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第44話:【戦争の英雄】


研究所に戻り、高槻に今回の顛末を報告した。


「今回もまんまとやられたね。リンはこれでオリジナルのチームを作ることができる。やはりオリジナル相手となると、こちらが不利だな」

「ええ、二人がかりで何とか撃退しましたが……」

「強かったー……」

 アンナが深くため息をつく。ナノマシン兵である俺たちを子供扱いする力。

それが本物の「オリジナル」の力だった。


「協力は期待できないが……君の『オリジナル』に会ってみるかね?」

「俺のオリジナル? 収容所にいたんじゃないんですか?」

「てことは、再生能力の……?」

「ああ。第二次世界大戦の英雄でね。軍を退いてからは隠居しているよ」

「ジジイじゃないですか!」

 第二次世界大戦と言ったら、今から100年も昔だ。まだ生きているのが不思議なレベルだ。


「彼を見たら、そうも言えなくなるよ。私が行ったら殺されかねないからね。君が適任だ。まぁ、ダメ元で会ってみる価値はある」

「場所はどこですか?」

「C区だ。無類の酒好きでね、飲み屋にいるだろう。これが写真だ」


 見せられた写真には、どう見ても30代に見える精悍な男が写っていた。

「昔の写真ですか?」

「10年前の写真だが、今も見た目は変わっていないはずだよ」



都心・C区。

「裕ぁ、C区の美味しいお店は?」

「ああ、二郎系が……って、そうじゃなくて飲み屋を探そう。アンナはいつも食べ物のことばっかりだな」


「いいね! 飲み会!」

「あ、でもアンナ飲めるの? 店ではジュースにしとけよ」


「ねー!背が低いからって子供扱いやめて!」

「あはは、じゃあ適当に入るか」


 一軒の居酒屋に入り、生ビールを二つ頼む。

「はい、生二つ!」

「あ、すいません。この人、見覚えありますか?」


 店員に写真を見せると、あからさまに顔を引きつらせた。

「あ、ああ……この人! ウチは出禁だよ。店で大暴れしたから。弁償させようとした店長まで殴られて大変だったんだから」

 どうやら相当に血の気の多い人らしい。


「どの辺で会えるか知ってますか?」

「表通りの店は全部出禁だって噂だからね。裏通りの、もっとヤバい店にいるんじゃないかな」

「ありがとう。」

「あと、焼き鳥の盛り合わせもちょーだい!」

 一頻り飲み食いした後、俺たちは裏通りへと向かった。


「裕ぁ、C区の裏通りは治安悪いから気をつけなよ」

 ――ガシャアアアンッ!!

 景気よく飲み屋のガラス扉を突き破って、男が一人転がり出てきた。

「……みたいだね」


 転がった男は白目を剥いて気絶している。

 店内を覗くと、俺と同じくらいの背丈の男が立っていた。だが、筋肉の密度が違う。写真の通り、全く老けていない――ヒロシだ。


 ヒロシは倒れた男を一瞥すると、興味なさそうにカウンターに戻って飲み直し始めた。

「いきなり居た!」

「なんか、見るからに危なそうな人だね……」


「声を掛けてみよう。……あの、ヒロシさんですか?」

「お前らは?」

 低く、地鳴りのような声が響く。


「俺は裕です」

「アンナだよ! 警察だよ!」

 アンナが身分証を突き出した。

「消えな、ガキ共」

 ヒロシは一蹴して酒を煽る。


「話だけでも……」

 食い下がろうと彼の肩に手を置いた――それがマズかった。


 次の瞬間、視界が回転した。俺は鮮やかに投げ飛ばされ、気づけば腰のナイフを奪われていた。

「裕! 止まれ!」

 アンナが慌てて拳銃を構える。

「争いなら外でやってくんな」

 店主や他の客は慣れているのか、騒ぎもせずに普通に飲み食いしている。なんだこの店。


「撃ってみな。そんな玩具、俺には効かん」

「……じゃあ、これは?」

 俺は至近距離からヒロシの股間を膝蹴りした。


 直後、ヒロシの目が獣のように据わった。彼は激怒し、俺の襟首を掴んで店の外へと放り投げた。凄まじい怪力だ。

「アンナ! 手を出すな!」

 地面に転がりながら叫ぶ。


 ヒロシがゆっくりと店から出てくる。その全身から、震えるほどの威圧感が溢れ出していた。

「坊主……覚悟は出来てんだろうな?」

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