第66話:【敗走】
至近距離での爆発。
凄まじい熱量に両目は焼かれ、鼓膜は破裂し、突き出していた両手足も消失した。
(有坂はどうなった……!?)
意識が混濁する中、「裕! 逃げるよ! !」というアンナの必死な叫びが、遠い世界のことのように響く。彼女は俺をアキラの装甲車まで必死に引きずっていく。
何も見えない。音も聞こえない。だが、不意に体が浮き上がり、硬い車内へと押し込まれた。
「奴が回復に専念しているうちに、早く車を出してください!」
劉の声だ。徐々に視界が戻り始め、状況が把握できてくる。
「オマケだぁーっ!!」
アンナが装甲車に備え付けられていた対戦車砲を、爆煙の主へと向けてぶっ放した。
再び凄まじい爆音と爆炎が上がり、周囲を真っ赤に染め上げる。
「これでも生きてたら……もう、打つ手ないな」
俺は自嘲気味に笑った。だが、アキラの表情は晴れない。
「いや、あいつはこれぐらいじゃ死なん。厄介な奴を敵に回した。あいつは執念深いぞ」
「あいつは、オリジナルなのか? それともナノマシン兵なのか?」
「元々はオリジナルだが、軍で散々実験を受けていたからな。もう別物だ。普通のオリジナルには『代償』という弱点があるが、あいつにはそれがなさそうだった」
「……ようやく手足が生えてきた。欠損の再生はエネルギーを食うんだよな。腹減った」
まだ感覚の鈍い新しい手足を動かしながら、俺は嘆息した。
「裕、だんだん再生速度が早くなってきてない?」
アンナの言葉に、俺は無意識に自分の手を見つめた。ナノマシンとの結合が深まっている証拠だろうが、それが後々どんな影響を及ぼすのか、考えれば考えるほど少し怖くなった。
「それより、次にあいつと会ったらどう戦えばいいんだ」
「さあな。それより、なぜあいつがオリジナルのアジトにいたのかが気になる。軍の『道具』だったはずだ」
「うん、なんか自我がない感じだったね」
「私の剣も通じなかったのがショックです……もっと鍛錬せねばなりません」
劉が悔しそうに拳を握りしめる。
◇
研究所に着くと、アキラは高槻への挨拶もそこそこに、事の顛末を報告した。
「まずはアキラくん、戻ってきてくれて助かるよ。それにしても有坂か……。厄介な奴が出てきたね。奴の追跡から逃れられた者はいない。ここも襲われるかもね」
「物騒なこと言わないでくださいよ。あんなのに寝込みを襲われたら一溜まりもない」
「冗談ではないよ。今日は武器を持って寝た方がいい」
「私の狙撃銃、壊れちゃった。高槻、新しいのない?」
アンナが尋ねると、高槻は薄く笑った。
「対物ライフルがあるが、使ってみるかね?」
「うん!」
「アンナ、扱えるのか?」
「一通りの武器なら使えるよ!」
胸を張るアンナ。頼もしい相棒だ。だが、高槻の言葉通り、俺たちの戦いは今、最も「執念深い追跡者」に狙われるというフェーズに入っていた。




