表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/80

第63話:【金剛の壁】

 アジトに辿り着いた時、そこにはすでに戦火が広がっていた。

 いや、それを「戦い」と呼んでいいのか。日本軍の精鋭たちが、まるで見えない壁に突き当たったかのように、一方的に蹂躙されていく。


「アンナはここから狙撃してくれ」

「りょーかい! 気をつけてね!」


 俺は単身、アジトへと走る。だが、踏み込んだ瞬間――後頭部を巨大なハンマーで殴打されたような衝撃が走り、顔面から地面に叩きつけられた。


 後ろか!


 即座に反転すると、そこには身長180センチはあろうかという、角刈りの恵体な男が立っていた。俺は迷わず至近距離から散弾をぶち込む。

 しかし、目の前の光景は常軌を逸していた。火花が散り、金属音が響く。着弾はしているはずなのに、俺の放った散弾は男の肌に弾き返されたのだ。


「何食ったらそんなに堅くなるんだよ……?」

(これならどうだ!)

 俺は男の股間を狙い、全力で蹴り上げた。


 ――ゴキッ!


 凄まじい音が響いた。だが、折れたのは俺の足の方だった。即座にナノマシンが修復を始める。最近、明らかに回復の速度が上がっている。


「ナノマシン兵か。お前が裕だな?」

「そうだよ。俺ってそんなに有名人か?」


「『オリジナル殺し』として有名だ。ここから先、アジトには近づけさせん」


 言い捨てると同時に、アンナの支援狙撃が男の背を捉えた。だが、ガキン! と再び虚しい金属音が響くだけだ。


「えっ? 狙撃銃も効かないの!?」

「俺の体に傷は付けられん」


 男の豪腕が俺の顔面を掴み、壁が崩れるほどの勢いで叩きつけられた。とんでもない馬鹿力だ。俺はゼロ距離で奴の顔面にショットガンを叩き込む。顔が仰け反りこそしたが、ダメージは皆無。

 男は俺を掴んだまま、今度は地面へめり込ませた。逃げ場の無い状態で、みぞおちに拳がめり込む。


「ぐぇええっ……!!」


 吐瀉物を撒き散らしながら悶絶する。うずくまる間もなく引き起こされ、顔面に追撃。鼻や頬の骨が砕ける感触と共に、数メートル吹き飛ばされた。

(硬い、怪力、狙撃も無効……こんな化け物、どう倒せばいいんだ?)

 絶望がよぎる中、男はズンズンと距離を詰めてくる。アンナが男の目を狙撃したが、それすら弾き返された。粘膜すら鋼鉄なのか。

 その時、俺の脳裏に一つの閃きが走った。


「……殺される前に、誰の手で死ぬかくらい知っておきたい。名前を教えてくれるか?」

「良いだろう。俺はタケ――」


 奴が口を開いた、その一瞬。俺は持っていた手榴弾をその口内へ無理やりねじ込み、ピンを抜いた。


 ――ボンッ!!


 籠もった爆発音と共に、男の頭部が内側から吹き飛んだ。どれほど外殻が堅牢でも、内側までは鍛えられなかったらしい。


『裕! 大丈夫!?』

「なんとか……まだアジトですらないのに、もう疲れたよ」


『そうも言ってられないみたいよ』


 見れば、日本軍は依然として劣勢だ。着実に数を減らしている。

 そこに一台の装甲車が、並み居るオリジナルを撥ね飛ばしながらアジトへと突っ込んだ。車内から降りてきた精鋭部隊が、鮮やかな連携でオリジナルを次々と仕留めていく。


『裕! 今降りてきたの、アキラじゃない!?』

「アキラ? 戦争に行ってるはずじゃ……」


『きっと帰ってきたんだよ!』


 かつての戦友の姿に、俺の胸に熱いものが宿る。


「よし! アジトまで走る! アンナも次の狙撃ポイントに移動してくれ!」

『りょーかい!』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ