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第12話 少し可哀想、…ではないか。

階段先の見張りをしっかりと拘束し、無造作に床に転がす。

「んー!んん!!」


「俺らもこうだったのか。」

「そうね…」

自分が哀れな目で見られていると気がついたのか、男達の顔が真っ赤になっていく。


(少し可哀想、…ではないか。)

一瞬忘れかけたが、俺たちは今、こいつらに誘拐されている側だ。普通なら同情するどころか罵倒しながら蹴りつけるレベルだ。



あまり道草を食っている時間もないのでその場を後にする。

「よし、じゃあ最後の作戦に移るか」

「りょーかい」

地下には光源の為に松明が至る所にかけられている。それらを全員で協力し、牢から階段まで根こそぎ奪っていく。


みんなで作業していると、シアが話しかけてきた。

「カルロ、こっちも使えないかしら?」

「お、いいの見つけたな」

彼女が指す先には木製のテーブルや椅子があった。おそらく見張りが休憩のために使っていたのであろう。

少しもったいないが、解体し木片にしてから運び出す。途中で、替えの薪と縄もあったので拝借しておく。


(足りるかは賭けだったが、大丈夫そうだな。)

集めた大量の資材を階段上の隅に積み重ねていく。


「カルロー!!これ使えそう」

「ん?」

エルネに呼ばれて行くと、そこには壁が崩れて水が流れていた。老朽化によりヒビが入って近くの水道と繋がったのだろう。これのおかげでこの後の作戦の成功率が大きく上がった。

(無ければ掘ろうと思っていたが、良かったな。)

「最高だ。」

「わかる。俺すごすぎる」


水差しを置き、溜めていく。

「きったな…」

不純物を多く含んでいるせいか水は濃い緑色をしている。どこか悪臭もする。

しかし、脱出のためにはやらないといけなかった。覚悟を決める時が来たらしい。勢いよく鼻をつまみ、目をキツく閉じた。


バッシャーン

「う、、」


水を頭から被ったことで、全身が水浸しになる。気分は最悪だが、仕方がない。死ぬよりはマシだ。


ただ俺だけなのは癪なので、仲間をさっさと作ることにした。

「エルネ!ちょっとこっち来い」

「んー?」


「…え、まさか」

「そのまさかだ。」


「ちょっと、俺は遠慮したいか」

バッシャーン

何かゴネ出したので、逃げ出す前に水をぶっかけてやった。

「……」


「これでお前も俺と同じだな」

「…サイテー」

「はっ、言ってろ」



そうして、他の子供も呼び次々と水地獄にしていく。

「ぎゃああ」

「待って待って待って!!」

「あ、ちょっといいかも」


全員ずぶ濡れになり叫び声も聞いたところで、大まかな準備は済んだ。


拘束していた男達は、顔から水ぶっかけて牢屋に放り込んでおいた。7人の大人が濡れた状態で床に転がっている構図はなかなかに面白かった。




扉のある場所に戻り、仕上げに取り掛かる。


小さい子供達やシアは階段下で待機してもらい、ガタイの良い子供は出口近くに。俺とエルネは扉の裏に隠れた。

全員濡れた布を口につけ、マスクの様にしている。

「みんなー!こっちはいけるぞ!!」

「うちは大丈夫!」

「自分のとこもー!」


「今からお前らは、絶対立つな!常に姿勢を低くしろ!」

「「「「了解!」」」」


(…最後の確認も済んだ。あとは、全力を尽くすだけだ。)




薪やテーブルを1箇所に集め、種火をつける。

ゆっくり、パチパチと音を立てて広がっていく。

(まだ、まだ気づくなよ…今バレると終わりだ。)


はじめは弱かった火も今は轟々と燃えている。もくもくと黒い煙が部屋を占め、室内温度が上がっていく。その頃には立っていることも難しくなるが、あらかじめ姿勢を低くしている俺たちには問題はなかった。


喉がひりついて、心拍が上がる。

もし失敗したら、焼死か売り飛ばされるかの二択だろう。しかしここで悩んでいても死ぬだけだ。


温度が高いせい全身から汗が滲み出る。けれど緊張で、気にしている余裕はなかった。



長くも短い時間が過ぎた。周囲はしゃがんでいないと息もできないほど煙が充満している。

「今からが本番だ。心積りは大丈夫か?」

「もちろんよ。」

「任せろ。」


(…みんな行けそうだな。)

周囲に目を配ったが、皆覚悟を決めた鋭い目をしていた。





震える手に力を込め、軽く深呼吸をする。



大きく息を吸い、ドアの隙間から思いっきり叫ぶ。

『大変だ!!!子供が脱走したぞ!!』





1秒、2秒、3秒と時間が過ぎていく。

(お願いだ…!来てくれ!!)


「は!?なんだと!」

ドア越しに誰かが反応した。

「待て!他に声をかけてきてくれ。全員に加勢を頼みたい!!」

いつもより低く、太い声を出して相手を騙す。先にドアを開けられると、中にいる奴らに逃げられる可能性があった。


「わかった!すぐそっちに行く!!」

機転が効いたらしい。信じてもらえたようだ。




(頼む。これ以上長引くと中にいる俺たちがまずい。)

遅くはあるが確実に火の手が迫ってきている。このままここにいると俺たちは死んでしまうだろう。


少し経ち、ドアの向こうから複数人の慌ただしい足音がする。どうやら信じて仲間を呼びに行ってくれたらしい。

「開けるぞ!」

(きた!!)


バン、と大きな音を立ててドアが開かれた。

「うわっ!ゴホ…」

「なんだ!?!…っく」

扉が開かれたことで煙が全てあちらに流れていく。驚いて吸ってしまったのか、男達が咳き込んでいる。


(今だ…!)



苦しんで悶えている犯人達を補充した縄で縛っていく。3人ほどを拘束しこちらに引き摺り込むことができた。

しかし、時間をかけ過ぎたせいで、後ろの2人がすぐに体制を整えてしまう。

「ガキが!!」

「お前ぇ!!」



男達が襲いかかってこようとするが、それも計算済みだった。あらかじめそれが通じなかった場合に備えて、足元に縄を張っている。煙で視界がよく見えないのもあり、簡単に引っかかった。

「あだっ」

「ぐ、」


転んだ隙を見逃さず、こちらに引き摺り込んで奥にいる子供に任せる。おそらくすぐに拘束されるだろう。

2人は縛られ、階段下まで転がされた。そこまでいけば、煙で死ぬことはないだろう。



「…いくぞ。」

出口付近にいる子供に声をかけ、一斉に出る。ドアの先には部屋が直結してあった。周囲を警戒するが、誰もいないようだ。


部屋を抜け、出口を探していく。

途中で人に会ったが、声を上げさせる前に数で押し倒した。



「カルロ、こっち。」


エルネが廊下の扉を開けて指を刺した。そこには煌びやかな会場で着飾った人間達がカジノを楽しんでいた。



(あった…!)

会場の扉が開き人が入ってくるが、その奥には外の景色が見えた。



やっと…!やっと外の光が!!

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