゆっくりと料理を堪能し、満足していた。
「あっ!おい、見つけたぞ!!」
同じ年代の子供が俺を指差して叫んだ。おそらくさっき殴った奴の仲間だろう。
(まずい、まだ諦めてなかったのか。)
肉の幸せに浸っていたところを、一気に現実に引き戻される。
「なあ、一旦逃げるぞ。」
「うん?」
彼女の手を取り、全速力で走る。状況がわかっていないのか、「え?」や「まって、まって!!」と聞こえるが、無視して進み続けた。
街を走り回り、振り切ったとこで建物の影に入った。
「はあ、はあ、」
「は、速いですわ……」
(ここまで来たら、流石に撒いたはず…)
今日だけで3度の逃走劇により、足が限界を迎えた。ドサッと、地面に座り込む。
ふと、彼女の顔を見上げた。
「っぷ、シア、顔が泥だらけだぞ。」
「っふふふ、カルロだって、髪に葉っぱが。」
2人でお互いのボロボロの姿を心ゆくまで笑い合った。
夕日が暖かく俺たちを照らしていた。
「なあ、またあそぼーぜ。」
「ええ。絶対よ。」
次の更新は本日の19:30です!!
そろそろ、アナスタシア(シア)にも焦点を当てなければ…!




