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第46話:【嵐】


ヒロシに完膚なきまでに叩きのめされた後、息をつく暇もなく高槻から通信が入った。

『これからすぐにB区に行ってくれ。オリジナルが暴れていて、現地の警察が手を焼いている』

「了解……。アンナ! 行こう、事件だ!」

「う、うん……でも、負けた直後だからなんか自信ないよ……」



B区に急行すると、そこは地獄絵図だった。街には台風のような風が吹き荒れ、上空では一人の「オリジナル」が上空に滞空していた。

周囲の警官隊は、パトカーごと吹き飛ばされてほぼ全滅状態だ。

「この台風……あいつの能力か」

「撃ち落とすね!」

アンナは迷いを振り払うように狙撃銃を構え、引き金を引いた。


――ドンッ!

重厚な発砲音。だが、着弾の直前に突如として竜巻が発生し、弾道は無慈悲に逸らされた。

「当たらなかった!」

「天候を操るのか……!」

俺はショットガンを握りしめ、オリジナルを地上から引きずり下ろすべく走り出した。

しかし、奴は俺の接近を許さなかった。

「……邪魔」

オリジナルが手をかざした瞬間、猛烈な突風が俺の体を掬い上げる。


「お、おおぉぉー……!」

情けない声を上げながら遥か上空まで放り出され、そのままコンクリートの地面に叩きつけられた。

「うぐっ……こなくそー!」

(今どき『こなくそ』て……)と自分で自分にツッコミを入れながら、やけっぱちでショットガンを乱射する。


だが、オリジナルは近くにあった乗用車を風で操り、盾にすると同時にそのまま俺目掛けて投げつけてきた。


(ヤバい! 死ぬ!)

必死に横へ跳んだが、回避が間に合わず下半身が車の下敷きになる。


「ぐあああああ!!」

下半身がめちゃくちゃに砕け、ナノマシンが泡立ちながら再生を開始する。だが、追い打ちをかけるようにオリジナルが空を指差した。


直後、空から雷光が降り注ぐ。

「ぐあッ?!」

全身に鋭い激痛と衝撃が走り、その場に崩れ落ちた。


アンナが再び狙撃を試みるが、風で操られたブロック塀が盾となり、弾丸を弾き返す。

「逃がさないわ」

オリジナルが手を払うと、そのブロック塀が物凄い速度でアンナへと叩きつけられた。

(ヤバい、モロだ!)

「アンナぁーー!!」

叫び、駆け寄ろうとするが、体が言うことを聞かない。


必死に這い進む俺の前に、再び竜巻が立ちふさがる。風圧の刃に全身をズタズタにされ、またしても地面に転がされた。

そこへ追い打ちの雷撃。


意識が飛びそうになるのを必死に繋ぎ止めたが、全身が痺れて指一本動かせない。ナノマシンのコアごと焼かれたせいか、自慢の再生能力すら鈍っている。

それでも這いながらアンナの元へ向かおうとする俺の前に、オリジナルがゆっくりと降りてきた。


まだ若い女だ。

女は靴の先で俺の顎をしゃくり上げた。

「……ナノマシン兵ね。あんたが裕?」

「そ、そうだ……。足をどけろよ……!」

震える声で虚勢を張る。正直死ぬほど怖かった。

「ふうん」


女はゴミを見るような目で俺を値踏みし、サディスティックな笑みを浮かべた。

「再生が全然追いついてないわねぇ? 惨めなものだわ」

俺は最後の力を振り絞り、目の前にある女の足首にガブリと噛み付いた。

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