第67話:【追跡者】
アンナは巨大な対物ライフル、俺は新調されたマグナムと特殊素材のナイフを手にし、拠点である寮の一軒家へと戻った。
居間でテレビをつければ、画面はリベレーターによるテロのニュースで持ち切りだ。この騒乱のどこかにリンと陽平が潜んでいるのか――そう考えた瞬間だった。
ドゴォォォン!!
凄まじい破壊音と共に壁が砕け散り、土煙の中から異形の怪物と化した有坂が姿を現した。
「な、なんでここが分かったんだ……!?」
アンナは慌てて対物ライフルを構える。俺は以前の自分なら反動で腕が折れていただろうマグナムを両手で保持し、その引き金を引き絞った。
ドゴォン!!
腹部を大口径の弾丸が貫通する。有坂は一瞬その穴を見つめたが、直後に獣のような咆哮を上げ、弾丸の衝撃など無かったかのような速さで肉薄してきた。
(……これでも効かないのか!?)
一瞬で間を詰められ、俺は有坂の豪腕によって壁の向こう側まで殴り飛ばされた。
「裕!! このぉぉぉ!!」
アンナが至近距離から対物ライフルを放つ。
ズドォン!!
砲声に近い爆音が響き、有坂の頭部が文字通り跡形もなく吹き飛んだ
。
「回復する前に逃げるぞ!」
「逃げるって、どこに!?」
「レールガンだ!」
俺たちは研究所の駐車場に配備されている「レールガン搭載車」を目指して駆け出した。
だが、背後からは既に頭部を再生させた有坂が、家のドアを紙切れのように引き裂いて追ってくる。
「アンナ! 先に行って準備をしてくれ!」
「わかった! 気を付けてね!」
アンナを先行させ、俺は殿を務める。残りのマグナム弾を全弾撃ち込み、奴の腕を飛ばし、心臓を撃ち抜いた。だが有坂は止まらない。
弾切れだ。俺は特殊ナイフを抜き、泥沼の近接戦に突入した。
先ほどまでの鈍重さは消え、有坂は機敏に動き回る。俺の斬撃は空を切り、渾身のローキックは岩を蹴ったように俺自身の骨に痛みを残した。
そして、奴の放った「ただのパンチ」。ガードしたはずの両腕を強引に弾き飛ばされ、顔面に衝撃がめり込む。
視界が火花を散らし、頭痛と吐き気が脳を支配する。転がる俺の頭を、有坂が万力のような力で掴んだ。
「うああ……ああ……あ……!」
頭蓋が軋む絶望的な音。その時、駐車場の方角から一筋の閃光が放たれた。
音速を超えた弾丸が有坂の胴体を真っ二つに引き裂いた。上下に分断された有坂の肉体。だがこれでも死なないことは分かっている。
俺は近くにあった車のガソリンを漏らし、ライターで火を放った。
「ぐおおおおおおお!!」
激しく燃え上がる炎。どうやら有坂の再生能力も、細胞を焼き尽くす炎には弱いらしい。奴は上半身だけで地面を猛烈な勢いで掘り進み、土の中へと逃げ去っていった。
「た、助かった……のか?」
激しい疲弊の中、俺は炎に包まれる我が家を呆然と見つめていた。




