第5話:【初任務】
「データも取れた。まだまだ訓練が必要だが、十分実戦で使える」
高槻に、俺は思わず聞き返した。
「リーダーさん、大丈夫でした? 膝は外したつもりですけど……」
脚を撃ったんだ、普通なら歩けないほどの大怪我だ。
「そんなヤワじゃないさ。……早速だが、今日これから実戦だ」
「嫌ですよ! 模擬戦だけでクタクタなのに、無理です!」
「命令だ」
有無を言わせぬ響き。俺に拒否権なんて最初からなかった。
今回の任務はアンナと警察の精鋭部隊との合同。
俺の役割は、テロ組織の幹部を単独で仕留めること。
アンナは屋外での狙撃援護、俺が屋内の制圧。
「さあ、出動だ。私も行くがね」
高槻の意外な言葉に驚く。この人、研究者じゃなかったのか。
「これでもベテランだからね。指示系統や武器の扱いは君より上手いよ」
◇
輸送車の中、俺の愚痴は止まらなかった。
「初任務かぁ……不安だなぁ。帰りたい」
「裕、これあげる」
アンナが手渡してきたバッグには、様々な小道具が入っていた。何故かチョコも……
「これなに?」
「便利道具!」
ピリついた空気の中、アンナの明るい声が響く。周囲の隊員たちは皆、死線を潜り抜けてきた貫禄に満ちていた。
「これより、テロ組織の隠れ家を壊滅させる」
隊長のブリーフィングが始まる。
「君は高槻博士のナノマシン兵だな。現場では私の指示に従え。生死は問わん、幹部を捕らえろ」
「おい、この娘が『死神』アンナか?」
一人の隊員が茶化すように聞いた。
「うん! アンナでいいよ!」
屈託なく笑うアンナ。死神なんて物騒なあだ名、彼女には似合わない。
「子供と冴えない兄ちゃん。大丈夫かよ」
鼻で笑う隊員。――「嫌な奴」!見てろよ、度肝抜かせてやるからな。…アンナが!
「ナノマシン兵さん、光栄です。俺、「佐藤」って言います」
別の隊員が気さくに話しかけてきた。彼も今回が初実戦らしい。
「あ、裕です。よろしく」
少しだけ緊張が和らいだ。
だが、目的地が近づくと空気が一変した。
カチャカチャと弾を装填する音が重なり、緊張が肌を刺す。
「裕、頑張ろうね!」
「……うん、頑張ろうね」
◇
突入は一瞬だった。
輸送車がゲートを突き破り、隊員達が隠れ家を取り囲む。すぐに扉を突き破りフラッシュバンが炸裂する。
俺は窓ガラスを割って侵入し、地下へと急いだ。
『クリア! 裕、あとはお願い!』
無線からアンナの声。外の敵は彼女が片付けてくれたらしい。
(さすが、死神。殺したのかな……)
地下の最奥。
『1人も逃がすな』という隼人の指示。
俺は「覚悟」を決め、拳銃のセーフティを外した。
扉の前で、俺は少し考え……。
「ピ、ピザ屋でーす! 配達に来ましたー!」
と、扉を叩いた瞬間、猛烈な銃撃が扉を貫通した。
「あぶなっ!」
「アンナ!アンナ!突入ってどうやんの?!」
アンナに相談すると「停電させる?」という提案。
「俺も見えなくなるよ!」
「バッグに暗視ゴーグルあるよ!」
「これか?」急いでゴーグルを装着した瞬間、視界が緑色に染まり、照明が落ちた。
中にフラッシュバンを投げ込み、破裂音と共に突入する。
暗闇と閃光の中、五人の男たちが怯んでいた。
引き金を引く指が震える。
「一、二!」数えながら
二人倒れる。死んでないよな……?
三人目を倒したところで予備電源が入り、室内が明るくなった。
「この野郎!」
激しい反撃。「痛い!!」肩や腕に弾丸を食らうが、痛みは一瞬で引く。
リロード。震える手で中々入らない
「なんじゃこりゃあ!」
なんとかマガジンを叩き込み、四人目の首を撃ち抜く。
最後の一人は、手榴弾を投げて来た。慌てて投げ返したら男は爆発に呑まれた。
呻き声を上げる男に、
「助からないな……」
俺は最後の一発を放った。
「五……」
……静寂。
人を殺した感覚に吐き気がこみ上げるが、俺は自分に言い聞かせた。
(こ、殺しちゃった……でも…!)
「やったぞ。成功だ……!」
『リーダーを含めて六人のはずだ。探せ』
高槻の非情な声。まだ、いるのか。




