第49話:【発火】
S区に着き、聞き込みを開始した。
「S区のヤクザと言えば、めちゃくちゃデカいんだろ?」
「うん、S区は全部ヤクザのシマだよ。警察も迂闊に手出しできないくらいなんだから」
「そんなにヤバいんだ」
「特にここの『仲良組』は超武闘派なの」
「えー、名前可愛い……」
そんな余裕のある冗談を言っていられたのも、そこまでだった。
◇
仲良組の屋敷に辿り着いた瞬間、異様な光景が目に飛び込んできた。
「人が倒れてる! 酷い……身体中ズタズタだ……」
「アンナ、突入しよう!」
「うん!」
門を潜り、屋敷の中へ駆け込む。そこはまさに死屍累々。屈強なヤクザたちが、紙屑のように無残に転がっていた。
俺とアンナがさらに屋敷の奥へと踏み込むと、ついに奴がいた。――リンだ。
傍らにはあの瞬間移動の巨人も控えている。
そして、もう一人。サングラスをかけた、奇妙な存在感を放つ男が立っていた。
「あら、奇遇ね」
「手を上げろ! リン!」
俺はショットガンを構え、叫ぶ。
「陽平。」
リンが静かに告げると、陽平と呼ばれた男はゆっくりとサングラスを外した。
ふと、彼と目が合った。その瞳は驚くほど穏やかで、優しそうに見えた。
――直後。
全身を焼き尽くす、暴力的なまでの熱波が俺を包み込む。
「え?!裕!!」
視界が瞬時に赤く染まり、喉が焼けて息が吸えない。
「ぎゃああああ!!」
人体発火。
皮膚の下から、身体の内部から、直接火を放たれているような地獄。ナノマシンが必死に再生を試みるが、焼失の速度がそれを上回る。
(これが、こいつの能力……! 目を合わせるだけで、殺される……!)




