第4話:【模擬訓練】
ナノマシン兵としての適性を見るため、俺は訓練所に呼び出された。
待っていたのは、対テロ特殊部隊の精鋭四人。
「え?アンナなし?対テロってマジもんの精鋭じゃありません?」
俺でも知ってるエリート部隊だ。
「なしだよ。君一人の戦力を見たい」
高槻の非情な宣告。
場所は訓練所内の雑居ビル。部隊は実弾装備。対する俺は素手。
「戦闘不能、もしくは拘束されたら脱落だ。――開始」
◇
市街地エリアは広い。俺は隠れながら目的のビルを目指した。
正面と裏口に一人ずつ。残りは中か? スナイパーもいるはずだ。
様子を伺おうとした瞬間、衝撃が走った。
――バァンッ!
「い、ッッてぇええええ!!」
眉間のど真ん中を狙撃され、俺は派手にひっくり返った。
あまりの激痛に傷口を押さえる。頭を突き抜けるような目眩。
だが、その傷は数秒で塞がり、痛みも引いていった。
(……本当に死なないんだな、俺)
死に物狂いで隣のビルへ逃げ込む。
『ヒット。眉間に叩き込んだが効果なし。再生が異常に早い。隣のビルの影に入った』
狙撃兵の冷静な無線が聞こえる。
俺は隣のビルの二階へよじ登ると、助走をつけて目的の雑居ビルへ飛び込んだ。
パリンッ!という破壊音と共に侵入成功。
「音は二階だ! 挟み撃ちにしろ!」
リーダーの指示で二人の隊員が中に入ってくる。
俺は物陰に潜み、隊員Aの背後から首を絞めた。だが、流石はプロ。鮮やかな背負い投げで俺を床に叩きつける。
「……げふッ!」肺から空気が漏れ出た。
投げられた姿勢のまま、俺は隊員Aの頭部に蹴りを放った。
怯んだ隙にカニバサミで転ばせ、裸絞めで意識を刈り取る。隊員Aの銃を奪うと、俺は天井裏へと逃げ込んだ。
『どうした、A? 応答しろ』
無線に答えはない。リーダーが隊員Bと合流し、慎重に部屋へ入ってくる。
「ツーマンセルで――」と言いかけたリーダーの目の前で、天井裏から伸びた俺の腕が隊員Bを引きずり込んだ。
「うわあああっ!?」「何だ!?」
暴れるBを天井裏で絞め落とし、拘束。
二人倒した。俺の心に、少しの驕りが生まれていた。
(よし!この調子でリーダーも……)
移動を再開した、その瞬間。
リーダーは物音一つで俺の位置を特定し、天井越しに正確な射撃を放ってきた。
「い、ッ……痛ええええ!」
全身を焼けるような痛みが襲う。天井裏は一瞬で俺の血にまみれた。
「マジかよ、仲間がいるんだぞ!」
「音で位置は丸見えだ。蜂の巣にしてやる」
撃たれるたび、再生が追いつかなくなるのを感じる。
俺はリーダーの真上まで来ると、天井を破壊して飛び降りた。
渾身の拳を叩き込むが、同時に太ももをナイフで刺される。激痛で離れた瞬間、リーダーの反撃を浴び、俺は血飛沫をあげて大の字に倒れた。
◇
リーダーが拘束しようと近づいてくる。
その瞬間、俺はガバッと起き上がり、リーダーの両脚を拳銃で撃ち抜いた。
「くそっ、死んだふりか!」
脚を撃たれてなお、リーダーは殴りかかってくる。
なんて根性だ。俺は銃底で殴りつけ、ようやく彼を気絶させた。
『ほう、リーダーも倒したか。素晴らしい』
高槻の笑い声。だが、その直後。
――ドンッ!
「っ!いッッてぇ!! またかよ……!」
本日二度目のヘッドショット。隣のビルからの狙撃だ。
(いつの間に!)
『そこまで。制圧完了だ』
高槻の無線で訓練が止まった。
「あ!」と狙撃兵の抜けたような声が響く。
二人とも「ビル内の制圧」という目的を忘れて、俺を仕留めることに必死になっていたらしい。
『本来なら、勝者は特殊部隊だ。君は何度も死んでいるからね』
「……でも、対テロに勝った」
(しかも素手スタート!)
俺は安堵と共に床に倒れ込んだ。
死ぬほど痛いが、この力があれば……無敵だ!……多分。




