第53話:【墜落】
「「がはっ!!」」
俺と風花は同時に大量の血を吐いた。
主を失った雨風が急速に弱まり、俺たちは遥か上空から吸い込まれるように墜落していく。
風花はおそらく即死だ。レールガンの直撃によって、彼女の体は上半身と下半身が泣き別れになっていた。対する俺も、腹に向こう側が見えるほどの大穴が空いている。
レールガンの威力……正直ここまでとは思っていなかった。全身が衝撃で痺れ、細胞がバラバラになりそうだ。傷口が猛烈に泡立ち再生を試みているが、この状態で地面に叩きつけられて無事でいられるのか?
俺は麻痺した体を無理やり動かし、せめてものクッション代わりに風花の死体を下に向けた。
「いてぇぞぉ〜……」
俺は歯を食いしばり、覚悟を決めた。
――ドシャアア!!
風花の肉体は衝撃で弾け、俺の体もボールのように2、3回地面で跳ねた後、泥の中に突っ伏した。
「ごほっ!!」
さらにもう一回、吐血。
身体の痛みが強すぎて、逆に何も感じない。ただ痺れだけが脳を支配している。再生が一度止まり、視界が急速に霞んでいく。
その時、アンナが装甲車を爆走させて近くまで乗り込んできた。
「裕! 裕!!」
「……あ、……ぁ!」
声が出ない。肺が潰れているのか、ヒューヒューと空気が漏れる音しかしない。
ダメージがデカすぎる。
俺はしばらく地面で悶絶していたが、やがて再生が始まると同時に凄まじい激痛が全身を襲った。
「うお……お、おぉ……っ!」
「よかった! 再生が始まった! 風花は!? あの女はどうなったの!?」
「あ、あそこ……」
俺は震える指で、かつて風花だったものを指差した。
「うわっ……」
流石のアンナもドン引きしている。ようやく視界がはっきりしてきた。
「はぁ、はぁ……! もう二度と、『俺ごと撃て』なんて言わないからな……!」
「当たり前だよ! 馬鹿だよ裕は!」
アンナは半ば泣きべそをかきながら、俺を強く抱きしめた。痛い。
「……リンは?」
「わからない。今、対テロ部隊が工場の中を調べてる」
「おい、裕! リンはどこだ!?」
フル装備の恵が、子分を引き連れて駆け寄ってきた。
「今、部隊が調べてる。……でも、多分逃げられたと思う」
「クソッ! 嵐に阻まれてる間に出遅れたぜ」
「その嵐を今やっつけたんだよ。……それより、タバコ持ってない?」
空は嘘のように晴れ渡っていたが、工場の奥底にリンの気配はなかった。
彼女は再び、姿を消した。




