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第42話:【収容所】


 リンを捜索していた捜査員3人が行方不明になった。状況からして、おそらくだけど、リンの手にかかったのかも。


 俺は研究所に戻り、高槻にファミレスで起きた事を話した。


「博士、女リーダーの目的がわかりました。オリジナルの解放だそうです。名前はリンと名乗っていました」

「そうか。ならば、我々の管轄外だな」

 高槻は表情一つ変えずに言った。


「何でですか?」

「オリジナルは日本軍の管理下、特殊な収容所に囚われている。警察の権限など及びもしない場所だよ」

ミナが壊されたところか、と心がざわついた。


「警護につけますか?」

「君たちが軍人にでもならない限り無理だ」

「あーあ、せっかくの手がかりだったのになぁ」

 アンナが肩を落としてため息をつく。


「なら、収容所施設の『外』で張り込むのはどうかね?」

「えっ、場所を教えてもらえるんですか?」


「ああ、君たちにならいいだろう。これでも、それなりに信用しているんだよ」

「え? 信用してくれてた? モルモットじゃなかったの?」

 思わず本音が出た。トカゲ野郎の癖に、妙に物分りがいい。


「私は自分も含めた命は平等に扱う主義でね。それに……」

「それに?」


「モルモットは可愛いだろう?」

 高槻は冷たい笑みを浮かべた。絶対、俺の想像してる「可愛い」とは意味合いが違うんだろうな。冷血怪人・トカゲ男の思考は善良な俺には分からない。


「それで、場所はどこなんですか?」

「K区だ。……何かと因縁があるね」


 ワンと戦った、K区。


 あ! そういえば、アンナの医療費を闇医者に払ってなかった。「臓器を売ってでも払う」なんて言っちゃったし、この任務の合間に挨拶にでも行こうか……。



K区

 日本軍基地は想像以上に広大だった。リンが現れるなら、収容所のある東側だろう……そう踏んで張り込みを続けて数日。


「来ないねぇ、今日もハズレかなぁ」

「でもここで張ってれば、いつか必ず現れるさ。……たぶん、おそらく…だったらいいな」

 自信なく、そう言った直後だった。目の前の巨大な壁が、


 ――ドォォォォン!!


 凄まじい轟音と共に爆発した。至近距離にいた俺たちは、熱風と爆風に煽られ派手に吹き飛ぶ。


 けたたましい警報が鳴り響き、瓦礫の隙間から囚人服を着た男たちが散り散りに逃げ出していく。

「アンナ! 大丈夫か?!」

「なんとか! それより見て、囚人? 捕虜? みんな逃げてくよ!」


「リンは……リンは出てきたか?!」

 俺はケースからショットガンをひったくるように取り出した。

「わからない! スモークが濃くて見えない!」

 アンナも素早く狙撃銃を構える。


「行くぞ!」

「うん!」

俺とアンナは収容所内に飛び込んだ。



収容所の奥へと踏み込むと、そこには地獄を煮詰めたような異様な光景が広がっていた。

鎖に繋がれて狂ったように暴れる者、

虚空を見つめて指をくわえ続ける者、

ブツブツと支離滅裂な独り言を呟く者。

 ここにある「命」は、すべて壊れていた。

「ところどころ、檻の中が空だ。逃げ出した形跡があるな」

「遅かったのかな? あの壁の爆発は、こっちから注意を逸らすための陽動?」


「そうかもな……クソッ」

 内部の静寂が逆に不気味だった。その時、アンナが息を呑み、前方の通路を指差した。

「待って! あそこ!」


 その先に、あの女――リンが立っていた。


「動くな! 逮捕する!」

 俺がショットガンを構え、アンナがスコープを覗く。

「もう観念しな! どこにも逃げられないよ!」


 だが、リンは動じるどころか、薄く冷たい笑みを浮かべた。

「あら、遅かったわね」

 彼女の視線の先には、すでに破壊された重厚な隔壁があった。


「もう少しお話ししてあげたかったけれど。残念ながら、あなたたちに構っている暇はないの。」

「何を――」

 言いかけた瞬間だった。


 背後から、何者かに殴打された。


 ――ガツッ!!

「ぐあぁっ……!」

 物凄い怪力で殴り飛ばされ、受け身も取れず地面に叩きつけられた。

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