第73話:【叫ぶ肉塊】
レールガンの直撃により、有坂の胸から上は跡形もなく弾け飛んだ。
しかし、心臓を失い、上半分を失ってもなお、残された下半身からおびただしい数の肉の繊維が盛り上がり、異様な速度で再生を始める。
「アンナ! 油断するな! 有坂は再生するぞ!」
「うん! わかってる!」
ドォン!!
アンナが放った対物ライフルの弾丸が、再生途中の無防備な肉を貫いた。肉片が周囲に飛び散る。だが、その飛び散った肉片さえも、磁石に引き寄せられるように本体の胴体へと這い寄っていく。
「これならどうだぁ!!」
俺は背負っていた火炎放射器のノズルを向け、引き金を引いた。
轟音と共に猛烈な紅蓮の炎が有坂を包み込む。
「うおおぉぉぉぉ!!」
有坂が呻き声を上げる。だが、もはやその声は人間一人のものではなかった。
俺は構わず、周囲に散らばった小さな肉片の一つ一つにまで火炎を浴びせ続けた。
炎の中で、胴体の中心に歪んだ「顔」が浮かび上がり、断末魔を上げる。
「終わりだぁぁーーー!!」
アンナが叫び、再びレールガンを火葬場のようになった有坂の胴体目掛けて放った。
――バシュゥゥゥンッ!!
焼かれた有坂の体から、不意に幾十もの、重なり合った「人間の声」が溢れ出した。
『……熱い!』
『助けて……!』
『お母さん……』
『死にたい……殺して……』
『やめて! 痛い!!』
耳を覆いたくなるような悲鳴の奔流。
一体、この体の中に何人の犠牲者が取り込まれていたというのか。有坂という個体は、もはや一人のナノマシン兵ではなく、無数の人間の「絶望」を繋ぎ合わせた集合体だったのだ。
やがて、激しい火柱と衝撃波が収まると、そこには黒焦げになった巨大な炭のような塊だけが残された。
不気味な声も、肉の脈動も、もう聞こえない。
「か、勝ったのか……?」
俺は火炎放射器を構えたまま、震える声で呟いた。
「た、多分……。もう、動かないよね?」
アンナの声も、極度の緊張から解放されたせいか、か細く震えていた。
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