第14話 譲り合えばすぐ出れるだろうに…
シアの首にナイフを突きつけ、会場に火をつけた。そのおかげで、会場は阿鼻叫喚と化し警備の注意も俺に傾く。
「来るな!!」
近づこうとしてくる男達に威嚇をしつつ、ゆっくりエルネたちがいる方向から離れていく。
ある程度離れたところでシアが叫んだ。
「きゃあああ」
「うるせぇ!しずかにしろ!!」
あらかじめ彼女が叫んだら逃げてくれと言ってある。シアと俺のセリフにより、スタッフルームからそっとエルネが顔を出した。
彼が周囲をよく確認し、素早く従業員用出口に向かって走った。
近くのワインを警備員に投げて、注意を引き続ける。
「このガキ!!」
「はっ、近づいたらこいつが死ぬぞ」
彼が扉へ辿り着き、すぐに他の子供が扉の元へ向かう。
全員がエルネに合流したところで扉から外へ出ていった。
誰も脱走に気が付かず、1人も追っていかない。全て見届け、安堵する。
(よかった…あとは俺達だけだ。)
ちら、と正面の出入り口を見る。客がごった返していて、スタッフも混乱していた。
警備員に気づかれないよう小声で話す。
「シア行けるか?」
「もちろん。」
力強い返事が返ってきた。
彼女の腕を掴み、正面出口に向かって走り出す。
俺の急な行動に戸惑って相手も対応が遅れる。
「来るな!!来たらこいつを殺す!!!」
すぐに正面玄関に辿り着いた。そこは火事から逃げようと客が押し合っている。
「ちょっと!どきなさい!!」
「やめろ!!俺が先に逃げるんだ!!」
(醜いな…譲り合えばすぐ出られるだろうに。)
客は逃げることに精一杯でこちらに気づいていなかった。
ナイフを隠し、急いで着替える。薄汚い平民の服を脱ぎ、スタッフ用のスーツを着た。
「逃げるぞ。しっかり手、捕まってろよ」
「当たり前よ!」
「待て!!逃げるな!!」
(チッ、しつこいな。)
後ろから警備員が追いついてきた。
急いで人混みに紛れる。相手も逃さんと追ってくるが、客が邪魔で思うように進んでいない。俺たちは子供だからか、人と人の隙間を簡単に抜けられる。
周りも俺の存在には気づかず、我先にと逃げようと踠いている。
人混みを抜けると外に出た。
(やっと…やっとだ…!!)
空はまだ夜が完全に明けてはおらず、薄紫のような色をしている。
「待て!!」
先ほどの警備員が人をなんとか退かし、追いついてきた。
「2人とも、こっち!」
エルネが小道から顔を出して、手招きをする。どうやら待っていてくれたらしい。
シアの手を引き、再び走り出す。
そのまま複雑な道を進んだ。
壁を登り、穴を通り抜け、走って走って走った。始めは警備員も追ってきたが見失ったらしい。もう当分足音を聞いていない。
随分と長く走り、足がガクガクと笑っている。
「っ、し…しぬ……」
「おれも…今、生きてるのか…?」
周囲に人がいない場所まで走ったところで、3人で地面に倒れ込んだ。
シアは綺麗だったドレスがボロボロになっている。エルネは髪がボサボサで、頭に葉っぱをつけている。けれど2人とも血を流したり、大きな傷を負ったりしていなかった。
(よか、った…)
大切な友人達は無事らしい。その事実に体の力が抜けていく。いろいろな感情が決壊したように溢れてきた。
「カルロ泣いてる?」
「うるせえ」
顔を腕で拭い、意地を張る。エルネもエルネで目に涙が溜まっている。
泣いた泣いてないと言い合っていたら、シアが後ろから俺らに抱きついてきた。
「よかった、よかったよ…!!」
そう言って泣き出した。
(結局、全員泣いてんじゃねえか。)
その後は3人でぐしゃぐしゃになりながら泣きまくった。
再び気持ちが落ち着く頃には、全員泥だらけで笑い合った。




