第13話 意志の強い凛々しい姿
部屋を進み、出口を探していく。
「カルロ、こっち。」
エルネが廊下の扉を開けて指を刺した。そこには煌びやかな会場で着飾った人間達がカジノを楽しんでいた。
(あった…!)
会場の奥、開かれた扉から外の景色が見えた。
そこが出口で間違いないだろう。
(待て、あそこは客のための出口だ。他はないのか?)
裏カジノで、客用の出口しかないはずがない。緊急用や従業員用があるはずだ。
「みんな呼んでくる?」
「いや、他の出口を探したい。」
「あ!確かに」
部屋を片っ端からひっくり返し、探し回る。しかし、いくら探しても見つからない。
「カルロ、そっちはあった?」
「ないな。お前は?」
「こっちもなし。」
ふと、カジノ会場を見ると奥の客用出入り口とは違う、小さい扉が近くにあった。
「まさか、あれか?」
「え、何?」
「ここからすぐ横、見てみろ」
「あ。」
そこは会場の中心とはいえなくとも、そこそこ人の目がある場所にある。走って14人全員が逃げきることは難しいだろう。
「…まあ、一旦戻ろう。」
「だな」
駆け足で地下室に戻り、待機している子を呼びに行く。
「あ、いた!カルロ達は無事?」
「ああ。シア、お前のとこは?」
「大丈夫、何人か軽度の火傷だけ。手当はしてあるわ」
「ありがとう。助かった」
シアと途中で合流し、情報交換をする。あちらに大きな問題はなく、無事で安心した。
「出口があった。案内するから着いてきてくれ」
「わかったわ。」
先ほどの部屋に戻る。
(さて、どうするか…)
地下室を脱出することに全力をかけ過ぎて、ここから先の作戦は勢いでいこうと思っていた。
しかし、想定よりもこのカジノが大きく会場に見える用心棒の人数が多い。このまま勢いで行っても半分以上が捕まるだけだろう。
「俺、これからの作戦考えてないんだ。」
「分かる。俺も牢屋からでることばっか考えてた」
「…走って突っ切るか?」
「結構無謀ね。」
「だよなぁ」
(まあ、一応手がないわけでもないが…)
部屋を移動している途中に、ドレスを見つけた。おそらく客の服が汚れた時の貸出用だろう。
ドレスをシアに着てもらい、俺が人質に取るような形で会場に現れ、注意を惹きつける。その間にみんなを近くの小さい出口から逃す。
だいぶ杜撰な計画だが、外に出れさえすれば街で散々遊んだ俺たちにそうそう追いつけはしない。
(けどシアに人質を、か…)
人質役は演技だとバレてしまえば殺されてしまう可能性もある。それにシアは貴族だ。上手く正体を明かせれれば、彼女だけは助かるかもしれない。
もし彼女に人質を頼んで死んでしまったら、俺はシアの未来を奪ったことになるんだろうか。
ぐるぐると嫌な考えが頭を回る。今までは死のリスクを分散していた。しかし、今回はそれができない。かと言って他の案も思いつかない。
「ねえ?カルロ。何かあるんじゃないの?」
シアが焦りで佇んでいる俺に話しかけてきた。
「っ、いや。」
(どうしたら?俺は正直に話すべきか?それとも別の案を…)
「カルロ、言って。」
「…ああ」
彼女の勢いに押されてしまい、黙っていることができなかった。
ドレスを渡し、作戦の内容を説明する。
「──こうすれば逃げれる。ただ…」
「りょーかい。少し待ってて、着てくるわ」
あまりにも軽く言われてしまい、少し腹が立った。
(今、俺はみんなのために命の危険を侵してくれと言ったんだぞ?)
「でもお前は貴族だろ。もっと安全に生き残る道があるはずだ。断ったって、」
「じゃあ私に見捨てろって言うの?」
「そ、れは…」
「行ってくるね。すぐ戻ってくるわ」
そう残して足早に彼女は行ってしまった。
絶対に引かないと言われたようだった。いつもの無邪気な姿と違い、意志の強く凛々しい姿に、俺は何も言えなかった。
少し時間が経ってからドレスを着たシアが戻ってきた。
「着てきたわ!」
「……本当にいいのか?」
「しつこいわよ!私は良いって言ってるじゃない」
「…わかった。絶対へまするなよ。」
「当たり前よ?」
入念に作戦を立て、話し合った。エルネとも共有し、彼には俺たちが注意を引いている間に他の子を引き連れて逃げ出してもらう。
「よし。これで全員生き残れそうね!」
「だな。」
「カルロ、シア気をつけてね」
「エルネもよ!」
みんなに話を通し、逃げる算段をつけた。
「行くか。」
「ええ」
「気をつけて!あとで合流するよ」
エルネに見送られつつ、震える手を握りしめて会場に出た。
顔を布で隠し、シアの首にナイフを突きつける。
大きく息を吸い、腹から声を出す。
「動いたらこの女殺すぞ!!」
そのまま部屋から盗んだ酒を会場の隅にかけ、近くのキャンドルを投げつける。一気に炎が上がり、燃え広がった。
賑やかだった会場が一瞬で静かになり、突如悲鳴が上がった。
「きゃあああ」
「人質がいるわ!?」
「おい!そこをどけ!!俺が先に逃げるんだぁ!!」
その場は一瞬で理性を失った。恐怖で腰を抜かしている者、我先にと逃げ出す者と様々だ。警備員も視線がこちらに来ていて、出てきた扉には注意がいっていない。
(良かった…想定通りだ。)
ファイヤァァァ!!




