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第62話:【時の支配者】

 葵は病室で眠っている。火傷もナノマシンの力で綺麗に治り、ひとまずは安心と言えるだろう。


 そんな折、高槻から無機質な連絡が入る。

『裕くん、リベレーターを名乗るオリジナルによる銀行強盗だ。アンナくんと現地に向かってくれ』

「了解」



 現地に到着すると、オリジナルが部下を従え警官隊と激しい銃撃戦を繰り広げていた。敵は4人か。


「アンナ、援護よろしく!」

『任せて!』


 アンナの精密射撃が火を吹き、瞬く間に2人の頭部を撃ち抜く。俺も1人を射殺し、残る1人は痩せたドレッドヘアーの男。ラフな格好で片手に拳銃を持っている。

 銃口を向けた、その瞬間。男が目の前でなんの前触れもなく掻き消えた。現れたと思ったら胸を撃たれていた。


「ぐあっ!」

「捕まえられるかい?」

ドレッドヘアーの男は挑発的に笑みを浮かべてまた消えた。


 ――直後、後頭部に弾丸を叩き込まれる。


「瞬間移動か?!」


 即座に振り向きざまショットガンを放つが、もうそこにはいない。それどころか、何もない空間から全身を同時に殴打されたような衝撃が走り、俺の体は宙を舞った。


「ぐふっ……?!」


 破れかぶれで周囲に散弾をバラ撒くが、今度は不自然な角度でいきなり肘がへし折れた。


「ぐあああ!」


(瞬間移動じゃない……時間だ。時間を止めてやがる!)

 不可視の暴行による痛みが一気に押し寄せてくる。だが、どうやら数秒しか止められないらしく、一定の周期で奴の姿が露わになることに気づいた。


「アンナ、時間停止のオリジナルだ! 連続しては止められないらしい。出てきたら即撃て!」

『りょーかい!』


 ――来た!


「アンナ!」

『はいよー!』


 ――ドンッ!

『ごめん! ギリギリで避けられた!』

「いや、逃げたな。攻撃が来ない。まだ近くにいるはずだ、追うぞ!」

 結局、男を仕留めることはできなかった。


 最近は、こんな毎日を送っている。オリジナルは手強いが、戦いを重ねる中で「弱点」も見えてきた。周は疲労、ミナは頭痛、陽平は視力の低下。最強に見える力には必ず代償がある。


 そして、リベレーター。

 今やリンのチームだけでなく、個人でオリジナル、あるいは普通の人間に関わらず、その名を騙る偽物が急増していた。街中には常に消防車やパトカーのサイレンが鳴り響き、日本の治安は悪化の一途をたどっている。


「キリがないね……」

 アンナが溜息をつく。

「でも今日のは本物のオリジナルが混ざってた。取り逃したけど、リンの仲間だったのかな?」


「わからない。だがリンの元には続々と戦力が集まってる。次は本当の戦争になるかもな」


「オリジナルの軍勢かぁ。想像もしたくないな……」


 重い空気の中、再び高槻から連絡が入る。

『リベレーターかは不明だが、オリジナルのアジトを見つけた。日本軍の精鋭が向かっている。援護に行ってくれ』

「了解」


 いつも通り、俺はそう応えた。戦いの終わりは見えない。

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