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第61話:【宣戦布告】

 ヒロシは「また何かあったら教えろ」とだけ言い残し、夜の闇へと消えていった。俺たちは葵の容態が気がかりで、一度研究所へと戻った。


「博士、葵の容態は……?」


 手術室から出てきた高槻を捕まえて問い詰める。


「酷い火傷だったからね。ナノマシンの緊急手術を施したよ。……君が倒した『周』の細胞をベースに使わせてもらった。程なく目覚めるはずだ」

「……葵もナノマシン兵になったのか?」


「上手く適合すれば、彼女も瞬間移動が使えるようになるかもしれないね」


 人体実験。こいつはいつも、涼しい顔をして倫理の一線を踏み越える。

 いつもなら「トカゲ野郎」と悪態をつくところだが、今の俺の中にあるのは、そんな生易しい言葉では足りないほどの、冷たく重い嫌悪感だった。


「今は捜査班にリンたちを追わせている。君たちは戦いっぱなしだったんだ、今のうちに少しでも休んでくれ」



 アンナと沈黙の混じった食事を済ませた後。

 自室のテレビでニュースを流していると、突然映像にノイズが走り、画面が切り替わった。電波ジャックだ。

 そこに映し出されたのは――リンだった。


『私はこれまで、多くのオリジナルを解放してきました。しかし、公安はそれを許さず、解放された彼らを次々と殺戮している。……これは、戦争です』

「アンナ! リンがテレビに映ってるぞ!」

「えっ!? なんで……」


 隣の部屋からアンナも飛んできて、食い入るように画面を見つめる。


『オリジナルは長年、実験動物として虐げられてきました。今こそ反旗を翻す時です。集え、抵抗しましょう。――人間は、私たちの敵です。どちらが神に選ばれた存在か……それは人間ではなく、我らオリジナルだ』


 リンの瞳には、一切の迷いがない狂信的な光が宿っていた。


『今、私たちの仲間はまだ少ない。協力を求めます。我々はリベレーター(解放者)。共に、この世界を作り替えようではありませんか』


 演説が終わると、画面は砂嵐になり、元のニュース番組に戻った。


「……これから、オリジナルによる事件が爆発的に増えるぞ」

「うん。各地で一斉に暴れられたら、もう手が付けられないね……」


 不吉な予感は的中した。この日を境に、世界中で潜伏していたオリジナルたちによるテロや暴行事件が、瞬く間に広がっていくことになった。

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