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第74話:【銃の重さ】

 俺は震える手で無線を掴み、アキラへと連絡を入れた。


「有坂を倒した……。だが、リンを逃がした」


『そうか。……こっちの戦線も、リンが離脱してから指揮系統が崩れつつある。劉とヒロシが暴れ回ってくれているおかげで、何とか持ちこたえている』


「了解。俺たちはこのままリンを追う。……もう、かなり遠くまで逃げられたかもしれないが」


『ああ。気をつけろ』


 通信が切れる。


「行くぞ、アンナ」


「……うん」


 返事は短く、どこか重かった。


「どうした?」


「……まだ終わってない気がする」


「何が?」


「わからない。でも……“終わった感じ”がしない」


(やめろ、そういうこと言うな)


 俺は心の中で吐き捨て、アクセルを踏み込んだ。



 夕闇に沈みかけた街を走りながら、俺の脳裏にはリンの言葉がこびりついて離れなかった。


『人殺し』

 その言葉は、銃声よりも深く耳に残った。


 いつの間にか、俺は引き金を引くことに慣れてしまっていた。


 有坂は怪物だった。


 だが、最期に聞こえたあの悲鳴は、間違いなく「人間」のものだった。


 あの中にあった無数の意識を、俺が、俺たちが終わらせた。


(俺は……次も、迷わずに引き金を引けるのか)


 いや、引かなければならない。

 それが正義でなくても。


 たとえ、誰かの正義を踏み潰すことになっても。


 リンは思想を持ち、人を動かす。


 放置すれば、また悲劇が生まれる。


 必ず、逮捕する。


 だが――逮捕したところで、彼女を本当に止められるのか。


 司法をすり抜け、再び姿を現す未来が、容易に想像できた。


 そして、陽平。


 視界に入っただけで対象を焼き尽くす、あの能力。


 もし完全に光を失っても、彼の「殺意」は消えるのだろうか。


 薄暗い道路の先を見つめながら、俺は腰のマグナムに触れた。


 そこにあったのは、銃の重さだけじゃない。


 ――今まで奪ってきた、無数の命の重さだった。

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